22 卒業試験②
眩い程の光がおさまり、私は目を開ける。
せっかくの闘技場なのにいったいいつ使うのかという疑問を抱きながら、どこに転移されたのかを確認した。
「え、ここって…」
「授業でよく使ってた場所じゃない!」
アコが呟く声が聞こえ、続きを口にするように私が言った。
そう。
とても見覚えがある場所のこの場所は、私達がよくアラさんにしごかれ…いや教えてもらってた平原だった。
「おい、周りをよく見てみろよ」
知らない声が聞こえ、私は思わず周りを見渡す。
この場所の確認ではなく、誰が転移されているのかを確認するためだ。
そしてすぐに異変に気付く。
「…水属性しか、いない?」
明らかに生徒の人数が少ないこと、そして水属性以外の髪色を持つ生徒以外の姿が見えなかったことからこの考えに行き着いた。
どういうこと?水属性だけ集めて、試験内容はいったいなんなのかと不安の声が大きくなる中、先生の声が聞こえてくる。
『これから試験を始める』
空間に広がるような先生の声に拡声魔法でも使って話しているのかと思いながら耳を傾ける。
そもそも先生の姿が見えないことから闘技場から私たちに対して話しているのだろう。
『試験内容は簡単だ。
これから魔法研究所の協力のもと作られた魔導具が現れる。小さいサイズから五ポイント、十ポイント、十五ポイント。
まぁサイズ言ってもピンとこないかもしれないから、頭の形が丸が五、三角が十、四角が十五って具合で、形で判断してもいいな。
とにかくよりポイントを多く稼いだ者が”次の試合”に進めるから、沢山壊せよ。
最後に残り時間が少なくなった頃に特大サイズの魔道具を投入するが、これはゼロポイントだ。
倒しても倒さなくても、どちらでもいい。
じゃあ皆、今から三十分間潰されずに点数を稼げよ』
プツッ
先生は一方的に話した後通信を切った。
それが合図となっているのか、地面から次々と魔法研究室と協力して作ったとされる魔道具が現れる。
先生の説明通り、頭の形でポイントがわかるし、胴体にも獲得ポイント数が表示されているのでなんとも親切だ。
流石いろいろな魔道具を開発している魔法研究室である。
でも
「なによあれ!?」
鉄製で作られているのか、それとも鉱物で作られているのか黒光りしているフォルムに、胴体なのだろうか、中心部分から生えている虫の触手のような手足が宙に浮いていた。
ちょっと気持ち悪い見た目にみんながドン引く。
そして女子たちの表情が偉いことになっていた。私もだけどね。
「サラ!あれ見たことあるわ!オートマトン!魔法研究室で実戦訓練を受けていた期間中、私達相手に戦闘テストさせていたの!」
「え!?そんなことしてたの!?」
私とレルリラは魔力提供だったから他の皆がどんな手伝いをしていたことを知らず、まさか目の前の魔道具の動作テストをしていたとは驚きだ。
エステルとレロサーナも大したことはしてないって言ってたし。
「今はそんな話よりも倒してポイント稼がなければだろ!」
呑気に話をしていた私とアコにベジェリノが忠告する。
そして私とアコの間を通り抜け、目の前のオートマトンに魔法を繰り出し、あっという間に倒したベジェリノに私は呆気にとられた。
「ポイントを稼ぐってことは個人戦なんだからな!」
一体が倒されたことをきっかけに、次々にオートマトンが現れる。
どこから出没しているのかわからないけど、でも三種類のサイズのオートマトンに私達は誰よりも多くポイントを稼ぐために向かっていった。
何故ならベジェリノが言ったように、試験はポイント制でより多くのポイントを稼いだ人が次の試験に進める。
慣れあっている場合じゃない。と皆が判断しバラバラに散って、魔道具、オートマトンを倒しに行く。
「<ラーメー・デオー_水刃>>!」
「おい!俺が狙ってたやつ!」
「狙ってたならさっさと倒せ!」
各場所で詠唱魔法を唱える声が聞こえる中、私も数多く倒さないとと近くにいるオートマトンに魔法を繰り出した。
地面から氷を出し、オートマトンを突き刺す。流石に飛ばす系は周りの人たちが危ないからね。
私の魔法にオートマトンは活動を停止し、ピクリとも動かなくなる。
それを何度も何度も繰り返した。
(先生の説明には最低ラインのポイント数は告げられてなかった…)
それがどういうことなのかは考えなくてもわかることだ。
【上位に食い込むことができなければ脱落】
でも判断基準が各属性ごとの順番なのか、魔法科全体の順番なのかわからない。
更にいうと何名が合格出来るのかもわからないのだ。
(急がないと!)
レルリラならこの時点で私の倍は倒している筈だから。
幸いなことに一撃で倒せるのは助かった。
一体につき複数回魔法を使うのではこの先の試験のこともあるから、使う魔法を考えて且つ魔力量も考えなくてはいけない。
(オートマトンの動きもゆっくりだから、身体強化魔法も不要なところも重要ね!)
身体強化魔法は確かに一時的に能力が上がるけど、その後の肉体的疲労もドッと押し寄せてくる。
少しなら問題ないけど長時間は厳しいのだ。
先生が私達生徒の実力を考えてのオートマトンの能力設定なのか、それとも魔法研究室が配慮してくれたのかわからないけど、オートマトンの戦闘能力は高くなかった。
そのため試験時間の三十分という時間の間、ずっと倒し続けても余裕がありそうだと私は思った。




