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恋愛初心者の恋の行方  作者: あお
幼少期~学園前~
11/103

9 久しぶりのお手伝い②



私はそう質問した。

お母さんの言葉を聞いていると、詠唱、無詠唱が便利すぎて、あらかじめ魔法陣を用意しておいた方がいい場合というのが思いつかなかったからだ。

お母さんは悩むかと思ったけど、そんな仕草は見せずにすぐに答える。


「魔力量がある程度決まっている時よ。

魔法によって必要な魔力量が違うのだけど、サラが今まで覚えてきた魔法陣、どれも使う魔力が一緒じゃないのは気付いた?」


そういわれ、私は首を振る。

魔法がちゃんと発動できることは確かめていたけれど、どれぐらい魔力量が必要なのかなんて気にしていなかったからだ。


「じゃあそうね……、例えばこのフライパン。

このフライパンは魔道具でね、事前に複数の魔法陣が描かれているのよ」


そういいながら、いつも調理に使っているフライパンといくつかの卵と大きなお肉をテーブルの上に並べ始めるお母さんを私はじっと眺める。


「このフライパンの取っ手にはいくつかのボタンがあってね、まずは一番上のボタンを押して魔力を流してみて?」


フライパンの取っ手を私に握らせたお母さんは、フライパンに卵を割って乗せる。

私は言われたとおりに一番上のボタンを押した。

するとじゅう~と音がなり、透明だった卵の周りがどんどん白色に染まっていく。

あっという間に目玉焼きが完成した。


「じゃあ次に一番下のボタンを押してみて?」


ちなみにフライパンの中にあった卵はお母さんの手によって皿の上に並ばれて、今はテーブルの上にあったお肉がフライパンの上に乗せられている。


「わ!」


ボタンを押すとさっきよりも激しく焼く音が私を驚かせた。

そういえば野菜を切るまではお母さんのお手伝いでやってはいたけど、熱するようなお手伝いはしたことがなかった。

じゅうじゅうと激しい音を間近で体験した私はビビッてフライパンから手を離しそうになってしまったが、お母さんがフライパンを浮かせてくれたお陰で火傷しなくてすんだ。


「このボタン一つ一つに魔法陣が込められているの。

それで、最初サラが弱く熱するようにという魔法陣が埋め込まれたボタンと、さっき押したボタン、どっちが魔力を使ったかわかる?」


「最後に押したほうが、魔力を使った…かも?」


「その通りよ。魔法陣には元々発動に最適な魔力量を刻むのだけど…ほら、ココ。

この数値が必要な魔力量を示す数値なのよ。

だから今みたいに場所の固定、そしてあらかじめ必要な魔力量がわかっている場合、つまりフライパンのようなものに魔法陣を活用することで、誰でも失敗なくできるというわけよ」


まぁ異なる属性と魔力そのものが足りなかったら発動すらしないし、焼き過ぎたら今度は焦がしてしまうからそこは個人で判断するところだけど、とお母さんが付け加える。


「魔法陣は一度記入してしまうと、書き直さなければ調整が出来ないのに対し、詠唱と無詠唱は、本人の魔力操作によって都度魔力量が調整できるの。

それでも魔法陣が魔法の基礎なのだからと最初にたくさん書かせて覚えさせたのは、魔法を発動させるための発動元が魔法陣だから間違えて覚えないようにと、今みたいに目玉焼きを作るにはこれぐらいの魔力量が必要なんだなと感覚でわかるようになるからよ」


わかった?と微笑まれて、私はうんと頷いた。


「じゃあ今度からは魔力量についても意識して取り組んでみてね」


「うん!」


ただたんに魔法陣を覚えていくのではなく、今度からは魔力量についても意識して覚えていく。

あえて少なくしてみたり多くしてみたりと実際に試すのだ。

そうなると今まで覚えてきた魔法陣も、魔力量がどれぐらい必要なのか一から勉強する必要が出てくる。


気合を入れる私にお母さんは焼き色がついたお肉が乗ったお皿を置く。


「先にお昼にしようね」


「うん!」





そして数週間後には、日常生活に使われているような魔法の魔法陣を全て覚えることが出来たし、詠唱魔法に挑戦する頃にはお母さんも私に今以上に家事をお願いするようになった。






「サラ、久しぶりにお父さんとクエストに行かないか?」


そう口にするお父さんに私は首を傾げる。

オーレ学園に合格する為にも私が勉強や魔法を頑張っていることを知っているのに、尋ねるお父さんが不思議に思ったのだ。


「…どんなクエストなの?」


そう返すとパァッと花が見える程に嬉しそうな表情を浮かべたお父さんは、嬉々としてクエスト内容を話す。


「薬草採取なんだ!」


「行く!」


薬草採取は常時受け付けているクエストであるから、いちいちギルドで受付する必要がない。

だけど、こうしてお父さんが私に声をかけてくれたってことは、薬草について教えてくれるのだろうと私はすぐに返事した。

現金だと思われるかもしれないが仕方ない。

知識はとても重要だ。


「じゃあ行こう!」と喜ぶお父さんと共に家を出る。

ちなみに私の鞄はお父さんがしっかりと用意していた。


薬草は森に行かなければ手に入らないというわけではない。

もちろん珍しい薬草は森に生えていることが多いが、その辺に生えている雑草と同じように、道端にも生えていたりするのだ。

ただその辺に生えている薬草は見分けづらいし、とても珍しくて貴重なものではない。

でもとても安全に採取することができるというメリットがあった。


町から少しだけ離れた場所の草原で私とお父さんは薬草がないかしゃがみこむ。


「お父さん、薬草ってどうやって見分けてるの?」


「形や色だな。今いるような開けた場所では主にポーション草って言われる薬草が生えていたりするんだ。

ポーション草は茎の部分が太くて平べったいし、群生していることがあるから比較的みつけやすい…お、さっそくあったぞ」


見つけたポーション草なるものをお父さんは私に手渡した。

確かに茎部分が平べったくなっている。

前までは適当に草を抜いてお父さんに判断してもらっていたけれど、これならよく見れば私にも見分けらえるようになるかもしれないと思った。


ちなみにポーション草は疲労回復の薬が作れる薬草のことである。

これは結構需要があるから冒険者として登録している子供たちも、今の私達みたいにしゃがんで地面をじっと見て採取していることが多い。

つまりお小遣い稼ぎにはちょうどいい薬草だね!


「ポーション草以外はここじゃ見つからない?」


「魔癒草もあるかもしれないが…、掘ってみなければわからないんだ。見た目は普通の雑草だからな」


「根に特徴があるってこと?」


「ああ。根が黒くなっていること、もう一つの確実な特徴としては魔力を流した時の吸収力で魔癒草だとわかるんだ」


魔癒草は今度スコップ持ってきて一緒に探そうな、と告げるお父さんに私は頷く。


「じゃあ今日はポーション草だね!」


そういって私は袖を捲って目を凝らした。

平べったいもの平べったいもの…と、ブツブツ呟きながら探す私をお父さんが微笑みを浮かべながら見守った。

真剣に探したからか、数時間後には鞄が膨れる程に採取できたのである。





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