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恋愛初心者の恋の行方  作者: あお
学園編~四学年~
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36 進級試験②





「ハールがペアか!よろしくな!」


「セファルド!こちらこそよろしくね」


リム・セファルド。

以前討伐授業でチームとなった人で、マリアを庇って毒を受けた人だ。

まぁ毒とはいっても学園が私達に誤解させた魔法の一種で、実際に毒を受けたわけではないから後遺症とかは全くない。

そしてセファルドの属性は雷。

私とは違う属性だから頼りにさせてもらおうと思いながら、目の前に立つ先生達に視線を向けた。


「あら、もう準備は出来たの?」


「ならさっそく始めようか」


思わず上品だと思わせる微笑みを浮かべる先生達に、私はごくりと唾を飲み込んだ。


そう。

私たちの相手は二人の先生。

つまり、礼儀作法を教えてくれたリーベル・オフィリウス先生とウィアル・オフィリウス先生だ。


初めに習ったカーテシーから始まり、ダンスやら、姿勢やら、歩き方、貴族がよく使う隠語等様々なことを教えてくれた、ヒルガース先生を除くと一番付き合いがあるんじゃないかって思う先生が目の前に立っているのだ。

今は礼儀作法の授業ではないけれど、妙に緊張してしまうのは仕方がない事である。

何度、いや何十回何百回注意されたか……。

まぁセファルドは平民じゃなくて貴族だから、緊張も何もないかもしれないけれど。

いや、でも先生と対戦っていうから普通に緊張はするよね。

礼儀作法の授業しか行っていない為に、オフィリウス先生たちの実力は全く知らないのだから。


「セファルド!ウィアル先生の対応頼むよ!」


「い、一応頑張ってみるよ!」


他の人たちは先生が一人なのに、どうして私達だけ二人の先生を相手しなければいけないんだと、心の中で毒づきながらも私は先生の魔力に集中するべく、魔力を広げる。

私達の魔力を感じ取ったのか、先生たちは揃って口端をあげた。

妖艶だと思わせるその笑みをみて、私は少しだけ恐怖を感じる。


「「では、頑張って防いでくださいね」」


先生は私とセファルドに笑って告げた。


試験が始まった瞬間、私はリーベル・オフィリウス先生の口の動きと周囲の魔力に集中した。

解除魔法が今回の試験内容だろうと想定していただけに、色んな属性魔法にも対応できるように勉強してきたから、先生の言葉、そして発動するだろう先生の魔力にすぐに気付けるように。


「<ラーンス・ディー・トネ_雷槍>」


「ッ」


そして先生が魔法を発動しようとした瞬間、パリンパリンと音が鳴る。


薄い氷の膜が割れたような音が鳴るのは、私が水属性持ちだからなのだろう。

火属性は燃えつきたように消え、風属性はゆらゆらと風で揺れるように魔方陣が揺らぐ。

そして雷属性のセファルドがウィアル先生の魔法を解除していくときは、雷が落ちた瞬間のような光を放って魔方陣が消えていくのだ。


(よしっ、今のところ順調ね)


私だけでなく、ペアのセファルドも先生の魔法をどんどん解除していく。

やっぱり勉強会をやってよかったと思った瞬間だった。

一つの魔法が私のすぐ横を通り過ぎる。


リーベル先生だけではなく周囲の魔力変化にも集中していた為に、間一髪で避けることが出来たがもう少しで直撃だった為に心臓がバクバクと鼓動した。


「ッ、あっぶな!」


「わりっ、解除できなかった!」


すかさず謝るセファルドに、私は気にしないでと告げる。

勿論視線はリーベル先生に向けたまま。


本当ならばセファルドには解除できなかった魔法があったら教えてほしいところだけれど、今は試験中。

先生たちだって一つ一つの魔法をご丁寧にゆっくり発動しているわけではないのだ。


(まぁそれでも先生にとっては、ゆっくり発動してくれてるようだけどね!)


私がリーベル先生から目が離せないように、セファルドもウィアル先生から目が離せないくらいには魔方陣の数が先生の周りに浮かび上がっている。

つまり例え先生にとってゆっくり発動していると言っても、複数属性の魔法を複数同時に発動されては、頭がついていなかいしその結果解除魔法も追いつかないのも当たり前のことだからだ。


けれどセファルドは気にしているのか「本当にすまん」と再び口にする。


「大丈夫だから集中して!」


「…ああ!」


そして時間が進むにつれて、私に余裕が出来てくる。

生徒一人一人に合わせているのではなくて、事前に発動スピードとか先生たちで打ち合わせしていたのだろう。

解除できてない魔法陣の違いが生徒毎で謙虚に出てくるのだ。

だからセファルドが対応できていない魔法陣をペアである私が手を出そうとしたとき、先生の口元が弧を描くのがみえた気がした。


「なんだか楽しくなってきました。これもついてこれますか?……<ラーメー・デオー_水刃>」


「ッ!」


魔方陣が私の目の前に現れる。

目の前に現れただけが驚きの原因ではない。

先程よりも先生の魔法陣を構築するスピードが早くなったからこそ驚いたのだ。


でも。


(こっちは毎日レルリラの高速魔法展開で試されてきていたんだから、これぐらい朝飯前よ!)


そう思えるほどに先生の魔方陣は展開が遅かった。

いや、無詠唱魔法を使うレルリラに比べたら遅いだけで、詠唱魔法を使っている人にとっては十分に早い。

そして生徒である私達に全力を出すわけがないとはいえ、先生の魔力がどこに現れるか、先生が何を口にするか、それだけがわかればなにも難しいものはなかった。


(しかもさっき先生が使った魔法は水属性の魔法だから余計に!)


それはセファルドも同じなのだろう。

急に先生が発動する属性をかえたからか、あの時解除できなかった魔法以外、一つも洩らすことなく先生の魔方陣を解除している。


(皆で勉強したお陰ね!)


あとレルリラ式の無詠唱魔法のやり方も、コツを覚えられればそれはそのまま解除魔法に生かすことが出来た。

だから私は魔方陣の勉強だけでなく、無詠唱魔法も皆で行ってきた。

それぞれ習得状況はバラバラだったが、それでも一つでも多く無詠唱魔法が出来るようになったことは事実だったから。


だけどそう思うのもここまでだった。

いきなり先生たちが手を握り合い踊り出す。

呆気にとられた私たちはすぐに気持ちを引き締め直すが、無駄になっただけだった。




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