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恋愛初心者の恋の行方  作者: あお
章間①
109/253

7 話し合い




第一王子であるアルヴァルトと、その婚約者候補であるアデライン令嬢、そして現代聖女として召喚された眞子はひとまずこの場で出来る限りの話し合いを行った。


まず眞子の保護者であり教育者である第二王子から距離を取らせる必要があるのだが、現状眞子が何を習っているのかを二人は確認した。

そして二人は驚いた。

聖女として浄化の力の確認を重点的に行うことは国の未来にも関わることの為、当たり前のことだが、第二王子はそれしかやっていなかったのだ。

聖女として召喚された者は二度と元の世界に戻ることが出来ない。

後ろ盾のない女性を王家が引き取る形となる為に、一定以上の教養が必要とされた。

例え眞子が元の世界で学校に通い勉学に励んでいようとも、世界が違う以上教育内容も変わってくる。

歴史や地理は勿論、一般常識となる内容も全てが違うのだ。

不自由なく生活を送れるよう、そして国民の前に堂々と姿を見せられるよう教育者である第二王子は、有り余る知識を眞子に教えておかなければならないはずなのに、それを何一つ行っていなかったのだ。


だがこれは逆にチャンスともいえる。

教養は詰め込んでも、身に着けることが出来るまでに時間がかかる。

一朝一夕では出来ないのだ。

だから貴族に生まれた者、そして王家に生まれた者たちは幼い年齢から少しずつ長い年月をかけて学ぶ。

半年以上教養を施されなかった眞子には悪いが、エルフォンスと距離を置かせるいい理由づけになった。


「こういう案はどうかな?」


アルヴァルトが“眞子様には悪いが”と前置きしながら話を続ける。


「今回私達と眞子様は偶然出会った。

そこで眞子様を見たアデラインがこの国のマナーを教えてあげたいと提案したことがきっかけで、二人が交流する」


「…それでは私が眞子様をマナーもなってない女性だと侮辱しているようですわ」


「実際眞子様は挨拶のマナーが備わっていなかっただろう?」


「ですが…」


だがアルヴァルトの提案にいい顔をしなかったアデラインが渋る。


「あ、あの私がこの国のマナーを知らない事は事実です。アデライン様には嫌な思いをさせてしまいますが…なんとか承諾いただけませんか…?」


眞子にそういわれながら「でも…」と渋るアデラインにアルヴァルトは苦笑する。

余程そう思われることが嫌だったのだろう。

だが未婚の令嬢にとっては周りの評判は一種のステータス。当然といえば当然だ。


「わかった。ではアイツを利用させてもらおう」


「アイツ、ですか?」


眞子とアデラインが首を傾げた。

二人の様子にアルヴァルトは楽し気に笑みを浮かべる。


「この国に二つしかない公爵家の次男であり、現在私の側近として働いているアイツだ」


「確かその方は……」


「ああ、そろそろアイツにも休息を与えようと思っていたところだったが、私の側近として散々功績を上げさせてやったんだ。

私からのお願いなら一つや二つ受けてくれるだろう」


アルヴァルトがいう“アイツ”という存在を眞子は知らない。

だが眞子の気持ちを聞いて寄り添い、そして眞子の今後の為に考えてくれている二人に、眞子は疑う気持ちを持つのは失礼だと考えた。


(私の為に考えてくれているのだから…)


そうして眞子は流れるままに身を任せた。


その結果眞子の教育係であった第二王子は外され、新たな担当としてレルリラ公爵家が任されることになる。

エルフォンスは眞子の教育係という役割に一度は食い下がったが、今後聖女が功績を上げてもアルヴァルトの名をあげないことを知り、あっさりと身を引いた。

もしかしたら、このまま眞子を教育しても聖女の力を目覚めさせることが出来ない場合のデメリットを考えたのだろう。

それならば早々に誰かに押し付けた方がいい。

自分は聖女を召喚できたという功績だけ受け取れれば十分だ。とそう思ったのだろう。


そしてレルリラ家が選ばれたのは、第一王子でありこの国の王太子であるアルヴァルトの推薦というのもあったが、何よりも強力な火属性の使い手と呼ばれるレルリラ公爵家ならば、例え聖女の力の概念が魔法と違っていたとしても十分に教育できるだろうという意見があり、なんの批判もなく受け入れられた為だった。


そして国王より許可が下りたその日、第一王子は自らを遣いとしてレルリラ公爵家へ出向き、勅命を告げた。

勅命の内容はレルリラ公爵家の中でも大きなざわめきを生み出した。

そして直ぐに、三人の息子を呼び出す結果となった。


第一王子とレルリラ公爵家当主、そして三人の子息で話し合いが行われる。

眞子と一番近い年齢ということもあり、一番年下であるヴェルナスに教育担当を任せてはどうかという話になったが、ヴェルナスはそれを拒否。

拒否したヴェルナスには誰も意見することなく受け入れた。

その理由を知っている第一王子はなにも言わずにただ見守るだけ。


そして長男であるオイゲンはこれから後継ぎの為の教育を受けるために除外され、第一王子の思惑通り、次男であるラルクが眞子の教育担当として選ばれることとなった。





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