第82話
早速ゴーさんを連れてウル達には家と隣の土地を案内してもらい、俺はガイル達とリビングに行く。
「ゴーレム作れちゃいました」
「そうだな」
「本当にありがとう。これでめちゃくちゃ色んなことが楽になりそうだよ」
「結局素材は何を使ったんだ?」
「えっと、インゴットとお花と根っこ、あと草と石はほぼ全部使いました。そういえば宝石も入れた気がします。モンスターの素材だとスライム系は特にいっぱい使いましたね」
「あとユーマの持ってたハチミツも一瓶入れてたよな」
「私も魔法の錬金釜に従っただけで、普段ならあんなこと思いつかないですよ」
「まぁそんな大量の素材を使って作られたゴーレムなわけだが、その価値はありそうだよな?」
「俺は家事と農業で使おうと思ってるし、そもそも決まった動きをしてくれるだけでもこっちとしては大助かりだから、意思疎通が取れるなんて凄いよ」
これからゴーさんの様子を見て何をしてもらうのか決めるつもりだが、俺の話も通じてたし、ウル達とも意思疎通が取れてたのはもう大成功でしかない。
「発明家メイちゃん様、本当にありがとう」
「いえ、例のごとく素材はユーマさんのものですから」
「今ので結構使っちゃったから、渡せるものは余り物しかないけどどうぞ」
「それでも多いですよ。ありがとうございます」
「俺には無いのか?」
「今出しても良いけど、インベントリに入り切る?」
「い、いや、後で良い」
「じゃあガイルもメイちゃんもその部屋は自由に使っていいよ」
「ありがとうございます!」
「あの金鎚を使うのが楽しみだな」
「じゃあガイルには素材だけ出してくから、あとはお好きにどうぞ。あ、さすがに今回はボス素材とかは渡せないから」
「ああ、貰えるだけでありがたいからな。(そう言うってことはもしかして次の街に行ったのか?)」
「(ユーマさんならあり得ます)」
鍛冶部屋にモンスターの素材を常識の範囲内の量置いていき、俺はウル達のいる場所に向かおうと思ったのだが、最後に思い出したことを2人へ話してから行くことにする。
「そうだ、この前宝飾店の店長に教えてもらったんだけど、装備装飾品の素材に宝石を使うなら、俺達が思い浮かべるような元々知ってる宝石じゃなくて、紅い瞳とか漆黒石とか、そういうのを使う方が良いって聞いたよ。なんか宝石にスキルを付与するとか何とか言ってた気がする。あと、その宝石を砕くのかそのまま付けるのか分からないけど、装備品にも宝石を使ったら何か効果があるかもって言ってたから試してみるといいかも。それだけ伝えたかったから、それじゃ行ってきまーす」
ガイルもメイちゃんも俺の声は聞こえてるだろうが、返事もなくその場で固まっているので、俺は2人に行ってきますともう一度声をかけその場を去った。
「おいユーマ!! その話もっと詳しく聞……」
「ユーマさん!! 宝石は原石を削って出た……」
何かガイルとメイちゃんが大きな声を出して早口で話しているが、喧嘩でもしているのかもしれない。
まぁ喧嘩するほど仲が良いとも言うし、巻き込まれたくはないのでしばらく近付かないようにしよう。
「どうだ、教えてもらったか?」
「ゴゴ」
「クゥ!」「アウ!」「……!」
ゴーさんのサイズは俺よりも少し小さいくらいで、ボスに出てきたようなゴーレムの感じではなく、どちらかというと誰かが言っていたような人型のゴーレムに近い気がする。
「なんか人型のゴーレムは珍しいっぽいけど、いきなり作れちゃったな」
「クゥ!」「アウ!」「……!」「ゴゴ」
「じゃあまずゴーさんにやってほしいことを言う。家の中では主に家事を……」
ゴーさんにやって欲しい仕事を伝えて、その後はライドホースやマウンテンモウ、ハセクさんにゴーさんを紹介しに行った。
「こんなもんかな」
「ゴゴ」
「ゴーさんもインベントリ使えるって凄いよな」
もしかしたら今後インベントリ拡張要素として、空間拡張されたアイテムポーチなるものが出てくるかもしれないが、ゴーレムもその1つになるかもしれない。
「ダンジョンの宝箱からゴーレムの核は出たし、今後は色んな人がゴーレムを連れて歩くようになる未来もあるかも?」
魔獣が1体居るだけで単純にインベントリの広さが2倍だったが、パーティーメンバーの枠を使うため魔獣は避けられてきた。
ただ、ゴーレムならそういった部分も解決できるかもしれないので、皆が非戦闘用の小さなゴーレムを連れて歩くようになる可能性は十分にある。
「でもあの時のダンジョンの宝箱は、初めての単独ダンジョン踏破のボーナス説もあるか」
初めての単独エリアボス討伐で黒い獅子を倒した時、魔獣のタマゴが出てきてルリが生まれてくれたが、それ以降何回ボスを倒してもタマゴが出ることはなかったし、今回ももしかしたらその初単独ダンジョン踏破ボーナスで宝箱の中身が良かった可能性はある。
ただもしレアアイテム枠でゴーレムの核や特別な魔玉が出てくるなら、それを狙ってダンジョンに潜る人は確実に増えるだろう。
「そう考えたらミカさん達とダンジョンに潜った時の宝箱の中身を見せてもらえば答え合わせできたな」
宝箱のことも気になるが、今はまずゴーさんのことだと思い直す。
「よし、じゃあゴーさんには初めての仕事をしてもらおう。失敗しても良いから、何か俺達に料理を作ってくれ。もし見本が必要なら俺が作ったのを真似して作ってくれても良い」
「ゴゴ!」
「今のうちに俺のインベントリには少しだけ残しておいて、あとは全部食べ物系をゴーさんに持っててもらおうかな」
「ゴゴ!」
「クゥ!」「アウ!」「……!」
ウル達もさっき食べたばかりではあるけど、食事と聞いて嬉しそうにしているし、多少変な味でも許してくれるとは思う。皆優しいしね。
「ゴゴ!」
「クゥ」「アウ」「……(コク)」
「ゴゴゴ!」
「クゥクゥ」「アウアウ」「……(コクコク)」
「ゴゴゴゴ!」
「クゥ!」「アウ!」「……!(コク)」
「皆そんな真剣に見てやらなくてもいいのに」
ただ、ゴーさんに緊張という概念はないのか、見られていても関係なく料理を進めていく。
「……ゴゴ」
「お、出来たか」
「クゥ」「アウ」「(コクコク)」
皆違う料理を出され、その全てがそれぞれの好みに合わせられている。
「いただきます」
俺のは何かの肉を焼いたもので、シンプルな料理だったが普通に美味しい。
「美味しいよ」
「ゴゴ」
そしてウル達に出した料理なのだが、ウルには大きな肉が出されていたがたぶんあれはヒュージボアの大イノシシ肉だろう。そしてルリには巨大なアイスの横にイチゴが添えられたものを。エメラにはじゃがバター、そして生のトマトが切られたものとフルーツが出された。
「俺でも作れる料理ばっかりだけど、それぞれの好みに合わせてるのは凄いな」
ルリに出されたものに関しては、ただインベントリに入ってたものを盛り付けただけではあるが。
「クゥ!」「アウ!」「……!(コクコク)」
「ゴゴ」
この料理でゴーさんは皆の胃袋どころか信頼も掴み取ったようだ。
「ゴゴゴ」
「ん? あぁ俺か? さっきも言ったが俺もゴーさんの作った料理は美味しかったぞ」
「ゴゴゴ」
ゴーさんとしては俺が食べた時の反応に納得がいってないらしい。
「いや、ホントに美味しかったって」
「ゴゴ」
こうしてゴーさんに俺が責められている間も、ウル達は美味しそうに料理を食べ続けるのだった。
「じゃあ行ってくるから、家はよろしく」
「クゥ!」「アウ!」「……!」
「ゴゴ」
家事と農業はもうゴーさん1人でも出来そうだと分かったので、家を任せて俺達は外に出るが、時間がある時に今度ゴーさんの出来ることを調べてみてもいいかもしれない。
「どんどん家が賑やかになるし、便利になってくな。正直料理は俺が作ってあげたい気持ちもあるけど、ウル達が美味しいって思うなら誰が作ったかなんてもうどうでもいいから、ゴーさんが来てくれて良かった」
「クゥ!」「アウ!」「……!」
料理をしてる間はウル達と居られないことが多いし、ゴーさんには感謝しかない。
「あと、今からやることを勝手に決めてごめんな。ちょっと退屈かもしれないけど、今後のためにも確認はしておくべきだと思うし」
「クゥ!」「アウ!」「……!」
「欲しい素材とかが無い限り、レベル的にも今回であのダンジョンに行くのは最後だと思うから」
先程ダンジョンの宝箱の中身が、ボーナスによるものなのかどうなのかの話があったが、どうしても気になってしまったので自分で倒して調べることにした。
「ミカさんに宝箱の内容を聞いてみても良いんだけど、あの時のは8体の騎士を倒してなかったしな」
宝箱の中身を聞くならこっちも今何を調べているのか言うのが筋だと思うし、あまりこの段階で情報を広めたくもないので、これは俺達だけで調べることにする。
「じゃあ行くぞー」
「クゥ」「アウ」「……!」
南の街に移動し、そこら中から聞こえるクラン勧誘の声を無視して、俺達はダンジョンに入るのだった。