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恋愛初心者の恋の行方  作者: あお
冒険者編①
149/253

5 疑問

これからパーティーとして活動していくために、私たちは互いの実力について話し合うためギルドから出て移動する。

といってもマーオ町にはお洒落なカフェとかはないため、必然的にギルド前にある平原になるけど。


まず最初に現在のパーティーの役割を教えてもらう。

教えてくれたのはマイクだ。


「俺とリクスが先方で剣で攻撃、後方でフィナが治癒と付与魔法で援助、エルゼが俺たちに防御魔法を掛けてくれてるんだ」


あっさりとだが簡単に役割分担を教えてくれたマイクにふんふんと頷いた。


「マイクとリクスは剣で戦うんだね。魔法はどんなの使うの?」


エルゼが二人に防御魔法を掛けるという意味がよくわかってないけど、きっと緊急時ということなのだろうと決めつけ、剣という物理攻撃以外にどんな魔法攻撃をするのか気になった私は純粋に尋ねた。

すると返ってきたのは想定外の言葉だった。


「は!?無理無理無理無理!魔法なんて使ったらすぐに魔力無くなってバテちまうよ!」


首を激しく左右に振って否定するマイクに私は首を傾げた。


「え?…じゃあエルゼとフィナは?」


「私達の役割はさっきマイクが言ったでしょう?…というか私の名前を気軽に口にしないで」


最後の言葉はボソリと呟くように、それでも意外と近くにいたことで私の耳にはっきりと届く。


それにしてもそれぞれの役割は教えてもらったけど、大まかにだ。

フィナが治癒と付与魔法で援助をしていたとしても、それはマイクとリクスに対してであって、後方で他にどんな魔法を使って援助しているのかがわからない。


「…アンタは?」


「私?」


「ええ、そう。アンタは何ができるのよ。…まさかポーション作りだけとか言わないわよね」


あ、もしかしてこれケンカ売られているのだろうか。とは思ったけれど私は特に気にすることもなく答える。

こういう直接的なやり取りの方が気が楽だからだ。

学園のレルリラのファン_といっていいのかわからないが_達は言葉巧みに言ってくる人が多かった。

まぁ私も遠回しな言い方が苦手な方だから、先生に習っていない隠喩話法を使われたときは全く気にすることもなかったけどね。

でも習っていた隠喩についてはカチンとくるものがあったとだけは言っておこう。


「私も気になっていたの!あ、私のことはエルゼでもえっちゃんでも好きに呼んでいいからね」


明るい笑顔でエルゼはそう言ってくれた。

エルゼは私への対抗心はなさそうで安心する。


ということは、このパーティー内で恋心を持っているのは、フィナとマイクだけということなのか。

マイクが誰を好きなのかはわからないけど、フィナがエルゼに対抗心を抱いていないということは、マイクがエルゼを好きだということはないはずだ。逆にエルゼがマイクを好きという可能性もない。


「私は基本的になんでもできると思っていいよ。ただ剣は買ってないから、魔法での攻撃の方が楽かな」


治癒魔法については未だに苦手意識を持っているけど出来るには出来る為、“攻撃”という言葉を使っておいた。

皆のレベルがどれぐらいなのかわからないため曖昧な表現になってしまうが、これでも学園では成績優秀者の枠組みに入っていたのだ。

見栄、とまではいかなくても、胸を張りたくなる気持ちはわかってもらいたい。


「そうなんだね!サラちゃん凄い!」


「へへ……」


純粋な笑顔でそういわれてしまうと、私も照れてしまう。

「ありがとう」とエルゼに言いながら顔をあげると、何故かマイクの顔が少しだけ赤く見えた気がする。


「あ、そっか。もうこんな時間か」


私はふと顔を上げ空を眺めた。

いつの間にか空が赤く色づき始めていたのだ。

マイクが夕焼けで顔を赤く色づかせてくれたお陰で、時間の経過に気付いた私はそろそろ帰ることを告げる。


「え、もう帰るのか?」


「うん。お母さんが待ってるからね」


昨日は二日酔いでダウンしていたお父さんが屍のようになりながらも待っていたけど、きっと今日は家にはお母さんだけの筈。

私は久しぶりに早く帰宅して、お母さんのお手伝いをしようと思っていたことを思い出したのだ。


「…な!」


「?」


「……マイクの頼みでアンタを仲間にいれたけど、こんなにも不真面目だとは思わなかったわ!!

でも承諾は承諾!明日からは試用期間と思い行動する事ね!!」


物凄い剣幕で告げたフィナが一人で先に町に向かって歩いていく。

その後をエルゼが追いかけた。


リクスは大きくため息をついて、マイクは何が彼女をそんなに不機嫌にしたのかわからないように首を傾げる。

そして私に一言謝ったマイクは、フィナとエルゼの後を追いかけていった。


「…マイクはリーダーだから」


「え?そうなんだ」


思い返すと私のパーティー参加もマイクが手続きしてくれたから、当然といえば当然のことだった。


「もしかして気にしてる?」


眉尻を下げて表情を暗くさせるリクスに私は尋ねる。

するとリクスは頷いた。


なんだかこういう寡黙キャラをみると、アイツを思い出すなぁ。とかそんなことを考えていると、卒業してまだ一月も経っていないのに懐かしく感じてくる。


今度手紙を書こうかな。

レロサーナとエステルには可愛い便せんで。

レルリラには……、アイツ返事書かなそうだな。しかも見るのも当分先になりそう。

そんなことを考えて私はくすりと笑った。


「気にしなくていいよ。フィナより貴族女性の方が面倒だったし」


勿論クラスメイトの話ではなく、他クラスの話だけど。


「…そうか。慣れたくはないだろうが、……すまん」


「気にしなくてもいいってば」


そんな感じで私はリクスと並んで町に戻る。

家に帰るともうお母さんはご飯作りに取り掛かっていて、私は慌ててキッチンへと入っていったのだ。








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