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恋愛初心者の恋の行方  作者: あお
幼少期~学園前~
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8 久しぶりのお手伝い





そして日はあっという間に過ぎていった。

私はテーブルの上に頬をついて晩御飯の用意をするお母さんの後姿を見ていた。


「ねえ、お母さん~」


「なに?」


「なんでお母さんは、魔法を使うとき魔法陣かいてないの?」


これは魔法陣を習い始めてしばらくした後、疑問に思ったことだ。


初めての魔法に嬉しくなって、その日覚えたばかりの光の魔法をお父さんに披露して、その後もたくさんの魔法陣を覚えるためにとにかくたくさんの魔法陣を聞いた。

聞いて書いて覚えて聞いて書いて覚えてを繰り返して、そして不意に気付いたのだ。


洗濯をするときの魔法陣には、回転を意味する記号と水の流れを意味する記号を組み合わせて、円の中に書き込む。

それも適当に書き込むのではない。

関係性を考慮し配置しなければならないのだ。

水の流れを表す文字の前に回転の文字を配置してしまうと、ただ洗濯物と水がそれぞれで回転するという、汚れが全く落ちない意味のない魔法陣となってしまい正しく機能しないのである。


でも魔法を発動する為に必要な魔法陣を書いている様子もなく、お母さんは指をちょいちょいと動かして、魔法を発動している。

今も買ってきた野菜やお肉に、保護の魔法陣を描かずに、指でちょいちょい動かしているだけである。

たまに指を動かしていないときだってあるのだ。


当然私はそんなお母さんをみて疑問に思ったのである。


「魔法陣を書く時間が省けるからね。お母さんはいちいち書くことはしないわ」


「じゃあ魔法陣意味ないじゃん!」


衝撃の事実に私は愕然とすると、お母さんは私をみて笑った。


「いったでしょ?魔法陣は魔法の基礎。

魔法を発動する方法には三パターンあって、一つはサラに教えた魔法陣を紙等に書いて発動するやり方。

二つ目は詠唱……つまり言葉による魔法ね。

そして三つ目は無詠唱魔法があるの。よくお母さんが使うのはこの無詠唱魔法よ。

ただ詠唱も無詠唱も、基礎である魔法陣をしっかりと理解しなくては使えないの」


「……よくわかんない」


首を傾げる私にお母さんは作業の手をやめて、私に近づく。

そして、人差し指を私に向ける。


「今からサラを浮かすから、サラは足元をよく見ていて」


コクリと頷くと、私の足元が光ると同時に私の体が宙に浮いていた。


「気付いたことはある?」


「ピカって光ってた!」


「それだけ?他には?」


「いつも指動かしてるのに、動かさなかった!」


元気よく気付いた点をあげると、お母さんは私を床の上に戻して面白そうに笑った。


「もう、指じゃなくて足元を見てっていったのに…。

実はね、無詠唱でも魔法を発動する時には魔法陣が必ず必要なのよ」


「?でもかいてないよ?」


「お母さんのように優秀だと紙やペンを使わなくても書けるのよ。

今度は詠唱してゆっくりやってみるから、よく見ていてね」


お母さんは言葉通り今度はゆっくりと魔法を発動する。

ちなみにお母さんは今度は指を立てることなく、寧ろ私の目に触れさせないように手を背中に回した。

私は自分の足元をじっと見つめる。

するとお母さんの緑の魔力が浮び、それが細い線となり、ゆっくりと魔法陣に変わっていった。

そして魔法陣が完成した時、再び私の体が宙に浮かぶ。


「本当に魔法陣があった!」


「ふふ。詠唱魔法は、言葉に魔力を込めて魔法陣を完成させる方法なの。

詠唱魔法の注意点は言葉を発している中で魔法陣を完成させることよ」


「どうして?」


「魔力が途切れてしまうからよ」


「?」


首を傾げる私にお母さんは「本当はやってみたらわかりやすいんだけど、今はまだ早いから後でやろうね」といって微笑んだ。


「でもね詠唱もしくは無詠唱が出来れば、実際に魔法陣を書いて魔法を発動させるよりも時間を短縮させることが出来るのよ」


私を床へと降ろしたお母さん。

私はテーブルの上にある紙を持ちながら指さし、お母さんに見せる。


「でもでも!時間の短縮なら最初から魔法陣をかいて持ち歩いてたら、詠唱よりも時間かからないんじゃないの?」


「そう思うでしょ?

でもね、予め用意している魔法陣の欠点は自由度が低いところと、場所が固定されてしまうところにあるのよ」


「?」


「例えば、さっきお母さんはサラを宙に浮かしたけど、その時魔法陣はどこにあった?」


「足元!」


「でしょ?

だけど魔法陣を用意しておく場合、サラの足元に魔法陣が書かれた紙を置かなくてはならないの。

何故なら魔法陣が魔法の発動元だから」


「なんとなくでもわかった?」と尋ねるお母さんに私は頷いた。


ようは魔法を発動させたいところに魔法陣を設置しなくてはならないということ。

たくさん紙に書いた魔法陣を持ち歩いても、設置が必要な時間がどうしてもあるため短縮にもならない。


「あと自由度が低いというのは、サラを浮かせたい高さによっても使う魔法陣が必要になってくるのはわかる?」


「魔法陣に高さを書き込んでるからだよね?」


「そうよ。異なる威力を何枚も用意して持ち歩かないといけないから、紙に予め用意しておくのは効率が悪い場合があるの。まぁ用途によっても良いか悪いかは変わってくるから、臨機応変に使いこなすって感じかな?

でね、無詠唱と詠唱魔法の場合は魔法陣を紙にかく方法のデメリットがカバーできるのよ」


「どうして?」


「自分の魔力を操作してその場で魔法陣を書き上げるからね」


「ふぅん……?じゃあ、魔法陣を予め用意しておいたほうがいい場合ってどんなとき?」




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