1 学園初日
私がこれから通う学校は、キュオーレ王国の最高峰の教育レベルを誇る学園でオーレ学園と呼ばれる学び舎だ。
全寮制で、勤めている先生は王族からも認められる程の実力を持つ者が多くいる。
また、授業には現役の騎士からも学ぶことが出来、実際の戦闘授業も行っている為、即戦力が期待できると様々な業種から人気が高く、将来性が確実と言われていることから平民の志望率も高い。
更に王族も通う教育機関ということもあり、貴族たちもこぞって子を入学させたがる。
その為、身分関係なく入学を希望する者が後を絶たないのだが、合格率はあまりにも低かった。
数代前の国王が普及させた教育方針のお陰で、平民でも文字の読み書きや計算等も含め教養レベルは貴族と大差ないと言われているのにもかかわらず、だ。
もしかしたら試験以外も判断基準になっているのではといわれているが、実際は不明である。
オーレ学園にはこれから私が通う魔法科だけではなく、騎士科や経営科、サポート科等もあるが決して各々の科の内容だけが学習内容ではない。
魔法科だとしても、剣技や体術、薬師の基礎等様々なことも学ぶのだ。
とはいっても最初は魔法科と騎士科しかなく、経営科とサポート科を選択できるのは三学年に進級した時。
貴族の嫡男、または商人の跡取りであれば、経営科に。
魔道具制作やポーションなどの製造ならばサポート科に。
武器の扱いを磨きたいのであれば騎士科に。
魔法をメインとして習いたいのであれば魔法科に。
ある程度の魔法はお母さんから習っているとはいえ、少しドキドキする。
これから私はどんなことを学ぶのか。
国の最高峰と言われる学園には、きっと沢山の知らないことがあるのだろうと、私は期待に胸を膨らましていた。
そうそう。
私に魔法を教えてくれたお母さんは意外に意外。
実はエルフと人族のハーフだということがわかった。
これはもう本当にびっくりだった。
というのも語弊があるね。
別にエルフだっていうことに驚いたわけではない。
後に知った話だけれど、エルフという種族は傲慢な態度で有名なのだと聞いたから、私は驚いたのだ。
だってお母さんからそういった雰囲気を感じたことが無かったから。
そんなお母さんは人族の血が多く交じっている為なのか、純粋なエルフよりも遥かに魔力量が少なかった。
だけど魔力コントロールは凄かった。
難しいといわれる魔法の複数発動も無詠唱でポンポンと行うことが出来る。
きっと貴族の家のメイドとして働いていたら、沢山の仕事をやらされそうな程に有能な人材だと思う。イメージだけど。
でもそんなお母さんだから、働いた後でもパパッと魔法で家事をこなせているんだなと思った。
あ、そうそう。
お父さんはやっぱり冒険者ということもあって、昔は旅をしていたらしい。
だからお金がなかったときは自分でポーションを作ることもあって_作ったことはあっても激マズだったらしく基本的には市販の物を購入していたらしいが、私がこの学園の入学試験の時はその激マズポーションを口にして送り届けてくれた_、薬草を教えてもらったり、あとは短剣だけど剣の扱い方とか教えてもらった。
木々に囲まれている中、レンガブロックが綺麗に敷き詰められている道を歩き進めると、大きな建物が目に入る。
私は思わず立ち止まり建物を見上げた。
窓ガラスに空に浮かぶ雲が映り、とても綺麗だ。
私に絵の才能があるのなら、この光景を残したくなるほどの光景だ。
オーレ学園の敷地面積はとても広いが、机上で行う授業は目の前の一つの建物内だけらしい。
建物が一つだけなのに対して、王国一広い敷地面積_あくまでも学校という括りの中だけ_は、それだけ私たち生徒に訓練スペースが設けられているのだ。
人気の高い騎士団や私が目指す冒険者は、特に即戦力が求められる職業である。
勿論騎士団や冒険者だけではないが、基本的にどんな職でも即戦力を求めるのは変わらない。
この学校はそういう意味でも非常に優秀な学園なのだ。
だからこそ、私のお父さんはここで”留年することなく卒業する”ことを条件に、冒険者になることを認めたのだ。
ただの冒険者としてならば、ギルドに登録するだけで誰でもなれる。
十歳を過ぎれば成人(十六歳)していない子供だけでも登録が出来るし、十歳未満でも保護者の同意であれば登録ができる。
だけど私がなりたい冒険者は、あのおじさんのような”かっこいい冒険者”である。
その為にはSランクになるほどの実力が必須になるのだ。
冒険者に急いでなるよりも、土台をしっかりとした方がいい。
私はお父さんの条件にもっともだと納得し、条件を飲んだのだ。
私は気合を入れて足を踏み出す。
これから沢山のことを学習し、もっともっと成長する為に。
だから
「あら、もしかしてあの端の席に座っているのは平民の子ですの?」
「そうみたいよ。あのような格好で恥ずかしくないのかしら?」
「私なら堪えられないわ」
………うん。大丈夫。
”留年することなく”ってお父さんが条件を出した程だから、ここの学校の授業内容_実戦式授業_がかなりハードなのだと勝手に思っていたが、きっとこういう貴族からのネチネチした精神攻撃にも堪えてこそという事だったのね。納得した。
大丈夫。
こんなのなんてことない。
私、頑張ってみせるからね!




