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恋愛初心者の恋の行方  作者: あお
学園編~五学年~
119/253

10 巻き込まれた男の災難





(視点変更)マルコ視点


サラを部屋から追い出した俺は、赤く色づいたレルリラに言葉を掛けた。


「大丈夫か?」


「……ああ」


部屋決めの際、どうでも良さそうな表情で突っ立っていたレルリラは当然のように余り枠に入った。

俺はというと平民組の三人一緒に部屋を使おうと話していたところだ。

仲良くなったとはいえ貴族と同じ部屋を使うのはと気後れしたのは内緒だ。

きっと皆は気にするなよと言ってくれるだろうから。


だけど急にレルリラが来た。

「一緒の部屋になれ。お前なら大丈夫だ」とかなんとかいって、俺の場所にメシュジを入れたんだ。


いきなり何なのか全くわからなかったが、相手の女子がサラだったことをみて納得した。


考えてみればそうか。

女子は人数的に一人余る。

そこに平民の身分がいれば当然そいつになるだろう。


(それでレルリラは男子の中でも水属性でサラと親しいっていえば親しいメシュジを一緒にしたくなかったと。

で、友達関係を築き、レルリラに一番近かったのが俺だったと)


好意を抱いている相手に、下手に男を近づけさせたくない気持ちはわかる。

わかるけど、コイツ本当に気付いているのかと俺は思ってしまった。


何くわない顔して「一緒の部屋は嫌か?」とか聞いて、サラもサラで「嫌じゃない」とか言ってるが。

好きな女子と一緒の部屋がどれだけ精神的にクルのかこいつは理解していない。


そして冒頭に戻るのだが、レルリラはやっと自分がどんな選択をしたのかを気付くことが出来たのか、真っ赤な顔を覆う。


「……はぁ」


溜息をつきたいのはこっちだ。


「部屋替え、するか?」


今なら楽に交換できると思うからと問うと、レルリラは首を振る。


「耐えられるのか?湯上り…はシャワー借りさせたけど、夜はこの部屋で寝るんだぞ?

俺も一緒にいるけど、お前ここでちゃんと寝られるのか?」


俺はレルリラの隣に腰を下ろした。

高いベッドなのか固すぎず柔らかすぎず、適度に沈むベッドに快眠を期待する。が、今の問題はレルリラだ。

レルリラは顔を覆っている手をどけて、サラが選んだベッドに目線を向ける。

想像でもしているのだろうか、間を置いた後レルリラは頷いた。


「夜は暗いからいける筈だ。目も瞑っていれば寝れる」


「本当かぁ?」


「ああ」


大丈夫だ。信じてくれと訴えているかのようなレルリラの視線に俺は溜息をついた。

サラがレルリラの言葉を聞いてしまう理由がよくわかる。

とんでもなく失礼だとは思うが、それでも犬のように見つめてくるレルリラの視線には敵わない。


「わかった。でも念の為俺が真ん中で寝るからな。俺の安眠の為だ」


「………お前、サラの隣じゃないと安眠出来ないのか?」


「お前がサラの寝息を聞いて興奮しないようにいってんだよ!」


なにを勘違いしてんのか、トチ狂ったようなことをいうレルリラに俺は間髪入れずに否定した。






そしてシャワーを借りたサラが部屋に戻り、クラス皆で夜飯を食べに行こうと店に出掛けた。

支払は学園負担と聞いていた為に学生証を携帯するのは忘れない。

王都の街並みをイメージして作ったと聞いていたショッピングエリアは隙間なく店が並べられていた。

店のジャンルごとにまとまりがあり、服なら男性物と女性物がそれぞれ独立し、店舗数も少ないから買い物時間もかからなそうだ。

そんなショッピングエリアで一番面積が大きかったのは休憩スペースだ。

そのまま休憩にも利用されるだろうが、持ち帰りが出来るように料理を容器に詰めて販売している店舗の前に休憩スペースが広がっていることから、食事をするスペースとして利用されているのだろう。

俺たちは各自食べたいものを選んで買い、休憩スペースで食べることにした。


初めての場所で、クラスメイト全員が一緒に食事をとること自体初めてで、俺たちは楽しいひとときを過ごした。


また明日と明日へと繋がる言葉を伝えあい、さあ寝ようとベッドへと潜り込んだのだ。


ベッドは初めて腰を下ろした時感じたように、ふかふかでちょうどいい硬さだった。

体にかける布団も羽毛を使用しているのか重さを感じず、温かさが体を包み込む。

あぁ、なんて気持ちいいベッドなんだと睡魔に身を任せようとした時だった。


熱を逃さないように、でも柔らかく軽い布団が俺を包み込んでくれていた筈なのに急に退けられ、外気にさらされる。


なんなんだと睡魔に意識を飛ばしかけていた俺は、眠らせてくれと主張する重い瞼をこじ開ける。

部屋の中は暗く誰がこんなことをしているのかは見ることが出来なかったが、こんなことをする可能性がある人物には心当たりがあった。

寝れるからと、部屋を誰とも変えるつもりはないと主張したレルリラだ。


しかも奴は俺の口に閉口魔法を掛けたのだ。

お陰で不満を口にすることもできない。


それでもサラが起きないように気遣っているのか、物音を立てずに部屋から俺を連れ出した。

そのまま宿舎からも飛び出して、やっとレルリラは口を開く。


「わりぃ……お前が聞いた意味がやっとわかった」


「………」


今更か。と俺は言いたかった。

だけど口には出来なかった。

閉口魔法をこいつはまだ解いていないからだ。

解除魔法を使えばいいだろうと思うかもしれないが、こんな気も起きない俺はそのまま突っ立ってレルリラをジト目で見るだけだ。


「サラの寝息が、あれほど強烈だとは思わなかった…」


「………」


その言葉だけを聞いたらサラのやつ怒るだろうな。

レルリラは好きな相手の寝息がかわいいとかなんとかそんな意図で言っているだろうが、事情を聞かず言葉だけ聞くとアイツのイビキが凄いと誤解するだろう。


「…それに暗闇の中で聞こえる、布の音もやっかいだ…」


「………」


部屋には俺も一緒にいることをこいつ覚えているのだろうか。

同じ素材の寝間着に同じベッドで、布の音がどっちのものかを聞き取れるのかとツッコみたい。

だが相手がレルリラであることから、聞こえてくる音の大きさで距離を判別しているのかもしれない。

天才も度を超すとタダの変態だなと、俺は思った。


「…わりぃがこの熱を冷ます迄付き合ってくれ」


「!?」


もしかして心の声が洩れていたのかと俺は思った。

だけどレルリラの閉口魔法は解けていない。

洩れるも何も口に出すことが出来ないのだから、レルリラに伝わるわけがないのだ。


レルリラは走り出す。

俺の手首を掴んだ状態で、走り出したのだ。


こんな真夜中に、明日も魔物との実戦があるというのに、興奮が冷めないという理由で関係ない俺を巻き込んで走り出すのだ。


普段レルリラとサラの関係を見るのは楽しめる。

進歩ねーなーとか、サラはいつレルリラの気持ちに気付くんだろうかとか、長くてじれったい小説でも見ているかのような気持ちで見ていられる。

だけどこんな形で関わることだけは嫌だった。

勘弁してほしかった。


俺は自分の睡眠時間を削ってまで、恋愛初心者で鈍感なやつたちの間に挟まれたくはないのだ。



「んんんん(ばかやろ)~~~!!!!!!!!!」




視点変更終


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