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恋愛初心者の恋の行方  作者: あお
学園編~五学年~
127/253

18 騎士科との合同授業再び





そして次の日。


昨日の夜から今日の朝にかけてレルリラとのトレーニングは中止になった。

レルリラ曰く、先生の言葉はその通りで、かなりの肉体疲労を考えられると予想できることから、騎士科との合同授業の間はトレーニングを控えようというものだった。

どれだけハードなんだと私は疑問に思いつつ、それでも環境の変化もあったことから前日の夜はぐっすりと眠ってしまった。


そして私達魔法科は先生がいう“かなりのハードコース”な授業を受けていた。


まず学園の外周を五十周。

学園の外周と言っても机上授業で使っている建物の周りのことをいっているわけではなく、普段私達が授業で使っていた練習場やエリア、そして寮の敷地も含めた外周だ。

学園の中で国一番の敷地面積があると言われているこの学園の外周を五十周も!?と気が遠くなりつつ、私達魔法科は走らされた。

ちなみに騎士科は大の大人以上の重りがある重石をつけて、私達の三倍の数を走っていたのだけど。


そして目標の五十周が終わる前には青空だった空が赤く染まり、そして暗闇へと変化する。

昼飯も夜飯も食べていない魔法科たち生徒を見かねて、にこやかに見守っていたヒルガース先生は騎士科のテヨン先生に訴えてくれてやっと終わることが出来た。

途端に地面に倒れ込む私達に


「魔法科の生徒は根性ないなぁ」


と呆れ気味につげられる。


いやいや、基準がおかしいからね。というツッコミは誰一人出てこない。

ガタガタと疲労で震える体では満足に話すことさえも出来なかったのだ。

ちなみによくここまで走れたなと思うかもしれないけど、ヒルガース先生が治癒魔法で適度に私達を回復させていたし、それでも足を止めようとする生徒には問答無用で魔法を連発して、強制的に走らされた。

なんて鬼畜なんだ。


でも何も言わない騎士科の先生に生徒たち。

まるで当たり前の光景かのように「ふーん」って顔で眺めていただけだった。


そして先生の言葉を実感する。

私もレルリラとのトレーニングで体力が着いたほうだと勝手に思っていたけど、騎士科の授業内容はトレーニングの比じゃなかったのだと。


(レルリラは…?)


重い体を地面に預けたまま私はレルリラの様子を確認すると、尻を地面に付き、膝に腕を乗せた状態で俯いていた。

いつも余裕たっぷりな様子を見せていたレルリラも疲れることあるんだなと考えていると、レルリラは立ち上がるとこっちに来た。


私の前まで来ると膝をついて、横になっている私に手をかざす。

ぽぉと赤い魔力が私を包み込んで、疲労が薄れていくのを感じた。

よくこんな疲労感の中で魔法を使う気になれるなとは思うが、めちゃくちゃ助かった。


「…ありがとう」


へらっと笑っていうとレルリラは一度視線を外してから「大丈夫か?」と尋ねる。


「うん、もう大丈夫だよ」


私はそう答えつつ(最近コイツよく視線そらすなぁ)と考える。

いつからだろう。

ちょっと前まではそんなことなかったと思うけど、気が付いた時にはこんな感じになっていたのだ。

それでも私の事を避けるとかしていないから気にしていないそぶりをしているが、ふとしたときに気になってしまう。


私は立ち上がって背中に着いただろう土をほろってからエステル、レロサーナ、そして皆を回復させていった。

肉体と精神的疲労はピークを越えていたが、魔力は使っていない授業だった為に皆を回復させても余裕がある。

それは皆も同じだったのか、回復できた人は他の人へ治癒魔法を掛けてくれたため、ずっと早くに治癒魔法がかけ終えた。


「…根性はなくても魔法というのは実に便利だな」


そう告げるテヨン先生に苦笑するヒルガース先生が私たちの近くまで歩いてきた。


(レルリラがいなかったら治癒魔法を使う体力もなくて、まだ地面と仲良くしてたわよ)


心の中でそんなことを考えながら、次は何をするのだろうと身構えているとテヨン先生が口を開く。


「じゃあ魔法科の生徒は今日は帰っていいぞ」


そうは言われたが私は戸惑った。

先生達の背後でそれぞれの愛用している武器を手にし、素振りをしている騎士科の生徒たちが目に入っているからだ。

もう帰っていいのか。確かに空は暗くなっているが、まだ騎士科の生徒たちは動き続けているのに、本当に帰ってしまってもいいのだろうかと葛藤する。


そして考えた末に流石にダメだろうと私は口を開いた。


「あ、あの…むぐっ!」


「わかりました!明日もよろしくお願いします!」


エステルが私の口を塞ぎ、他の皆が先生達に挨拶をする。

私は驚きと疑問でいっぱいで、口を塞ぐエステルのされるがままでいた。


「ああ。今日はゆっくり休め」


「ストレッチは忘れずにな」


そして先生達も私達にそう言って、騎士科の人たちのもとへと戻っていく。


「ぷはっ!いきなりどうしたの?」


先生が私達と距離が離れたところでエステルが私の口元から手を離した。

夜になっていたことから少し冷たくなった空気が、私の口の中に大量に入ってくる。

私はエステルに振り返った。

だけど答えたのはエステルじゃなくて、レロサーナ。


「どうしたのじゃないわ。サラ、貴方何をいうつもりだったの?」


「え?騎士科の人たちがまだやっているから当然帰るのは早いっていうつもりだったけど」


「やめて!」


「え?」


レロサーナは守るように体を抱きしめる。

私は首を傾げたが、どうやらみんなはレロサーナと同じような考えを持っているのか、レロサーナと同じような目で私を見ていた。

………あれ、なんだか私悪者みたいな扱いされてる?


「…俺たちもクティナナ嬢に同意見だ。いきなりハードな訓練は体にも悪い。

明日以降も合同授業を行うからと先生達も俺たちに徐々に慣れさせようと、今日は帰れっていってくれたんだろ?」


「騎士科の授業内容は魔法科と違い、肉体的トレーニングが基本だからな。

ヒルガース先生がなにも言わなかったのも、肉体的トレーニングはテヨン先生の方が詳しいと思ってだろう?

そんなテヨン先生が俺たちに帰れっていったんだ。大人しく帰ろうぜ」


「ええ。その通りです。それにヒルガース先生が回復をしていてくれたとはいえ流石にこれ以上体を動かせません」


「皆……」


切実に”大人しく帰ろう”という思いが伝わってくる。

それに確かに皆がいうように、魔法科の私達にとって、しかも毎日欠かさずレルリラとトレーニングしていたのにも関わらず私もレルリラも撃沈していたのだ。

私はレルリラに目を向けた。


「……休息は必要だ」


これが決定的だった。


よかったと安堵する皆と一緒に私達は寮へと戻ろうと歩き出したところだった。


「サラ!」


と私を引き止める声がした。




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