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恋愛初心者の恋の行方  作者: あお
学園編~五学年~
133/253

24 卒業試験④








残り時間が少なくなり、生徒たちに疲労が見え始めた頃、そいつは現れた。

先生曰く、『特大サイズの魔道具』だ。


「試験ってサイズじゃない!!!!」


そう思ったのも叫んだのも私だけじゃないだろう。

現に今、開けた平原でも私以外の叫び声が聞こえたんだから。


ちなみに一番小さいオートマトンで私と同じくらい。

もちろん目線の高さの話なので、浮遊している分は含めていないが、次のサイズから大体一mくらい追加された大きさなだけに、今現れた特大サイズのレベルが違いすぎる。

というかどこに本気を出しているのか。

絶対これを作ってるとき先生とヘルムートさんはあくどい笑顔を浮かべてたはず。

容易に想像できる。


皆が皆呆然と見上げるのに対し、特大サイズのオートマトンが動き出す。

地面に着いていた胴体?を浮遊させて、全方向に向けて魔法陣を描いていく。


「他のと全然違うじゃないか!」

「逃げなきゃ!」

「ポイントねーなら倒さなくてもいいってことだよな!?」


辺り一面氷漬けにしたオートマトンは続けて氷の針の魔法も発動させ逃げる私たちに向ける。

私達は防御魔法を展開しながら特大サイズのオートマトンから距離を取るために離れた。

だけど今まで倒してきたオートマトンの瓦礫が残ったままで、つまり何がいいたいのかというと私たちが逃げるのにめちゃくちゃ邪魔。


しかも平原だから遮るものもなにもなく、展開する防御魔法だけが頼りだった。


「サラ!」


そんな時アコが私に向かって駆け寄った。


「私が防御魔法を展開しておくからサラはあのオートマトンをお願いできる!?」


「っ、わかった!」


その提案に私は乗る。

ポイントがあるないに関わらず、あのオートマトンが攻撃を続けている限り、他のオートマトンを相手にすることは難しい。

というか、アイツが全部倒しちゃってるから私達のポイントがこれ以上増えないのだ。

どんな基準で試験の合否が行われるのか分からない以上、最後までポイントを稼がなければならない。


私は振り向いて大まかな距離を確認した。


(特大オートマトンまでの距離およそ五十m、全長およそ百m、なら必要魔力は……待って)


私はオートマトンの周辺に目を向けた。

周りを凍らせたオートマトンの魔法が消えずにあのままの状態でいるんだったら、それを利用したら消費魔力が減らせる。


私は以前見たアラさんの戦闘方法を思い出す。

私は凍らされた地面に手をつき、オートマトンの足元に魔法陣を描く。


「黙って凍ってなさい!」


バキペキと音がして下から順に凍っていく。

そしてオートマトンの全身が、厚い氷で全身を覆われるとアコが安堵の息を吐き出す。

私もほっとして立ち上がった。


(ていうか、オートマトンの魔力から私とレルリラの魔力が感じられたんだけど、ヘルムートさんに言われて提供してた私達の魔力ってここで使われてたの?)


てっきり新製品とか、王子から依頼された何かの魔道具に利用しているものだと思っていただけに、少し残念な気分になる。


「じゃあ残り時間ポイント稼ごう!」


「ええ、そうね」


私とアコはそう言ってオートマトンに背を向けた。

だけど私達よりも離れた場所にいた生徒たちが顔を引き攣らせながらいまだ見上げている姿を見て、嫌な予感を感じながら恐る恐る振り返る。


氷はそのまま。

全身を凍らされたオートマトンは見た目上何の変化もなかった。

だけど私に凍らさせれたままの状態で、オートマトンは前方、つまり私とアコにどでかい魔法陣を向けていた。


「「え…?」」


私とアコは固まった。

そして五mくらいはありそうな氷の塊が私達にめがけて向かってくる。

アコは悲鳴を上げた。

でもそのアコの悲鳴のおかげで私は動けた。


全身に強化魔法をかけてアコを担いで横に避ける。

でも氷の塊は大きくて少しは当たってしまうかもしれないと思ったとき、その氷は姿を消した。


「クルオーディ嬢!ハール大丈夫か!?」


大きな声で駆け寄ってくるのはシェイリンとメシュジ。

二人は私たちに目立った怪我がないことを確認するとホッと安堵する。


「とうやら無事みたいだな」


「二人ともどうして…?」


「クラスメイトが危ない目にあってるのに呑気に逃げてるわけないだろ?」


「それにしても解除魔法が間にあってよかった」


「……魔力量の残りは少なくなったけどな」


魔力量が減ったというのに笑みをみせた二人の姿に私は胸が温かくなる。

個人戦とか言ってたのに、発動したあとの解除魔法はその倍の量の魔力がいるといわれていたのにも関わらず、こうして助けてくれたクラスメイトの姿に嬉しさがこみ上げたのだ。


「でも、大丈夫なの…?顔色が…」


アコが二人を気遣う。

確かに魔力を使いすぎたのか、汗をかいているにも関わらず二人の顔色は悪かった。


「こんなもん騎士科の授業に比べたら全然マシな方だよ」


「確かに」


アコも半年近くやってきたあの修業、いや授業の日々を思い出したのか頷いた。

私はその様子を眺め苦笑する。


「じゃあ、皆で協力してアイツ倒しちゃおっか」


私がそう提案すると三人は笑って頷いた。


「そうだな。さっきのサラみたいにアイツの魔法利用すれば魔力も気にしなくていいかもだし」


「サラが凍らせても駄目だったから、後は破壊するしかないのだけど…誰がやる?」


「もし魔法が発動したら交わせないと思う。だから解除魔法はサラにお願いしてもいいか?」


それぞれが考えを口に出し、意見がまとまると私達はポイントにもならない特大サイズのオートマトンに向き直る。


そしてシェイリンとメシュジ、そしてアコが駆け出した瞬間だった。


『終了ーー!』


先生の言葉と同時に私達の身体は光に包まれ、闘技場へと戻された。


「これからだったのに!」


そう口にした人は意外と多かった。

他の属性でも私たちと同じように特大サイズのオートマトンに向かおうと決め、文字通りこれからだったのだろう。

私と同じ場所にいた三人も悔しそうにしつつも、転移させられたことに対し胸を撫で下ろしていた。


(…ちょっと疲れたな)


私ははぁと息をつき、空を見上げた。

雲一つない青空の中で太陽が明るく輝く様子はとても心が癒されるようだった。


『皆ご苦労さま。じゃあ、次の”試合”へ進む人と、卒業試験の合格者を発表するからな』


告げられた先生の言葉に、私達は先生の姿を見上げ首を傾げる。


「「「「「「………え?」」」」」」


卒業試験の合格者とは?

次の試験で決めるんじゃないの?


そんな私たちの気持ちを知って楽しんでいるのか、先生はニヤニヤした笑みを浮かべている。


『じゃあ先に卒業試験の合格者を発表するからな!』


全く意味がわかってないけど、それでも卒業試験はこれで終わりで、次の試合は卒業試験とは関係ないことだけは理解した。


「「「「「「えええぇぇぇええぇえーーー?!!!」」」」」」


闘技場内、というより生徒だけが驚愕し声を上げた。

先生はまだニタニタと困惑する私たちの様子をおもしろそうに笑ってみている。

基本的には友好的でとても接しやすい先生だけが、ちょっと性格悪くない?

意地悪すぎでしょう。


『”次の試合に進める”って言っただけで、次も卒業試験とは言ってないし、進めなかった者を不合格にするとはいってなかっただろ』


それはそうだけど!


『あと卒業試験の合否判定はポイント数じゃないからなー。じゃあ火属性の者から呼び上げるぞー』


ポイント制でもなかったの!?

再び絶叫しそうになった私達だが、先生が呼び上げる生徒の名前を聞き逃さないように、咄嗟に口を塞いで耳を傾けた。








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