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恋愛初心者の恋の行方  作者: あお
学園編~五学年~
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19 エスコートの申し込みと視点変更





「サラ!待ってくれ!」


引き止める声を耳にし私は立ち止まり振り返ると、そこにはさっきまで剣を振っていたユーゴがいた。

大きな体に鍛え上げられた肉体には、汗で張り付くように服がくっついている。

それだけ汗をかいているのだろう。

なにせ私達よりも騎士科のユーゴ達はハードなトレーニングを受けていたのだから納得だ。

それでもユーゴは息を荒くした様子も、辛そうな雰囲気もない。

いつも通りの訓練メニューをこなしていると、全身で訴えていた。


やっぱりすごいなと思いながら近寄るユーゴを見上げる。


「どうしたの?」


ユーゴは一瞬体を硬直させた後、言いずらそうに口籠る。

ちなみに体はなんだかくねくねとさせていた。

大きな体で鍛え上げられている筋肉が、汗で張り付いた服からもはっきりと確認できるため、体をくねくねさせるユーゴに私は思わず苦笑する。


「あ、あのさ、卒業試験後のパーティーのことなんだけど…」


「…パーティー?」


私は首を傾げた。


「ああ、卒業試験に合格した生徒と、その保護者が参加するパーティーのことだよ。

その時にさ、もしサラがよかったら、お、俺と……」


「え、待ってユーゴ!保護者も参加するの!?」


「そ、そうだけど……」


「やばい!」


私は初耳だった。

パーティーという言葉自体初耳だが、貴族の子が多い学園。

しかもタイミングがあれば王族だって通う学園なんだから、一回くらいパーティーをするだろうと納得できるが、保護者も参加するなんてと衝撃的な事実に耳を疑う。


嫌なんかじゃないよ?

寧ろ嬉しい方だよ?

魔法研究室から帰ってきて、自分の実力も結構伸びたと感じた私は「卒業試験絶対見に来てね!」と手紙を送ったくらいだ。

でもパーティーのことなんて頭の片隅にもなかったし、両親も参加するとなったら話は別だ。

あ、もう一度言うけど嫌とかじゃない。

私が心配しているのは準備のことだ。

貴族の子が多い学園で行われるパーティーなんだから、出席する保護者の服装だって気を付けなければならないことは言われなくてもわかる。

でもそれがめちゃくちゃ心配なんだ。

だって平民にとってのパーティーは、家族の誕生日とか家の中で祝う様な小さなもの。

当然ドレスとか用意しないし着たりもしない。

パーティーに参加する為のドレスを手配するだけでどれくらい時間がかかるのかなんてわからないけど、それでもすぐに用意できる者じゃないという事だけは知っている。

だから私は驚いて、そしてお母さんに早く伝えなくちゃと踵を返したのだ。


「え、ちょ、サラ!?」


後ろでユーゴの声が聞こえるけど、明日聞くからと返しつつ目が合ったレロサーナとエステルの手を掴んで連れて行く。


「私たち迄?!」


狼狽える二人には悪いけど、お母さんたちにどんな服装がいいかをアドバイスできる人がいないと手紙の書きようもないから、ここは甘んじて受け入れてほしいところだ。

「疲れてるところごめん!でもお願い!協力して!」と二人に頼みながら、私は二人と一緒に寮へと帰宅したのだった。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

視点変更


まるで嵐のように去っていくサラの後姿を、悲観的な表情で見つめ続けるユーゴの姿に一部の魔法科Aクラスの生徒たちは狼狽えた。


魔法科と騎士科は今回を除くと一度だけ合同授業をしただけで、顔見知りという関係が適切なのだが、それでも魔法科Bクラスと比べては人格的に好まれる生徒が騎士科には多くいたためにいい印象があった。

だが、いい印象があったとしても友情止まり。

一度の合同授業でまさか好意を向けられるほどに好かれているとは思っていなかった。

また魔法科Aクラスの生徒はレルリラがサラに好意を寄せていることを知っている。

その為いくらいい印象を持っている騎士科の生徒でも、悲観するユーゴにどう反応していいのかわからず、狼狽えるしかなかった。


そんな中ユーゴに話しかけたのはレルリラだった。


「……諦めろよ」


まるでサラの後姿をこれ以上見させないとばかりにユーゴの正面に立つレルリラは、挑発的に言葉を告げる。

そしてユーゴもレルリラの言葉を自分への挑戦状と受け取ったのか、レルリラよりも高い位置から目を細めて見下ろした。


「何故本人でもない人から言われないといけないんだ」


「お前に返事をしなかったのが答えだろう」


「サラは明日話を聞くと言ったんだ!」


睨み合う両者に一部の生徒が目を輝かせる。

それは主にレルリラとサラの今後の展開が気になる女子生徒に多かった。


そして最後のユーゴの荒げた声に他の騎士科の生徒と、魔法科と騎士科を受け持つ先生達が寄ってくる。

「どうした」と声を掛けたテヨンにユーゴは鋭くさせた目のまま振り返った。


「…本当になにがあった?」


テヨンはユーゴではなく、彼らの周りにいた魔法科Aクラスの生徒たちに尋ねた。

だが誰も口にしない様子からテヨンはヒルガースに視線を向ける。

ヒルガースは溜息をつきながら「サラ関係か?」と生徒たちが話し出しやすい形で問いかける。

すると頷く生徒たちに「詳しく話してくれ」と告げた。


「……あ、…えっと、大したことでないんですけど…サラのやつ、卒業試験後のパーティーの事知らなかったみたいで、親御さんにも伝えられてなかったからこの場にはいないんですけど……」


渋々話を切り出すサーにヒルガースは顎に指先を触れながら(そういえば話してなかったな)と考える。

だがサラと同じく平民のサーも知っているのだから、友人から話を聞けているのだろうと言わなかった自分に落ち度はないと納得させた。


「で?なんで二人がこんなにもケンカ腰なんだ?」


「…あっ、と…、パートナーとしてサラにお願いしようとしてたユーゴに、レルリラが…」


最後までいうことはなかったが、それでもそこまで話せば誰でも想像はつく。

現にヒルガースは「あぁ、それで」とやる気が削がれた表情を浮かべていたが、隣にいたテヨンは「そういう事なら先生はユーゴを応援するぞ!」と何故か張り切っていた。

頼むから刺激しないでくれとサーは思いながら、この場をどう鎮めるかとヒルガースに視線を向ける。




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