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恋愛初心者の恋の行方  作者: あお
学園編~一学年~
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2 学園初日②





流石というかなんというか、主に貴族の割合が多い学園の中、私は教室まで…というより教室内でも貴族からの視線を浴びながら席に着いた。


自分でもすでに死んだような…、光がなく曇っているような目をしている気もするけど……、とりあえずは大丈夫だと思う。

というか制服あるのに、なんで教室の女子は皆ひらひらしたドレス着てるのか。

むしろ何故制服を着ないのか、全く理解不能だということを声を大にして言いたい。

だって意味がわからないでしょう。


後にわかったことだが、貴族の女子達は着ているヒラヒラな豪華なドレスで自分の家の経済状況を表して牽制していたらしい。

そんなことなど知らなかった私は、魔法科だからと舐めているのだろうかと思ってしまっていたくらいだ。


だってさ周りの男子見てみてよ。

同じ貴族だけどちゃんと制服着てるのよ。

だからなんで女子が制服を着ていなかったのかもわからなかったし、そんな理由で!?と思ってしまったくらいだ。

でも、だからといって女子一人だけ制服だとしても別に恥ずかしくなかった。


そう心の中で毒づきつつ、白をベースとした制服に、胸元で結んだ紺色の大きめのリボンに目線を落とす。


………可愛いと思うんだけどな。普通に。


白がベースといっても、私の髪の毛と同じ空色のラインが袖やスカートにアクセントとして入っていてとても可愛いと私は思う。

むしろ黒とか茶色とか汚れない色の服ばかり着ていた私としては、白をベースとした制服を着る時は少し恥ずかしかったけど、それでも鏡をみたときはかわいいデザインに嬉しくなって、その場で何回もくるくると回ってしまったくらいだ。

だからすっかりお気に入りになっている。

まぁ、スカートが膝上というのが、いつも膝下あるいは踝まで長いスカートをはいていた私にとって、初めての短さという意味でそこは違和感があって恥ずかしくはあるけど。

それでも支給品の黒いローブも羽織っているし、黒のタイツも履いているからスカートの短さも気にならない。

だからそんなフリフリでヒラヒラしたドレスじゃなくて、せっかく支給されている制服を着ればいいのにと、遠回しに馬鹿にされていた私は少しだけイラっとしていた。


(お父さん、”留年なし”と”卒業”だけじゃ足りないわ!)


せめて学園で一位になって、ああいう貴族連中を見返すことくらいはやらないと!!


「もしかしてお前も平民か?」


私が一人で闘志を燃やしている中、一人の男の子に声をかけられた。

コクリと頷くと、男の子は肩の力を抜いて目尻を下げる。


「よかったぁ…。男子は皆制服着ているからさ。誰が平民かわからなかったんだ」


お母さんと同じか、もしくは少しだけ濃い緑色の髪の毛をした男の子は、前髪が真ん中から分かれているから安堵した表情が良く見える。


確かに平民の入学者は少ないし、女子とは違って同じように制服を着ているから、一見誰か貴族で誰が平民なのかわからないのは不思議ではない。

私も目の前の男の子に話しかけられるまで、男子生徒は皆が貴族なのだと思っていたくらいだ。

貴族特有のオーラでわかるとかいう人いるけど、まったくもってわからない。

そんなものだよね。

だって平民だってそれなりに身なりに気を使っているから不潔ではないし。

普通に毎日シャワーを浴びていれば小奇麗に見える。


「私はサラ・ハーレ。サラでいいからね。これからよろしく」


「俺は、マルコ・アルウェイ。マルコって呼んでくれ。

こちらこそ平民同士よろしくな」


お互いに手を握り合って挨拶を交わしていると、他の平民と思われる男子が数人近寄ってくる。


サー・サユスクという金髪というよりは黄色に近い雷属性色を持つ男の子と、キア・ダザメリナという真っ赤な髪色の火属性色を持つ男の子だ。

二人は女子の貴族が自慢のドレスを着ているために、すぐに私が同じ平民だと気付いたらしいが、マルコが私に話しかけてくれるまで性別の違いで話しかけづらかったそうだ。

それでもこうして話しかけてくれたことは純粋に嬉しいからマルコには感謝だね。


私はあれ?とふと思い、教室内を見渡した。

そして私以外に制服を着ている女子生徒はいなく、皆が貴族なのかドレスを身に着けていた。


え……。


(平民の女子、いな、い?)


その事実に少しだけ口元が引き攣ってしまった。

実力を身に着けて、成長する為にこの王国一と言われる学園に入ったとはいえ、ニーナみたいに気の合う友達と楽しく過ごしたいと、そんな希望を持っていたために愕然としてしまったのだ。


これからの学生生活に不安を抱いたそんな時、チャイムが鳴る。


「おーい、席につけー」


そういいながら教室内に入ってきたのは、あの日試験結果の封筒を渡してくれたあの男性だった。


(あの人先生だったんだ)


しかも私のクラスの担任教師であることに少しだけ驚いた。

マルコやさっき挨拶してくれたキアやサーも先生を見て驚いているから、私と同じように先生に封筒を渡されたのだろうと推測する。


「今日は初日ってことで、今後使う教材やら配布するからなー」


そういった先生は教卓のすぐ隣の床に置いていた木の箱に手をかざした。

かなりの大きさの箱だった為、なんだろうと思っていたのだが、まさか教材が入っていたとは…。


蓋が開き、中から今後使うであろう教材が一人一人の机の上に運ばれていく。

先生の魔法で運ばれているのだということはわかる。

一人一人にちゃんと届けられていることから、精密な魔力操作で行っていることもわかる。

だけど今はそんなことよりも、目の前にどんどん積み上げられていく教材に次第に顔が引き攣っていく。


(ちょ、ちょっとこれどうやって持っていくのよ!!!)


きっと私と同じように思った生徒が大半の筈だと、横目でチラりと見渡すと思った通り顔を引き攣らせる生徒がいた。


(よかった…)


いや、決してよくはないが。


いくら学園の敷地内に寮が建てられているにしても、学園の敷地面積はかなり広いのだ。

教育現場である学園から寮まではかなりの距離がある。

いくら敷地内に寮があったとしても夜更かしは難しいだろうと感じてしまうくらいの距離なのだ。

少し寝坊したら、あっという間に遅刻である。


そんな時ふと目の前の男の子が小さな鞄にポイポイと教材を閉まっていく様子が目に入る。


「えっ、ちょっと君、それなに?」


思わず前に座っている男の子の肩に手を置いて尋ねてしまった。

赤髪の男の子が鋭い目つきで振り返る。


「………離せよ」


「あ、ごめん…」


思わず謝罪して、触れていた手を退けた。

見知らぬ人に声をかけられれば不快に思う人も中にはいるだろうけれど……。

でもこれから同級生なのだから、少しくらい愛想よくしてくれてもいいと思うのだけど……貴族ってわからないや。


それでも小さな鞄に絶対入りきらない量を次々といれている光景に、私は釘付けになった。


(一体何だろう、あの鞄)


中はどうなっているんだろう。

明らかに質量が伴わない大きさの鞄。

魔法でもかかっているのだろうか。

魔法だったら私にも作れるのだろうか。


不思議すぎるが、教室を見渡すと本当に少数だったが、男の子と同じように小さな鞄に次々と教材を入れている生徒もいることに気付いた。

しかもその中にはよりギラギラと輝くドレスを身にまとっている女の子もいる。


(……ふーん、高位な貴族様の持ち物ってことね)


なら前の席の男の子も貴族の中でも高位な立場で、私みたいな平民に話しかけられて不快に思ったってことか。


私は積み重ねられた教材をみて、はぁと息をついたのだった。



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