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恋愛初心者の恋の行方  作者: あお
冒険者編①
159/253

15 王都④





そうしてお昼ごはんではなくて、おやつの時間になった頃、やっとレロサーナが予約したというお店へと向かっていた。

実際にお店に到着するとなんだか高級そうなお店に尻込みする。

いや、王都ということもあって、私にとってはどこも高価そうだと感じているだけかもしれないけど。


そして待たされることもなく私達はすぐに案内されて、個室へと通された。


四人かけのテーブルが部屋の中央に設置され、部屋の端には香りの少ないお花が飾り付けられている。

壁には私には価値が想像できないような大きな絵画があり、天井には部屋の大きさに見合うサイズのシャンデリアがあった。

しかも飲食店だというのに床には大きな絨毯が敷かれ、靴を脱いだ方がいいですか?と尋ねてしまうそうになる。


「ね、ねぇ、ここ高いんじゃないの?」


思わず身を縮めながら告げる私にレロサーナは笑った。


「気にしなくても、今日は私の奢りよ」


「え!?そんなちゃんと払うよ!」


「ええ、私も払うわ」


とんでもないことを口走るレロサーナに私はぎょっとしながらも首を振った。

エステルも同じような反応を見せる。


「遠慮しないで。このお店に勝手に決めたのは私だし、折角久しぶりに二人に再会できたのよ?こういう特別な日にパーッと使いたいの」


それに騎士団になってからご飯も先輩や上司が出してくれて、使う機会があまりないのよね。と一歩も引く様子を見せないレロサーナに、私とエステルは渋々ながらもお言葉に甘えさせてもらうことになる。


「それよりサラ、もう一度霊獣…フロンといったわよね?会わせてもらえる?」


レロサーナに言われた私はフロンを呼び出した。

洋服店、そして飲食店と続くことからフロンには星域へと戻っていてもらったままだったのだ。

でも私が霊獣と契約したことを知ったレロサーナが店員に確認し、個室の中でなら呼び出してもらっても構わないと許可をとっていたことは確認済みだ。

呼び出されたフロンはキョロキョロと室内を見渡し、首を傾げながら私を見上げる。


『まだお店の中だよね?呼び出してもいいの?』


「うん。レロサーナが店員さんに確認してくれたの。個室の中ならいいんだって」


フロンは呼び出した直後だと、私と契約した直後の姿に戻る為、今は体が大きいままだ。

肩に乗るくらいのサイズしか見ていなかった二人はきっとフロンの大きさに驚いていてるだろうと、二人の方に顔を向けると、二人は手を取り合ってフロンをキラキラした目で見つめている。


「かわいい!」「かわいいわ!!」


そんなことを言っている二人だって十分に可愛いと私は思う。


「あの、撫でてもいいかしら?」


そういってエステルが尋ねると、フロンはコクリと頷いた。

フロンの言葉は二人には通じない為に、仕草で表すことにしたのだろう。

私も、とレロサーナが言うと、フロンは再び頷く。

そして二人に撫でられているフロンを見ながら私はメニューを開いた。


「…値段書いてない」


しかもメニュー表はどうみてもコース料理の献立メニューだ。

もしかしてコースを頼んでいるのか、それとも他にメニュー表があるのだろうか。

そんなことをメニュー表を見ながら考えている私にレロサーナは言った。


「そういえばサラ、レルリラ様とはあれから進展…じゃなくて会ったりしているの?」


「ううん。会ってないよ」


私が答えると、フロンが『レルリラ?』と首を傾げる。


「あ、レルリラっていうのはね、私たちの同級生だよ。そういえばフロンは私が冒険者になってから契約したからレルリラとは会ったことないよね」


『うん。いい人?』


「そうだね。私が学園を無事に卒業できたのもレルリラのお陰だから」


『そっか!サラがいい人っていうのなら僕も会ってみたい!』


「今すぐには無理かな。でもそのうち会えると思うよ。私王都で活動するつもりだからね」


トコトコと私の方に歩いてきたフロンの頭を撫でると、笑顔を浮かべるレロサーナとエステルに気付く。


「そのうちってことは、王都に来ることに決めたのね!」


「うん。本当は亜空間鞄を買ってからと思って貯金頑張ってたんだけど、お母さんが私にプレゼントしてくれてね。

お父さんにはまだ行かないって言っちゃったんだけど、王都の方が高いランクのクエストも多いし、いいかなって」


「嬉しい!これから気楽に会えるようになるだなんて!」


レロサーナは本当に嬉しいのか、頬を赤く染める。

そしてなにやら私が見ているメニュー表とは違う冊子のようなものを手に取って顎に指先を当てた。


「これはもう先にお祝いするしかないわね。まだお昼だからお酒は遠慮しようと思っていたけれど」


そんなことを呟くレロサーナから、レロサーナが手にしているメニュー表はお酒の種類が書いているのだと知る。

私はあと数か月で成人を迎えるが、今はまだ十五歳。

お酒を飲む二人を眺めて居ようと心に決めた。


そしてレロサーナが料理を運んできた店員さんにドリンクを注文する。

店員さんは私達に料理を提供すると退室し、そしてすぐにグラスとボトルワインを持ってきた。

ワインの説明を行った後、慣れた手つきでワインを開封し色や香りを確かめた後、私達の席に置かれたグラスへとワインを注ぐ。

ちなみに料理は赤ワインソースがかけられた、分厚いお肉のステーキだ。


「あのさ、私まだ誕生日を迎えていないんだけど…」


場の雰囲気を盛り下げてしまうことは重々承知だけど、お酒を飲むのに適していない年齢なのは確かだから私は楽しそうに笑っている二人に申し訳なさげに告げる。

すると二人は首を傾げた。


「あら?平民の中ではお酒を飲んでいい年齢が決められているの?」


「貴族では学園卒業後に飲むことを許されているのだけど」


そういって不思議そうに見る二人に私は驚いた。


「お酒は十六歳からって言われていたんだけど、…国で決められているんじゃないの?」


「違うわ。国で決められているのなら王子たちが守らないわけないし、私達貴族だって知らないわけがないもの」


「じゃあどうして…」


伝わっていることが平民と貴族とで違うことに眉間を寄せると、エステルが「馬鹿にするわけじゃないのよ?」と告げてから話し出す。


「もしかして、平民が通う学園にバラツキがあるのではない?サラが通ったオーレ学園と平民が多く通う学園とで違いがないかしら?」


「違い?」


エステルにそう言われた私はそういえば、と思い出す。


「確かに違うかも。平民では仕事…といっても親の手伝いがほとんどなんだけど、それをやりながら通ったりするから人によって卒業の日取りが決まっていないの」


「じゃあ理由はそれね。学園を卒業してから、という曖昧な表現よりも十六歳という皆が絶対に迎える年齢を基準に決めたのよ」


「確かにそれなら納得するわね。事情があって学園を卒業できなくても十六を過ぎればお酒を飲んでもいいとわかるもの」


私の言葉にエステルとレロサーナはうんうんと頷きながら推測を話していく。

私もそれなら納得だとワインが注がれたグラスを手に取った。


「じゃあ、サラの王都進出を祝いカンパーイ!」


「「かんぱーい」」






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