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恋愛初心者の恋の行方  作者: あお
冒険者編①
154/253

10 親友の結婚②









私は今日何度目かってくらいまた驚いた。

この五年間に一体何があったのか。

二人のなれそめが非常に気になる。


っていうか学園に通ってた時ニーナとたまに手紙のやり取りをしていたけどそんなこと全く書いていなかったじゃない!


「今日はね、サラにお礼を言いに来たんだ」


「…お礼?」


私は首を傾げた。

さっきも言ったけど、ニーナとは手紙のやり取りだけで、二人の馴れ初め話も知らないくらいなのだから、私はニーナの役に立てたてなんてない。

それなのに、何故にお礼?と不思議に思ったのだ。


「私とリクスが結婚するのはね、サラのお陰なんだ。

サラも知ってる通り、リクスってば実の兄のようにマイクの面倒見ているでしょ?それは今でも変わってなくてね、だからマイクと一緒に冒険者をしているの」


「…二人は本当に変わってないんだね」


「でしょ?」


私とニーナは昔を思い出しながらくすりと笑う。


「でも私は不安だった…、リクスが冒険者をすることが」


「安全、的な意味で?」


「ううん。リクス達はマーオ町を拠点としているし、ランクの制限もあるから危険な魔物が依頼内容のクエストにはそもそも挑戦できない。

それに、この町のギルド長はとても強いってことは私も知ってるから、何かあれば助けてくれるって思ってる。

だからその面に関してはそこまで心配してないんだ」


「じゃあ、何が心配?」


ニーナは私の問いかけに一度口を閉じると俯いた。

私は答えずらいことを聞いてしまったのではないかと不安に思うと、ニーナは勢いよく顔を上げる。


ずいっと私に近寄って、力強い目でこういった。


「だって男だけじゃないじゃない!」


「…え?」


「サラも知ってるでしょ?!リクスってはマイクの他に女の子二人もいるパーティーで活動しているのよ!?一人はマイクにぞっこんみたいだからいいけど、もう一人の女性はどう考えているのかわからないわ!」


「…あ、確かに不安だね」


でしょう!?とニーナは私から離れて、腰かけていた私のベッドに体を預ける。


「……でもね、リクスも不安だったみたいなの」


天井を見上げながらボソリと呟いたニーナに私は目を瞬いた。


「え、ニーナってば浮気疑われてたの?」


「違うわよ!」


なんでそうなるのよ、とニーナが言うが今の流れだとそう思っても不思議ではないと思う。

ちなみにニーナが働いているお花屋さんでは男性店員はいないらしい。

じゃあリクスは何が不安だったのかと考えていると、ニーナが話始める。


「…冒険者ってランクが低いと収入面も安定しないじゃない?」


「あー、確かにそうだね」


私の場合は高価買取してくれるポーションに大幅に助けられたので、そこまで収入が低いとは思っていなかったが、確かにランクで受けられるクエストだけで生活しようとなるとかなりきついだろう。


「Dランクに上がったのも最近だったから、…だから私に結婚を切り出せなかったっていっていたわ」


だからありがとう、とニーナは横に座っている私に体ごと向けるとニコリと笑った。

私はじわりと耳が熱くなるのを感じ、咄嗟にニーナとは逆の方を向いた。


私がリクス達に教えたことといえばポーション制作のことだ。

パーティーからは抜けたけど、ポーションの作り方を教えてあげると約束した以上破りたくはないと思ったし、第一どんな結果になったとしても善意でパーティーに誘ってくれたマイクや承諾してくれたリクス達には悪い気持ちはもっていない。


「…、ポーション作成のことなら気にしなくていいよ。

ギルドの話だとポーションが足りないみたいだし、私だけで作るよりも皆で作った方が皆が嬉しいって思っただけだから」


「あれ、サラってば照れてる?」


「照れてないよっ」


ニーナの言葉を否定すると、体を起こして私の顔を覗き込むようにしながらにやけたニーナの表情が確認できた。

アハハとニーナが笑い、私はむっとした。

本気で怒っているわけでも、気を悪くしたわけでもない。

ニーナの言う通り気恥ずかしくなっているだけだ。


「感謝しているのは本当だからね。

サラのお陰で、リクスが思っていたことを知ることが出来た。

リクスが本当に私との将来のことを考えてくれてたことを知れたから、…まぁまだ気にくわないけど、でもパーティーメンバーの中に女性がいてもリクスのことを信じられると思えたの」


だからリクスからのプロポーズも受けたんだ。と満面の笑みで告げるニーナに私はじんわりと胸が暖かくなった。


「ニーナが幸せで、私も嬉しい」


そういった私にニーナは「そうだ」と言葉を発した。


「どうしたの?」


「サラは王都の学園に通ってたんでしょ?出会いとかなかったの?」


なんだか楽しそうな表情でニーナは言うが、私は首振って否定した。


「あるわけないでしょ。手紙でも書いた通り私は魔法を極めることで忙しかったんだから。それに貴族と平民ってところからして無理」


「じゃあ平民の男性は?いなかったの?」


「いたけど、お互いにそういう感情持ってなかったし、第一向こうには好きな人がいたからね」


全然進展しないまま終わったようだけど。


「なんだ残念」


大げさなくらい肩を落として見せるニーナに私は苦笑する。

だけどすぐに私はにやりと笑った。


「残念って…。私的にはニーナとリクスの馴れ初め話の方が気になるんだけど~?」


結局結婚報告と、感謝の気持ちだけ伝えられて、馴れ初め話を聞いていないのだ。

幼馴染同士のニーナとリクス。

二人の間にどんな物語があって、どんなふうに過ごしてきたのか、私は問いただそうと両手をワキワキと動かしてみせる。


「え……、そ、それはまた今度!じゃあね!」


「あ!ずるい!教えてよ!」


するとニーナはベッドから飛び上がり、一目散へと部屋から出ていった。

逃げ足が速いんだから。


私はもう遅いかもしれないけど、ニーナを見送るために腰を上げる。

すると閉められた扉は再び開き、帰った筈のニーナが顔をひょっこりとのぞかせた。


「……あ、結婚式は上げないけど、ご祝儀は期待してるね」


「……ふふ、期待してて」


調子いいんだからと私は笑って、今度こそ帰るニーナを見送ったのだった。







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