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第70話

「あの、本当に大丈夫ですか?」

「これなら大丈夫だよ。前来た時は敵が強く感じたけど、今回はそこまでそう思わなかったから、サクサク進めると思う」


 洞窟に入ってしばらくすると前と同じように洞窟ネズミが襲いかかってきたが、前回とは装備もレベルも違うため、すぐに倒すことが出来た。


「このあとはビッグバットとアイアンスパイダーかな」

「ひっ」

「クゥ!」「……!」


 ビッグバットが襲いかかってきてサポーターさんが驚いているが、俺達に攻撃する前にエメラとウルによって倒される。


「じゃあ最後はアイアンスパイダーだと思うからルリに任せようかな」

「アウ!」

「がんばってください!」


 アイアンスパイダーを倒す頃には、サポーターさんも俺達がここの敵を余裕で倒せることに気づいてくれたので、今は無駄な緊張感もなく歩いている。


「あ、あそこですか?」

「そうそう。やっと着いた」


 暗闇の照明によって隠された道を進むと、少し緑色に光っている空間が見え、その中には前と同じように大きな切り株があるが、以前と違い宝石は無い。


「なるほど。もしかしたらユニークボスを倒したらあの宝石が現れるのかもな」


 もしかしたらまた何か貰えるのかもしれないと思って来たが、あの宝石がないとそもそも植物が成長して宝石をセットする段階にもいかないので、ユニークボスを倒せなかった今日はこれで終わりだろう。


「じゃあ帰るか」

「分かりました。案内しますね」


 そういってサポーターさんについていくが、あまりモンスターが襲ってくることもなく、無事に冒険者ギルドに着いた。


「おつかれ。急な誘いだったのにサポーターさんもありがとうございました」

「クゥ!」「アウ!」「……!」

「いえいえ、私もとても貴重な経験をさせていただきましたし、楽しかったです!」


 サポーターさんにお金と少しの素材を渡して、冒険者ギルド内で解散した。


「家に帰ってご飯にしようと思うんだけど、その前に職人ギルドで鉱石の加工だけお願いして来てもいい?」

「クゥ」「アウ」「(コク)」


 皆に許可が取れたので、久し振りに家ではなく北の街のクリスタルに移動して、職人ギルドまで歩いていく。


「あの、この鉱石をインゴットにしてほしいんですけど、良いですか?」

「あぁ、前にも来てくれたね。やっておくよ」

「ありがとうございます」


 ということで鉄鉱石、銅鉱石、銀鉱石、月火鉱石を渡す。


「よし、じゃあ帰ってご飯にしよっか」

「クゥ!」「アウ!」「……!」


 皆と歩きながら家に向かう途中で、何故かキプロの姿が見える。


「あれ、キプロどうしたの?」

「あ、ユーマさんおはようございます! 実は僕、この街で自分のお店をやることにしました!」

「ええ!! それはおめでとう!」

「ありがとうございます!」


 話も聞きたいし、せっかくなのでキプロを朝食に誘う。


「親方が西の街で、姉弟子がはじめの街なので、僕は南と東と北の街のどこでやろうか迷ってたんです」

「その中だとプレイヤーもそうだけど、冒険者が多いのは南だよな」

「はい。一応全ての街を回ってみたんですけど、南の街が1番冒険者が多かったですね」

「ならなんで南の街にしなかったの?」

「ユーマさんは知ってると思いますけど、僕は冒険が結構好きで、南の街に居ると鍛冶よりサポーターをしてしまうと思って北の街にしました。東の街は探索できる場所も冒険者も少ないですし、北の街はちょうど良かったんです」


 確かにキプロは毎日サポーターをしそうなくらい冒険は好きそうだから、北の街を選んだのは良かったかもしれない。


「じゃあ今後はいつでも遊びに行くよ」

「はい! 是非一度僕のお店に来てください!」


 そう話をしていると家に着いたので、皆でリビングまで行く。


「ユーマおはよう」

「モニカさんおはようございます」

「お、おはようございます!」

「あぁこの前来てた、確か名前は」

「キプロです! 鍛冶師とサポーターやってます! この街でお店をやるので是非遊びに来てください!」

「そうだそうだ、キプロだったな。私はモニカだ。よろしく頼む」


 2人の挨拶が終わったところで、皆で朝食を食べる。


「今日は闇ウサギ肉です。結構美味しいと思いますよ」

「それは楽しみだ」

「僕も楽しみです!」


 キッチンで人数分の肉を焼き、足りないだろうウルには大量にある焼き魚も食べてもらう。


「美味しいです! たぶんこれってダークホーンラビットのお肉ですよね?」

「そうだよ。ヒカリゴケ無しで戦ったやつ」

「あの時は本当にすいませんでした!」

「いや、今のは冗談だから」

「何があったんだ?」


 そこからはキプロと俺の関係や、モニカさんのことを話した。


「じゃあデザートにするか」

「アウアウ!!」

「分かった、いつも通りルリは多めにするからな」


 アイスを出して食べてもらっている間に、いちごオレも作る。


「いつも通り美味しいな」

「美味しいです!」

「クゥ!」「アウ!」「……!」


 いちごオレも作って皆に渡したあと、俺はキッチンでアイスの素とフライドポテトを作ることにする。


「じゃあ俺は作ってるんで農業は任せますね。たぶん最初に植えた苗が育ってると思うので、収穫もお願いします」

「分かった。では行ってくる」

「クゥ」「アウ」「(コク)」


 キプロは食べたあとすぐ帰ったので、魔獣達とモニカさんに水やりは任せた。


「例のごとく包丁は持ったままでやろう」


 昨日ハセクさんが取ってくれたであろうミルクをいつも通りアイスの素にしたり、ジャガイモを太めに切ったり細めに切ったりしていろいろな形のフライドポテトを作ったりする。


「最高だ魔法シリーズ」


 フライドポテト作りでも、火の加減や揚げる時間が全てなんとなく分かる。これを続けても全くリアルの料理は上手くなりそうにないが、ここで美味しいものが作れるなら俺は満足だ。


「ユーマくん」

「あ、フカさんおはようございます」

「これこの前言ってた商品用のアイスカップだよ」


 そう言って見せてくれたのは、マウンテンモウが可愛く描かれたアイスのカップだった。


「ユーマくんと魔獣達を描くのも良かったんだけど、ユーマくんの魔獣が増えた時にまた作り直すことになると思って、マウンテンモウだけにしておいたよ」

「ありがとうございます!」

「じゃあ私は家で朝食が待っているから行くよ。後でエマが来ると思うからよろしくね」


 そう言って、フカさんはすぐ帰ってしまった。


「よし、これで作ったアイスの素も商品用カップに注げるな」


 フライドポテトを揚げている間にアイスの素をカップに注ぎながら、俺は黙々と作業を続けるのだった。


 


「ユーマ終わったぞ。今日取れた実はウル達に持ってもらっているからな」

「あ、ありがとうございます。これ後で小腹がすいた時にどうぞ、って言いたかったんですけど熱いうちに食べないと美味しくないかもです」

「おお、さっき作ると言っていたフライドポテトか。全ては無理だろうが、少しは熱いうちに食べるよ。エマもちょうど来たし私は行くぞ」

「はい。水やりと収穫ありがとうございました」


 エマちゃんは玄関から家の中を通ってきてもいいのに、いつも裏にある外の扉から入って、厩舎横でモニカさんを待っている。


「まぁ本人がそれでいいならいいか」


 ハセクさんも同じように厩舎に行く時はそのルートなので、話す機会があまりない2人にはたまに何か持って行こうかな。


「あ、ウル、アイスの加工お願い、って言おうとしたけど、もうやりに行ってくれたのか」

「アウ」「(コク)」


 ハセクさんが絞って持ってきてくれたミルクを俺とウルでアイスにして、ハセクさんが商人ギルドまで持っていってくれることになっているが、もう既にウルはさっき俺が作ってたアイスを全て凍らせて持って行ってくれたらしい。


「クゥ!」

「お、ウルも帰ってきたか。今日の分のミルクは明日アイスにするからそのままウルのインベントリに入れててくれ。……よし、こっちも全部揚げ終わったしオッケー」

「クゥ!」「アウ!」「……!」

「これはお昼かおやつの時間にな」


 すぐ食べたそうにしている皆を説得して、今日の予定を言う。


「まずはマルスさんのとこに行って、その後は王国を目指すかもしれないし、帝国領前のボスを倒しに行くかもしれない」

「クゥ!」「アウ!」「……!」


 皆ボスと戦う気満々だが、俺としては王国の方をある程度先まで進めたい気持ちは強い。


「てことでまずはマルスさんのとこ行くか」




「お久しぶりですマルスさん」

「ユーマさんじゃないですか。どうぞ中へ」


 そう言われて俺達はお店の中に通される。


「あの、前にお願いした宝石ってどうなってます?」

「出来ているものもありますが、ユーマ様にもう一度確認してからの方が良いと思った物もありましたので、全て加工出来たわけではございません」

「あ、そうなんですね。じゃあ一旦出来てるやつを貰ってから、確認が必要なものを見せてもらって良いですか?」

「かしこまりました」


 しばらく待っていると、ネックレスやイヤリングに加工されたものが出てきた。


「こちらが紅い瞳、漆黒石、聖光石以外の宝石で使ったものでございます」

「良いですね。高級なアクセサリーって感じがします」

「こちらはどれも数十万Gの価値はありますので、お取り扱いにお気をつけください」


 自分でやったのはピッケルで掘るだけで、あとの加工は人任せだったのにそんなにも価値があるものになるとは思わなかった。


「これほどの宝石を集めるなんて一体いくつの原石を砕いたのでしょうか」


 すみませんマルスさん、たぶん20もいかなかった気がします。


「じゃああと3つの加工しなかった宝石について教えてもらっても良いですか?」

「かしこまりました」


 そして余った宝石の話を聞くと、ただのアクセサリーにするのは勿体ないくらいのものらしく、装備品などで使う方が良いんじゃないかという提案だった。


「宝石を装備品にするってのは、どんな効果があるんですか?」

「宝石にスキルや能力を付与して装備装飾品として使うということです。装備品にこちらの宝石を使うだけでも同様の効果が現れる可能性もありますが、装備装飾品として使用される方が失敗もなく無難でしょう」


 俺は鍛冶師ではないからどう使うのかわからないけど、マルスさんが言うなら本当のことなんだろう。


「分かりました。じゃあマルスさんの言う通りこれは装備に使ってみますね。これ今回の加工代です」

「ありがとうございます」

「あ、まだマルスさんには見せたいものと聞きたいことがあって」

「? 分かりました」


 そう言って俺はマルスさんにマグマな置物から出てきた謎の高級そうな宝石を見せるのだった。




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