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恋愛初心者の恋の行方  作者: あお
冒険者編①
156/253

12 王都





レロサーナからの候補日に私は問題ないよという手紙を書いて数日後、私は王都まで向かうためにフロンを呼び出す。

小さい姿で現れたフロンに大きくなってもらい、私はフロンの背に跨って出発した。


『目的地はどこなの?』


そう尋ねるフロンに「王都だよ」と答えると、フロンは王都を知っているのか『結構遠いね』と答えた。


「知ってるの?王都」


『うん。星域は心地いい場所だけどつまらない場所なんだ。だからよく人間の生活を見ていた』


「へぇ…、あ、それで私のことも知ったの?」


『そうだよ。サラは真っ白な魂の色をしていた。色々な人を見てきたけど、その色はサラだけだった』


「魂の色?」


『うん。見たら誰だって好きになる色だよ。…あ、魔力の色とは違うからね?』


フロンのいう魂の色というのがわからないけど、きっと霊獣にだけ見えるようなものなのだろうと私は自分を納得させた。


フロンは私に魔力をもっと使っていいかを問い、私が許可すると更にスピードが上がる。

それでも風の影響を受けないのは、フロンが防御魔法を使って受ける筈の風の抵抗を防いでくれているお陰なのだろう。

魔力がどんどん失われていくような気がするが、それでも快適に過ごすことが出来た。


夜になれば近場の町で宿に泊まり、陽が出る前には出発を繰り返して四日後の深夜。

予想以上に早く王都に着くことを悟った私は、王都に辿り着く前の町で宿をとることに決める。

一度ぐっすり寝て休まないとやつれた顔で二人に会うことになっちゃうからね。


『なんで王都でとらないの?』


「王都は値段が高いの」


流石に王都に近いこの町でもそれなりの金額はするが、それでも王都に比べたらマシな金額だろう。

私は敢えて王都に辿り着く前に宿をとり、一晩過ごすことに決めたのだ。


「……フロンも長距離移動で疲れたでしょ?明日まで戻って休んでもいいからね」


私はフロンにそういうと、ぐったりとベッドに身を任せて目を瞑る。

学園の寮のベッド程ふかふかではないが、実家のちょっと固めの布団よりは柔らかい。

そんな寝心地がベッドに体が沈むと、もう指一本さえ動かしたくなくなってきてしまう。


それにしても流石霊獣。

契約者の魔力で左右されるというが、ここまで違ってくるとは思わなかった。


お父さんとお母さんが移動したときにかかった日数は一週間。

それを半分近く減らすことが出来たが、流石にキツイ。

いやポーションや睡眠で回復しているにはしているけど、精神的に辛い。

休憩って大事だということが改めてよくわかった。


到着前に連絡が欲しいと書いてあったレロサーナに向けて、手紙を一通出したかったのに、どっと押し寄せてくる睡魔に負けた私はそのまま眠ってしまったのだ。




そして起きた時には空は赤く色づいていて、私は勢いよく上半身を起こした。


「え!?」


今は何日なのか、そして何時なのかと思考が止まっている私に、星域に戻っていなかったのかベッドの横に行儀よく座っていたフロンが私に気付く。


『サラが寝て、今は次の日の夕方だよ。ちなみに宿の従業員が来たけど、また来るって言ってた』


「え!?」


それが本当だったら、いや、疑いもなく本当だろうけど従業員が来た理由は間違いなく延滞料金だろう。

だって私一晩のお金しか払ってないもの。


「うわああ!やばいよ!」


そうして私は急いでフロントに向かったが、今超過した分のお金を払うよりも丸一日分の料金の方が安くすむよと提案され、あと数時間ではあるがシャワーを浴び、ご飯をゆっくり済ませてから、王都へと向かったのだった。

勿論レロサーナへの連絡も忘れずに。






『どうせなら朝まで泊ればよかったのに』


空を飛びながらフロンが言う。

家や店が並ぶ街を過ぎれば、ポツポツと明りが灯る家もあるがほぼ暗い。

そんな夜に移動せず、もう一晩泊って朝出発すればいいとフロンはいっているのだ。


勿論それもいいけどレロサーナとエステルとの待ち合わせ時間はお昼前。

魔力を気にせずガンガン消費して移動すれば朝出発してもお昼までには余裕で間に合うけど、それはしたくない。

私は学習する人なのだ。

それに折角王都に行くのなら、王都のギルドにも行ってどんなクエストがあるのかも見てみたかったのと、お母さんからの頼まれごともあるから余裕をもって王都に着きたかった。


「いいじゃない。ゆっくり移動すれば朝には着くし、それにこうしてフロンとまったり話す機会も今までなかったでしょう?」


クエストの最中に呼び出すことはあるが、それでも勤務中。

まったりと話す時間はそんなに取れなかったし、家でもポーション作成に没頭していたからほぼかまってあげられていなかった。


『でもそうするとサラはずっと起きていることになるよ』


「ならちょっとだけ寝ちゃおっかな」


『うん、そうして。サラを落とさないようにもっとゆっくり飛ぶから』


フロンの優しさに触れた私は、数時間前まで沢山寝ていてあまり眠く感じていなかったが、それでも目を瞑り、体をフロンに預けた。

ふわふわの毛並みがとても気持ちよく、眠くない筈なのに何故かうとうとしてしまう程の毛並み。

これがアニマルセラピーか。

食用とか関係なく金持ちが動物を飼う気持ちがわかったと、何気に失礼なことを考えながら私はフロンの毛に顔をうずめた。


そして二つの月が沈むころ、太陽が昇り始め私は目が覚める。

流石に窓もカーテンもなにもない空の上では、少しでも太陽が現れるとかなりの眩しさから寝ていられなかった。

それでも三時間か四時間ほどは寝れただろう。


「…おはよう、フロン」


ふぁとあくびをしながらゆっくり飛び続けるフロンに話しかけると『おはよう!僕落とさなかったよ!』と返される。


『よく眠れた?まだ寝る?』


「ありがとう。もう大丈夫だよ。寧ろフロンが気持ちよくて短い時間でもぐっすり寝れたから」


『よかった!』


喜ぶフロンに私は微笑んだ。


前を見るともう王都の街並みにが見えてくる。

学園が王都に近かったことから王都の街まで向かう道中ではあまり気にしていなかったが、遠くから王都を、しかも建物や木々などに景色を邪魔されていない場所から眺めるとなんとも立派な町なのだろうと感じる。

マーオ町にはない沢山の建物に、当時は山があっただろうか、高地には立派なお城が見えた。

きっとあれが王城なのだろう。


(まぁ、私には関係ない場所だけど)


そして王都に着いた私はフロンに地面に降ろす様に指示し、ギルドを目指す。


『お母様の用事を先に済ませなくてもいいの?』


身体を小さくさせ、私の肩に乗るフロンが尋ねた。

勿論体を小さくさせたのは私の指示だ。


「うん。まだお店も開いてないからね」


お母さんの頼まれごとというのは、お店に行って注文していた商品を持ってきて欲しいというもの。

今日忘れずにお店に行けば済むことだし、フロンにも言ったように朝早く王都に着いたことからまだ大体のお店が営業前。

なら先に私の用事を済ませた方がいいと考えたのだ。


王都に行くことを決めてから、王都のどこにギルドがあるのかを事前に確認していた私は、問題なくギルドに辿り着く。


『街には人があまりいなかったのに、ここにはいるんだね…』


「まぁ、冒険者に依頼したい人も依頼を受けたい人も朝にくるからね」


フロンが呆然と呟いた言葉に私は苦笑しながらも返す。

王都の街を歩きながら私は殆ど誰も通らなかった道を、フロンと一緒にのんびりと歩いていたのだ。

朝だから空気が気持ちいいねとか、飲食通りなのかいい匂いをさせるお店の前を通りお腹がなったりとか、とにかくのんびりと歩いてきた。

そんな感じでギルドに向かっていたものだから、朝から賑わっているギルドについて一気に気持ちが変わる。


「…これじゃあ、クエストを受けるのは厳しいね。

とりあえずどんなものがあるのかだけでも見てみようか」



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