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第84話

「本当に皆お疲れ様」

「クゥ!!」「アウ!!」「……!!」


 俺達はゴブリンの巣を一掃したわけだが、レベルが上がることもなければ、ホブゴブリンがボスクラスのモンスターだったわけでもなく、宝箱が出ることもなければ、ゴブリン達が何かレアなアイテムを隠し持っているわけでもなかった。


「クゥ!!」「アウ!!」「……!!(コクコク)」


 ただそれでも、ウル達にとって、俺達にとって価値のある勝利だったことに違いない。

 一度負けてしまった相手にリベンジを果たすという経験は、今後のウル達の自信になるだろう。


「よしよし、良くやったな。エメラの指示は良かったし、それに合わせる2人も良かった。自己評価としても、俺の今回の動きは良かったと思う。皆前回反省したことを意識して戦えてたんじゃないか?」

「クゥ!」「アウ!」「……!」


 まさか俺もこのパーティーでボス相手に負けるならまだしも、ゴブリン相手に負けることになるとは思ってなかったが、1回でリベンジを果たせて良かったし、ウル達の成長した姿も見ることが出来て今となっては大満足だ。


「あ、ホブゴブリンの首飾りが出てるな」


名前:ホブゴブリンの首飾り

効果:筋力+5、パーティーメンバー1人につき筋力+1

ドロップ品:ホブゴブリンから低確率で手に入る首飾り。装備者の筋力値を上昇させ、パーティーメンバーが増えるほど筋力値を上昇させる。


 これはパーティーメンバーの中に自分の数も計算に入るのか分からないが、入らないとしても最大で筋力値が+10されると考えれば強い。


「でも、それで言うと俺は力のブレスレットでいいのか。いやむしろ筋力+10に加えて頑丈+10もあるし力のブレスレットの方が良いな」


 ブレスレットはカジノの景品としては100万チップと安い方だったが、このレベル帯の中ボスクラスのモンスターを倒して低確率で手に入る装備品と同価値以上だと考えれば、あの段階で手に入るものとしてはとても強い装備だったことが分かる。


「まぁ俺は首飾りもブレスレットも装備しないんだけどね」


 たぶん俺はアクセサリーを装備できるスロットが増えない限り、幸運の指輪以外を装備することはない。

 幸運値が上がり、状態異常無効の効果がある幸運の指輪は絶対に外せないのだ。


「クゥ」「アウ」「……!」

「あ、ごめんな。1人で装備のこと考えてた」


 1人でブツブツ言ってるとウル達に声をかけられたので、もうゴブリンの巣には用がないしピオネル村へ帰ることにする。


「よし着いた。一応村長に話しておくか」


「すみませーん」

「はいはい、あ、この前のプレイヤー様ですかい」

「さっきゴブリンの巣を壊したので、一応報告に来ました」

「え、本当にやったんですか?」

「ピオネルさんが言った通り1度は負けてしまったんですけど、今リベンジしてきました」

「そ、そうですか」

「ゴブリンの巣の情報ありがとうございました。じゃあそれだけなんで、失礼します」

「クゥ!」「アウ!」「……!」

「は、はーい」


 村長にも話したし、これで一応やり残したことはないかな。


「あとはゆっくり各国の中央を目指して、第2陣のプレイヤー達が来るのを待つ形になるのかな」


 最前線攻略組以外のどこかの攻略パーティーが動き出すなら話は変わってくるが、そんなパーティーはいないと思うので、しばらく攻略は落ち着くだろう。


「だからこそこのタイミングはクランの勧誘が多いんだよな」


 自分も攻略組としてここから頑張りたいと思う人達は、この攻略が落ち着いてるタイミングで仲間を集めたりするので、今はパーティーやクランの誘いがすごく多い。


「さっきダンジョンに行く時は無視したけど、魔獣を連れてる俺ですら結構勧誘されたもんな」


 まだまだ魔獣を連れているプレイヤーは攻略組としてはやっていけないという認識があると思うので、そんな俺がクランに誘われるとは思わなかった。

 まぁ連れてる魔獣が特殊過ぎて、それはそれで勧誘の対象になったのかもしれないが。


「まぁ攻略じゃなくてまったりクランに誘われた可能性もあるけど」


 ピオネル村のクリスタルを触って、家まで移動する。


「ユーマおかえり、待ってたんだ」

「あ、そうなんですか、遅くなってすみません」

「いや、勝手に私が待っていただけだからな。ユーマが謝る必要はない。それで早速なんだがこの手紙を読んでくれ」

「はい、分かりました」

「おそらく私の手紙にあった内容と同じだと思うが、確認のためユーマも読んでくれ」


 帰ってすぐにモニカさんから声をかけられ、モニカさんに渡された手紙を見ると、またしてもモニカさんの母親からだった。


「ええっと、明後日のお昼頃この家に来るそうですね」

「私への手紙の内容と同じだな。そういうことなんだが、ユーマはその時間大丈夫か?」

「たぶん大丈夫だと思います。この後寝ればちょうどその時間くらいには起きてくると思うので」

「そ、そうか! では返事は私がしておく。明後日の昼だからな!」

「分かりました」


 モニカさんは嬉しそうにそう言うと、自分の部屋に入っていった。おそらく今から手紙を書くのだろう。


「てことだから、俺は後もうちょっとで終わりかな。ゴブリンの巣を攻略できたし、区切りとしては良いんじゃないか?」

「クゥ」「アウ」「(コク)」


 今日は夜が来ない日なので外が明るいが、最近入ってなかったので最後に露天風呂に皆で入る。


「クゥ」「アウ」「……!」

「もしかして俺がいない時皆で入ってるのか?」

「クゥ!」「アウ!」「……!」


 やけに皆慣れた様子で露天風呂に向かうからまさかと思ったが、本当に入っていたらしい。


「風呂は皆好きか?」

「クゥ」「アウ」「……!(コクコク)」


 なるほど。ウルとルリはどっちでも良さそうだが、エメラが風呂好きで2人は一緒に入ってやってるのか。


「風呂を汚さないなら、ちょっとした食べ物や飲み物くらいここで食べてもいいぞ。ただ、もしこぼしたりしたら自分達で掃除するか、誰かにちゃんと報告してくれ」

「クゥ!」「アウ!」「……!」


 急にウルもルリも嬉しそうになったので、この提案は良かったのだろう。


 そして俺達は風呂から出て寝室へと向かう。


「じゃあこの後はゴーさんに食事を作ってもらって食べておいて。また明後日には戻ってくるよ、おやすみ」

「クゥ」「アウ」「……!」


 こうして俺はゲームからログアウトして、カプセルベッドから起き上がる。


「あ、そういえばガイル達ってまだ家に居たのかな?」


 もしまだ居たならモニカさんの話をしておかないとと思ったが、俺が何か言わなくてもモニカさんが自分で説明するか。


「じゃあやることやってすぐ寝ますか」


 モニカさんの家族が来る時間に間に合わせるため、俺は急いで寝る準備を始めるのだった。




「んー、おはよう」


 自分しかいない部屋にこの言葉が響く。


「ご飯食べるか」


 パンにチーズを乗せてトーストで焼いている間、久し振りにテレビを見てみるとコネファンのCMが流れていた。


「広告にも力入れてるんだろうな」


 社会現象がなんだとか、ゲーム会社がどうだとか、健康被害がうんたらなどという話も聞くが、もうカプセルベッドを使ったゲームの勢いは今後止まることはないだろう。


「あ、明日の天気予報」


 俺にとっては明日の天気を聞いても外に出る予定はないので、テレビを消してカプセルベッドに入る。


「じゃあやりますか」




「おはよう」

「クゥ!」「アウ!」「……!」


 俺が起きて挨拶すると皆が返してくれる。


「え、雨?」


 寝室から出てリビングに行くと、ゴーさんが椅子に座って外の雨を眺めていた。


「コネファンで雨は初めてだな」


 それほど強くないのでこのまま外に出ても大丈夫そうだが、わざわざ雨の中を行く気にはなれない。


「とりあえずご飯食べよっかな」

「ゴゴ」

「いや、食べるのは俺だけだろうし、ゴーさんは休んでて良いよ。前に作った焼き魚でも食べとくから」

「ゴゴ」


 俺はゴーさんが料理を作るというのを断り、インベントリにある調理済みの焼き魚等を食べた。

 そして食べ終わったあとガイルから来ていたチャットを見てみると、メイちゃんと一緒に家を出ることとお礼の言葉が送られていた。


「昨日はガイル達に声をかけずにそのままログアウトしちゃったからな」


 ガイルからはまた鍛冶部屋を使わせて欲しいと言うことが書かれていたので、近い内に来ることになるだろう。


「お、ユーマ! おはよう」

「モニカさんおはようございます」

「後で見てもらえば分かるが、昨日水やりした時には既に畑のものが収穫できそうだったぞ」

「あ、それはありがとうございます」

「あと、あのゴーレムは凄いな」

「あぁ、昨日作ってもらったゴーさんです。ゴーさん!」

「ゴゴ」

「モニカだ、改めてよろしく頼む」


 昨日のご飯はゴーさんに作ってもらったらしく、モニカさんもゴーさんに胃袋を掴まれてしまったらしい。


「ゴーさんには何を収穫して、何を収穫せずに置いておくのか言っておこうかな」

「ゴゴ」

「基本的に隣の土地のものは出来たら収穫して売りに出す。で、こっちで育ててるのは使う分だけ収穫する感じで」

「ゴゴ」

「売りに出すものはハセクさんが運んでくれるから、ハセクさんに指定された場所へ置いてくれれば良いよ」

「ゴゴ」


「あ、そもそもゴーさんってどれが収穫できてどれがまだなのかとか見分けってつく?」

「ゴゴ!」


 急にゴーさんは畑の方に走り出して、身体を濡らして帰ってきたかと思えば、右手には魔法の万能農具が握られていた。


「ゴゴ」

「え、道具として使えるだけじゃなくて、ゴーさんにも万能農具の効果が感じられるの?」

「ゴゴ」

「ちょっとそれ戻してきて。それ以外の魔法シリーズも試そう」

「ゴゴ」


 そこからはモニカさんに声をかけられるまで、色んな魔法シリーズをゴーさんに持ってもらって、ゴーさんが使えるのかどうかの確認をした。




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