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間話8

「ダンジョンよ、ダンジョン!」

「うぉぉぉぉ! テンション上がる!」

「まぁそれは言えてるな」


 南の街に来たパーティーはダンジョンへと足を踏み入れていた。


「確か装備も落とすって言ってたよな」

「モンスターはいつも魔石を落とすわけじゃないからお金にはならないって聞いた」

「西の街のカジノでお金無いのに、更にモンスター倒しても儲からないダンジョンに来てどうするんだ」

「そうは言ってもダンジョンだぞ。来るしかないだろ」


 そんな話し合いを大きな声でしていると、モンスターが集まってきた。


「お、意外と倒せるな」

「これなら全然余裕かも」

「案外いいかもね」


 ダンジョンのモンスターを比較的楽に倒せることに安心した一行は、そのまま下の階を目指して進んでいく。


「ボスは流石に強かったな」

「1発でもあの攻撃当たったら終わりだろ」

「でも簡単ではあったかも?」

「このまま行けるんじゃね?」


 ボスを倒すことができてパーティーは更に勢いづく。


「よし、モンスター溜めて倒そうぜ」

「え、あれって良くないって聞いたよ。せめてやるなら適正レベル以下のモンスターでやる方が良いって」

「一応ここはちょうど適正レベルの階層っぽいよな?」

「ちまちま倒して逃げてを繰り返すより、一気に戦ったほうが絶対効率いいって」


 これまではモンスターを見つけたらある程度の数になるとその場から離れて、追ってきたモンスターだけを倒すようにしていたが、今回は最初からその場に居続ける。


「早く倒すぞ! じゃないとどんどん集まってくる!」

「やるしかないか、行くぞ!」

「たまにはこういうのもいいかも!」

「面白くなってきたぁ!」

「おおおぉぉぉ!」

「せめてすぐ帰れる階段近くの敵でやるべきだったって!」


 そして数十分後、パーティーは街に居た。


「まぁ、次への経験だな」

「堅実に行きましょ」

「飯食ってればデスペナの時間も終わるっしょ」

「次からはちゃんとやろう」

「一旦ダンジョンのドロップアイテムを数えるか」

「目標はとりあえず10階層で行こう」


 調子に乗っていた自覚はあるのか、みんな少し元気がないものの、ダンジョンに潜りたい気持ちは変わっていなかった。




「おいメイ、最近この工房に来なかったがどうしたんだ?」

「いやぁ、ガイルさんに前に言われた戦闘指南を受けてました。本当はすぐに終わるらしいんですけど、私は他の人よりも長く受けることになって。ははは」


 とても疲れた様子のメイはピピを撫でながら椅子に座る。


「そ、そうか。まぁ元気ならよかった。ほら、錬金でもしていかないか?」

「はい、そうします。けどちょっと休んでからで」

「あ、あぁ(疲れ切ってるなこりゃぁ)」


 メイを見ながらガイルは1人の友人を思い出す。


「まぁ気分転換に今度ユーマのところ行くか。確か家もあるって言ってたし、面白い話も聞けるかも知んねぇしよ」

「そうですね。いつも貰ってばっかりで何も返せないのが申し訳ないですけど、ユーマさんはいつも凄いことをしてる気がしますし。家にも行ってみたいです」


 少しずつ元気になってきたメイは立ち上がって錬金に取り掛かる。


「レベルを上げれば作れるものの品質も上がりますし、貴重な素材だって取りに行けますから、私も頑張らないと」

「まぁ程々にな。ちなみに戦闘指南はどんな事をしたんだ?」


 ガイルがそう質問すると、メイの目からハイライトが消えた。


「最初は色々な武器の素振りをしたんです。でも、全部ダメダメだって顔を教官はしてました。でもそれを直接私に言うこともなくて、何をやっても上手くいかなくて、それで……」


「わ、分かった。そこは大丈夫だ。最初はそうだったんだろうが、少しは出来るようになったんだろ?」

「そうですね。教官が何度も教えてくれて、初心者と名乗れるくらいになりました。あと、出来るだけモンスターとはこれからも自分でも戦うようにって」

「じゃあまた今度一緒にモンスターを狩りに行くか。メイも前よりは強くなってるんだろ?」

「それはもちろんです! 私の成長を見せましょう!」


 途中メイがまた落ち込みそうになったが、ガイルがなんとか話を良い方向に持っていき、モンスター狩りの約束まで取り付けることができたのだった。




「まだまだ食料問題は解決していませんが、とりあえずこのままプレイヤー様へ呼びかけていくことが重要でしょうね」

 

「失礼します、ベラ様、先ほどユーマ様に頂いたものをお持ちしました」

「爺や、あら、もうこんな時間だったのね。では、一緒にいただきましょう」

「分かりました。では私も少し失礼します」


 そう言ってベラとシュガーは並んでイチゴを持つ。


「美味しそうでございますね」

「ええ、本当に立派ですわ。早速いただきましょう」


 そう言って2人同時に食べる。


「おぉ、これはとても美味しいですね。ベラ様のお店で使われているものと同等、いやそれ以上かもしれませんな」

「はぁ、本当に美味しいです。どうやってこのような甘さに、形も良いですし生で食べるのが1番ですね。ジャムにしてしまうと……」


「ベラ様、こちらはユーマ様からの頂き物でございます」

「そ、そうでした。私は大変失礼なことを」

「私しか聞いておりません。ささ、こちらのアイスもいただきましょう。きっと美味しいに違いありません」

「そうですね。ではいただきます!」


 そして一口食べたあと、またもや口から感嘆の声が漏れる。


「これはマウンテンモウのミルクの味が最大限活かされておりますな。邪魔するものもなく、とても美味しいです」

「そうですね。ユーマ様はどうやってこれほど美味しいものを作られたのでしょう? お話をした時は冒険に出られた話を良く聞いたのですが」

「不思議なお方でございます。気分転換にユーマ様のお家を訪ねてみるのはどうですか? この美味しさの秘密が隠されているやもしれません」


 2人ともアイスを食べ終わり、今はシュガーが入れた紅茶を飲んでいる。


「そんな秘密を探るようなことはいたしません」

「では私は少し休暇をいただいてユーマ様のお家に遊びに行ってみましょうかね? ユーマ様なら快く迎え入れてくれると思いますし」

「そ、それなら私も行きます! 最近は落ち着いてきましたし、本来私が担当する仕事はもう終わっていますので」

「ではそういたしましょう。その時に今日のお礼は忘れないように」

「ユーマ様達は何を喜んでくれるでしょうか。やはりいつも購入されているケーキ? まだ購入されたことのないおすすめを持っていくのも……」

「私はまだ仕事が残っておりますので失礼いたします」


 部屋に1人残されたベラは、いつか行くユーマの家に持っていくお土産を、あれでもないこれでもないと考えるのであった。




「なぁ、やっぱりこの装備ダサいか?」

「だ、大丈夫です、よ。くっ、ふぅ、ふぅ」

「おい、ゆうた。笑いこらえてんじゃねえぞ」


 最前線攻略組は装備の更新のために、一度西の街のクランハウスへ戻ったのだが、現在1番強い装備はダンジョンで手に入ったものと鍛冶師が作った装備が混ざる形となり、能力を優先すると統一した装備をつけることが出来なかった。


「まぁちょっとしか違わないし全部作ってもらった装備にすれば良いんじゃない?」

「見た目も大事」

「うるせぇ、俺は性能を優先するぞ」

「絶妙だな。ダサいが着れないこともない。ダサいが」


 そんなやり取りをしつつ、メンバー達はクランのプレイヤーとも情報交換をする。


「まぁユニークがどこで出るかはまだ分からねぇか」

「ダンジョンでレベル上げと装備品集めのために籠ってる人も多いしね」

「うちはそろそろ食べ歩きしたいかも」

「それは同意」

「少なくとも次の街に行ってからだな。それまではすまないが攻略の方に集中してくれ」

「は〜い」

「分かった」


 クラン員が気を利かせてデザートを買ってきたので、女性陣はそれを食べて満足した。


「でも、確かに僕達ってあんまりいろんな場所には行けてないですよね。はじめの街で4体のボスを倒したあとはほぼダンジョンでしたし、今も南の街から次の街に進む道以外どこにも行ってません」

「まぁ大体いつもこんな感じだ。このあと少し後続のプレイヤーが来るのを待って、また攻略だな」

「なんで一度待つんですか?」

「そりゃあ全部攻略された道なんて誰も行きたくねぇだろ? こっちは好きに遊んでるだけだが、そんなことで文句を言ってくるやつは結構いるんだよ。まぁあとは俺達に張り合える奴らが居ないってのもあるがな」


 そして他のメンバーも話に加わる。


「1番厄介なのはいつもプレイヤーだからね〜。ルールに沿って遊んでても、うちらをどうにか悪いようにしようとする人は出てくるよ」

「ゆうたはまだ、そのままでいい」

「はぁ、そうですか。では皆さんにこれからも僕はついていきますね。もし変なことに巻き込まれたら助けてください!」

「その時は俺が守ってやろう。ユーマの後釜に手を出すやつはただじゃ置かねえ」

「またここでもユーマかよ」


「よし、それぞれ装備は選んだな。ではこれからボス討伐に向かう。まだ場所は分かっていないが、今回で次の街まで行くつもりだ」

「了解です」

「分かった」


 こうして最前線攻略組は新たな装備を身にまとい、次の街を目指して歩き始めるのだった。




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