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恋愛初心者の恋の行方  作者: あお
学園編~五学年~
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4 学園の外に


言葉通りこれから私達は学園外での校外授業が開始されるのだろう。

四年の時と同様に生徒全員を校門の前に移動させた先生と私達生徒の前には、あの時と同じように王立騎士団の人たちが待っているのかと思いきや、そうではなかった。


「あれ…?」

「あのローブは…」


戸惑う声が周りから聞こえてくるが、私には皆目見当もつかないので首を傾げるだけとなる。

田舎町出身の私は王立騎士団の格好も学園に来て初めて見たのだ。

天秤のような模様が背中に大きく入っているローブを身に纏っている人達が何者なのか知る術もない。

だけど答えはすぐに教えられた。


「お前達は魔法研究室の皆さんに世話になってもらうことになったぞ」


先生の一言で私達の前で待っている人たちの正体が判明した。

魔法研究室とは、王立騎士団と同じく王が作った機関の一つだ。

騎士団は国を守ることを目的とされているのに対し、魔法研究室は国を支えることを目的とされている。

ただ支えるといってもその役割は大きい。

新しい魔法を研究し作成することや、国民の生活水準を上げるための魔道具を作り出していることは勿論、魔物の生態などの研究も行っていると聞いたことがある。


そんな魔法研究室に私達が…?と不思議に思うのは無理もない。

本来ならサポート科の生徒達が実習に向かう場所なのだから。……と誰かが口にしてるのが聞こえてきた。


「本来ならば王立騎士団と共に行動することで、実戦経験を積んでもらいたいと考えていたのだが、昨日も伝えた通りお前らの安全確保が出来ない以上それは難しいと考えた。

とはいえ、オーレ学園に通っている以上実戦経験を培われないまま卒業させることに反対意見もある。

よって、魔法研究室の皆さんにお願いし、お前らには魔法研究室で実戦経験を積んでもらおうと決めた」


「あの、魔法研究室での実戦経験とはどういうことですか?」


「お前らも知っているとは思うが、魔法研究室では魔物の研究も行っている。

本物の魔物を捕らえた上で、調査を行っているんだ。

つまり施設の中という条件はあるが、本物の魔物との戦いが出来るということだな」


先生がそう話すのは学園での戦闘はあくまで学園が作り出した幻影との戦いだからだ。

私達は本物の魔物との戦いをまだ行えていない。

それを私達生徒よりも、生徒を受け持つ先生たちの方が重く受け止めているのだろう。

なんとかして実戦経験を積んでもらいたいという気持ちと、生徒達の安全を確保しなくてはならないという責任感から、こうして打開策を考え出したのだろう。

その結果が魔法研究室での実践訓練に至ったわけだ。

それに何よりサポート科と私たち魔法科は目的が違うため、同じ魔法研究室にいたとしても被ることがない。


そして私達は魔法研究室の人達がいる場所へ向かうよう先生に促される。

手を振って私たちを見送る先生だけど、こういう生徒を預けるときって先生が先頭に立つんじゃないのかな…?


愛想よく受け入れてくれた魔法研究室たちの人たちに、女子生徒はカーテシーを、男子生徒はボウ・アンド・スクレープの姿勢をとって挨拶をした。


「じゃあ半年の間よろしくね」


そういってニコニコと人付き合いがよさそうな笑みを浮かべながら、少し天然パーマ気味の男性が私達生徒に微笑んだ。


なるほど。

先生から全く詳細を聞いていないけれど、私達はこれから半年の間魔法研究室のところでお世話になるらしい。

しかも通うのではなく、泊まり込みコースだったみたいだ。

言ってよ。

なにも持ってきてないよ。

魔法研究室がどういうところかわからないけど、そこで泊まるということは下着とか必要じゃない。

と憤慨しそうになったけど、どうやら必要な物は全て支給されるらしい。

なんて太っ腹なんだ。

私はとても感動した。


「じゃあ、移動しながら話をさせてもらうね」


そういわれて私達は明らかに鉄のような素材で作られた馬がひいている馬車の中へと乗り込んだ。

しかも中は広く、大型のボックス型の馬車なのに、馬の数は一頭だけ。

作り物の馬とはいえ、一頭の馬だけで生徒全員が乗り込めるほどの大きな馬車を、本当に引っ張って動けるのだろうかと心配するほどだった。

だけどそんな心配は杞憂で、動き始めもスムーズ。

全く揺れないのだ。

なんだこれ、凄い。

馬車って入学の為に王都までやってきたとき以来だけど、あのときはすっごいガタガタ揺れて二度と長距離移動では乗るかって思ったことを思い出してしまう。

二度目だけれど私はとても感動した。


馬車に乗ると窓から変わる景色を見続けたい気分になってしまうが、私は魔法研究室の人の話に集中する。

ちなみにいうと、隣にはレルリラが座っている。

チームでメンバーが決められていない場合、基本的には教室内での席並びが暗黙のルールだから、隣にレルリラが座っていることに深い意味はないことを告げておく。


「さて、君たちを任された魔法研究室所属のヴィルヘルム・ヘムルートだ。よろしくね。

早速だけど君たちには魔法研究室に着いたら僕たちが開発した魔力装置で魔力量の測定をしてもらうよ」


「魔力装置、ですか?」


「そうだよ。といっても君たちが知らないのは当然だ。

まだ試験テスト中の魔道具だから一般的には知られていない物だからね」


「どうして魔力装置で魔力を計るんですか?」


「僕たちが君たちを知らないからだよ」


ヘルムートさんに比較的近くに座っている生徒が次々に質問し、ポンポンと答えていくヘムルートさんは嫌な顔をせずに胸元を漁りだし、なにかを取り出した。


「本当は魔力を具現化して説明して見せた方がかっこいいんだけど、あいにく僕には絵のセンスは皆無だからね。

こうして絵が得意な者に事前に書かせてもらったんだ」


そういって私達に見せたのは成人男性の上半身くらいに大きな紙だ。

しかも私が子供の頃にお母さんに読んでもらった絵本のような可愛らしい絵が描かれている。


「まず君たちの実力を僕たちは全く知らない。それで魔物と戦わせるといっても、レベルが全く合わない魔物と戦わせてしまうこともあるだろう?そんなことになったら魔法研究室にとっても信頼問題になってしまうからね。

だから君たちの魔力量を事前に測らせてもらうことで、ある程度のレベルに応じて分けさせてもらうことにした。

複数で挑む場合については測定させてもらった魔力量を考慮して、こちらで勝手に決めさせてもらうから文句は言わないでね。まぁオーレ学園に通う生徒ならどんな人が相手でもチームを組めるよう教育されてきていると思うけど。

ちなみにいうと、僕たちは管理している魔物たちの魔力量も測定し把握しているから、各々の数値に近い魔物なら死ぬようなことはないと考えているよ」


「あの、……僕たちの魔力量を測ることはわかりましたが、僕たちのことがなくても魔物の魔力量を把握してるってなぜですか?それにレベルに応じて分けるとは?」


「それはこちらの管理方法による都合だね。

魔物は魔物同士が近くにいると感じ取ると、共鳴するのか、それとも捕食欲求が強く出るのかはまだ不明だけど、能力値が上がることがあるんだ。

魔法研究室では多くの魔物を管理していてね、研究の支障にならないようにある程度の距離を保ちながら隔離をしているから、君たち全員を同じ場所に連れていくことは非効率なのさ」


なるほど。それで紙には大人が複数の子供をそれぞれ引き連れている状況が描かれているのねと私は納得した。

それと弱、中、強と書かれている意味も。あれは魔力量を示しているんだ。


「あの、僕たちは本物の魔物との戦いをしたことがなく、今回実戦を行わせていただけると聞いていますが、魔法研究室にとっては大丈夫なのでしょうか?」


「ん?」


「私達が倒せてしまうと、折角の研究が滞ってしまうのではないかと…」


「ああ、そういうことね。それは問題ないよ。君たちの先生とはそこも織り込んで条件を提示してもらっているからね」


ヘムルートさんの言葉に私達は疑問符を頭上に掲げた。


「あ、もしかしてこれも聞いてない?君たち生徒達には、僕たちが作った試作段階の魔道具の試験テストに付き合ってもらう約束をしているんだよ」


だから、これから半年の間よろしく頼むよ。と口にしたヘルムートさんに私達は目を点にしたのだった。





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