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恋愛初心者の恋の行方  作者: あお
学園編~五学年~
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13 お願いの消費②







「で、なんだったの?」


私はヘルムートさんから渡された私の体よりも大きな水晶玉のような物に手を当て、魔力供給をしながらレルリラに尋ねた。


魔法研究室には今私とレルリラが供給しているこの水晶玉みたいなのがいくつもあって、研究や実験の際に使っているらしい。だけど今この水晶玉の魔力がかなりなくなっているそうだ。

内容は言えないらしいけど、第一王子からの依頼でなにやら魔道具の開発を行っていて、それに魔力を持っていかれているものだからなかなか供給まで手が回せないらしかった。

そんなとき魔力量を多く持つ私とレルリラが救世主のごとく現れたらしい。


第一王子が魔法研究室になにをお願いしてるのかは気になるけど、私が知れることではないからヘルムートさんには深くは聞かなかった。


そしてそれ以上に気になるのが突然のレルリラの行動だ。


私が魔物と戦っている最中いきなり飛び込んでくるなり、恋人は作るなというわけのわからない言葉を口にしていた。

思わず目が点になってしまったけど、その前に魔物をと思って返事を後回しにしていると、何故かレルリラが倒してしまう。

ちなみにいうが、私はてこずっていたとかそういうわけではない。

倒されてしまった魔物を含めると三体目というだけで、手こずって時間がかかっていたとかそういうわけではないのだ。


そして笑い声を交えながらヘルムートさんが交代の指示を出し、レルリラは我に返ったのか顔を赤く染めて「忘れてくれ」といった。


私は私で不思議に思いながら訓練場(と勝手に呼ばせてもらってる)を出てヘルムートさんの元に向かう。

そしてレルリラの戦いを見ている私に『彼の言葉聞いてあげてね』と言ったヘルムートさんの言葉もあり、私はレルリラに事情を聞くことにしたのだ。


「………」


だけどレルリラは答えず口を固く閉ざしている。

しかもどういうわけか悲しげな表情までしているようにみえる。


だからか、私はつい言ってしまったのだ。理由も聞かないまま。


「…、約束してもいいよ」


するとレルリラは俯きがちだった顔を上げた。

その顔は先ほどまでの表情とは打って変わって、花開いた明るい表情にみえる。


あまりの違いっぷりに私は思わず笑ってしまうと、レルリラが少し怒ったような、機嫌が悪い時の表情に変わる。


「嘘か?」


「ううん、嘘じゃないよ。本当」


私は咄嗟に否定した。


「前にさ、私とレルリラ賭けをしたじゃない?その時のお願いまだ言ってなかったでしょ?

だからそのお願いをここで使うなら約束してもいいよって言ったのよ」


「……」


レルリラはすぐに答えなかった。

だけど表情をみる限り、賭けをしたお願い事をここで使うという私の案にのったのだろう。

なにか考えて、そして口を開く。


「じゃあ、少しの間でいいから、約束してほしい」


「うん、いいよ」


私はやっぱりね、と思いながらすぐに承諾した。

レルリラからのお願い事とはいえ、話を蒸し返し、そして賭け事の時の話まで持ち出したのは私だからだ。

でも、こうしないとレルリラはいつまでもお願い事なんて浮かばなそうだからね。

本当私じゃなかったら、そのままなかったことにされてたと思うよ。


「…あ、一つ確認していい?」


「なんだ?」


「少しの間っていつまで?」


私が気になって尋ねるとレルリラは「Sランク冒険者になるまで、か?」と答えた。


「確かにそれは少しの間だね。

ん?…ちょっと待って。何で疑問形なのよ。全然少しって思ってないってこと?」


そうだとしたら怒るしかない。


「違う。疑問形だったのはお前の自由を奪っていることになると考えたからだ。本当にいいのかと、疑問形になったんだ」


本当にレルリラは言った通りのことを思って疑問形に告げたのだろう。

私はそっかと答える。

そして…


「気にしなくてもいいよ」


「…え?」


「私の行動を制限することを気にしてるんでしょ?

そもそも私は目標が達成するまで他のことは後回しにしちゃう方でね。自分でも気をつけるようにはしてるんだけど…。

前にもエステル達に言われたのよ。

だから、レルリラがなんで言ったのか知らないけど、私は私の夢を応援してるように感じて嬉しかったよ」


だから気にしないでと告げるとレルリラは頷いた。

そして表情も難しそうにしてた顔からいつもの表情に戻ってくれたから、私としても安心した。


でも


(なんでレルリラはあんなこと言ったんだろう)



とりあえず同室なんだから、変な雰囲気にならなくてよかったと思うのだった。





でもそんなに気にしなくてもよかったみたいだ。

いや、もちろん人間関係良好なのが一番だけどね。


今私たちの前には喜びから雄叫びをあげているマルコがいた。


なぜって?

ヘルムートさんが私たち魔法科の生徒にもう一部屋貸し出してくれたからだ。

なんでも人数だけで判断し、男女のことは考えていなかったらしい。

そんな馬鹿なと思うようなことだけど、昨日私達を案内してくれた人は不思議に思ってなかったから、もしかしたら魔法研究室では感覚が鈍るのかもしれない。

でも報告を受けたのか次の日、皆が集まっていたタイミングでヘルムートさんが話してくれたのだ。


『本当にごめんね。こっちの不手際で男女一緒の部屋にしてしまったらしくて。もう一部屋用意させたから使って』


と。


そうしたらマルコがやつれた顔で『ヨッシャァァアアア!』と叫びだした。

よほどレルリラとの同室が嫌だったらしい。

まぁ無理もない。誰だって一晩でやつれるほどに無理したくはないから。


「…あれ?でも与えられたのは女子に対してだからマルコは結局レルリラと一緒なんじゃ……」


そんなことを私が言うと、サーがやって来て私とレルリラの肩に手を触れる。


「確かになぁ。マルコが一人で部屋を使えば、レルリラはその分サラと_」


「サユスク」


「え?」


「今夜は俺と一緒に夜を過ごすか?」


「……え?」


レルリラの一言でニコニコと穏やかだったサーの顔が青ざめる。

私は私でレルリラの方に視線を向けると、普段と変わらない表情を浮かべるレルリラを確認したから「程々にね」とだけ言っておいた。


青ざめるサーと、それを楽しそうにみるマルコ。

そして呆れながらサーを応援するクラスメイトの中、私はゆっくりと食事をしたのだった。






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