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恋愛初心者の恋の行方  作者: あお
学園編~五学年~
130/253

21 卒業試験




あっという間に月日が経った。


走り込みばかりだった授業は三か月も続いたが、その後は走り込みは減らされ筋肉トレーニングが追加された。

だけど流石に騎士科のように筋肉ムキムキな肉体が仕上がることがなかったが、それでもかなり鍛えられた気がする。

肉体的にも精神的にも。


懸念事項だったお母さんとお父さんのドレスコードもレロサーナとエステルのお陰で何とかなったと思う。

そして私のドレス。

最初は学生なんだから制服で参加しようと思っていたけど

『うーん……確かに問題ないが、確実に浮くぞ』

と答えた先生の言葉で、私はエステルからドレスを借りることになった。

もう本当エステルには感謝しかないよ。

ちなみに何故いつもエステルに借りているかというと、背丈が一緒だからだ。

いつの間にか大人顔負けに成長したレロサーナから服を借りても、着こなせない自信しかない。


そして遂に卒業試験の日がやってきたのだ。





卒業試験は二段階の試験がある。


まずは筆記試験。

科によって流石に試験内容は変わるが、それでも魔法科にずっと在籍していた私達には馴染み深い魔法陣のテストが主な内容で、次に多かったのは魔物の特徴だった。


実戦までも経験した為、流石に皆の顔には余裕がある。

そしてすぐに先生の手によって採点され、合格基準を満たした私達は別の会場へと移動した。


「うわぁあ!広いね!」


卒業試験でしか使用されない闘技場に入場した感想は、かなり広い、そしてすごい迫力、だ。


実際に闘う場も、観客席も、授業で使っていた闘技場とは比べ物にならないくらい広いし、なにより観客席に人が埋まっているとそれだけで印象が違う。


オーレ学園の卒業試験で行われる実技試験には、勧誘目的で人選調査に来る者が四割、ただの娯楽で三割、そして生徒の家族が三割といった具合で、多くの観戦者が来場するのだ。

そのため空きの席はなく、寧ろ人気が高すぎて手に入らない人が出るほどだ。

私たち生徒は先生から家族にと招待券を予め配布されたため、私の両親は問題なく座れているだろう。


ガヤガヤと賑わう闘技場の観客席は、私がいる場所から見ると人の顔も小さく見え、本当に両親を探せるのか不安になるほどだ。


だけどそんな不安も杞憂で終わり、私の目にはお父さんとお母さんの姿がはっきりとわかった。


両親の周りには煌びやかな服装を身に着けている人で囲まれているため、ちょっと居心地悪そうにしているけど、たぶん保護者枠の席で、近くに座ってるのはきっとクラスメイトの親だろう。


「お父さん…お母さん…」


流石に観客席に向かって駆け寄ることも、大きく手を振ることもしないが、私が久しぶりに目にした両親の姿から目を離せないでいると、後ろからぬっと現れた人物が横に並ぶ。


「あれがサラの両親か?」


レルリラだ。

隣に並ぶレルリラに顔を向けることなく私は頷いた。

何故かお母さんはにやにや笑い、お父さんはショックを受けた様子に変わるから、意味がわからない私は首を傾げる。


(まだ始まってもないし、負けるつもりもないんだけど?)


でもそんなことよりも私のお願い通り来てくれたことが嬉しかった。


「そう、私の両親。お父さんもお母さんも来てくれたんだ……」


見に来てくれと強く希望したのは自分だけど、忙しかったら無理しないでとも書いていた。

だから可能性は低かったけど、それでも来れないんじゃないかと少なからず思っていたから、私は嬉しくて、そして思わずレルリラを見上げた。

そして驚いた。

レルリラがあまりにも綺麗に微笑んで私をみているものだから。

だから私は咄嗟に視線をずらした。


「そ、そういえばレルリラのお母さんは来てるの?」


「いや、母上は来ない」


「え?でも卒業してから会うんじゃなかったっけ?」


私は以前レルリラが見せてくれた手紙を思い出して問いかける。


「本当は父上と共に来るはずだったのだが、糞…いや、クソ爺が来るといいはった所為で断念したんだ」


「いや、言い直しているようだけど全然言い直されてないからね?」


文面的に表記が違うだけだけど、聞いている方としては全く同じだ。

まぁ事情を聞いた私としてはレルリラがそう言いたくなる気持ちもわかるから、改めさせることはしないけどさ。


「それにしてもどうして?レルリラの成長にすごく興味があるとか?」


「気持ち悪いことを言わないでくれ。

そうじゃなく、オーレ学園の運営は王族も関係があるからな、卒業試験という学生のイベントだが王族も顔を出すんだ。それで挨拶をするとわめいた糞爺が来ることになった」


「へ、へぇ…そんなんだ」


さっきの表情をどこにやったのか、げんなりと顔をゆがませるレルリラに私は苦笑した。

レルリラはすぐにいつもと同じ表情に戻る。


「…まぁ、どちらにしろやることは一緒だ」


「そうだね。手加減、しちゃだめだからね」


「…どうしようかな」


「だめだってば!」


私が怒るとレルリラは楽しそうに笑って「わかっている」と告げたあと、保護者席側の観客席にお辞儀をし、自分が整列する場所に向かった。

この学園では身分関係なく励むことを重要視しているが、流石にこのように一般公開される場では、身分の上の者から整列することになっている。

だから公爵家であるレルリラは当然のごとく最前列だし、平民の私は列の後ろ側だ。


『あー、…こほん』


全員が並び終えると、私達の担任でもあるヒルガース先生の声が会場内に響く。

私達生徒も、そして観客席側も試験開始を察して静まり返った。


『これより卒業試験を開始する。試験内容は…』


先生はそこで口を閉ざした。

そして続きを話すことなく、よく私達生徒に見せていた”いじわるそうな笑み”を浮かべ、腕を高く上げたあと指を鳴らす。


その瞬間私達の足元がパァっと光った。


何度も経験した先生の転移魔法。

卒業試験でもこれかと、逆に卒業試験でもいつも通りの展開で安心感も湧いてくる。


そして光は徐々に強くなり、私達は会場から消えたのだった。






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