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第60話

「この宝箱誰が開ける?」

「ユーマさんはどうですか?」

「ん、まぁ良いよ。今回は2人にあげるからそのままインベントリに入れて持って帰って」

「えっ、それは駄目ですよ!」

「そうだよ! みんなで倒したじゃん!」


 確かにそれはそうだし、俺も喉から手が出るほどその宝箱の中身は気になる。気になるが


「たぶん中身を見たら全部欲しくなっちゃいそうだし、俺達は今度もう一回挑戦するよ」

「そんなぁ、いいのかな?」

「まぁユーマがそう言うならもう良いんじゃない?」


「じゃあ魔石とこれまでの装備は渡しますね!」

「あ、この装備欲しいからその分のお金は払う」


 そういうわけで宝箱はミカさん達に、これまでのドロップ品は俺達にということになった。


「じゃあこれで臨時パーティーは解散かな」

「またやろ!」

「次会う時に枠が余ってたらね」

「あ、確かにそうですね。魔獣が増えてたらパーティーは組めないから」

「まぁ2人は強いし、そろそろ優美なる秩序のメンバーも来るんでしょ」

「確かにそうだった。まぁまた今度情報交換とかしよ」


 そう言ってダンジョンを出てミカさん達とは別れるのだった。


「よし、これで魔石も武器も売ったし、一旦家に戻ろうか」

「クゥ!」「アウ!」「……!」


 南の街で先程手に入れたアイテムを売ってから家に帰ると、モニカさんがご飯を作っていた。


「お、ユーマか。ちょうど朝ご飯が出来たぞ。あとキプロがユーマによろしく伝えておいてくれとも言っていたな」

「ありがとうございます、頂いていいですか? あとキプロのこともありがとうございます」

「もちろんだ」


 そうして北の街で買った野菜と、おそらくモンスターを倒して手に入れた肉がふんだんに使われた料理が出てきた。


「美味しそうですね。あの、騎士って料理とかするんですか?」

「いや、これは完全に1人で暮らすようになってからだな。見ての通り焼くか混ぜるかしか私は出来ないが」


 本人はそう言ってるが、美味しい料理が作れるならそれでいいだろう。


「ふぅ、ご馳走様でした。美味しかったです」

「クゥ!」「アウ!」「……!」

「あぁ、ではこのあとはいつも通り水やりをするか?」

「そうですね。たぶん収穫できるものもあると思うんで、それも楽しみです」


 そしてモニカさんを連れて俺達は畑に行く。


「イチゴとトマトとじゃがいもは出来てるな」

「美味しそうだな。これはもうすぐに食べるか?」


 モニカさんが言うには、例えばトマトを収穫してしまえば腐っていくが、そのまま置いとくと長い間もつらしい。味も変わらないため、食べないなら収穫しないのも手だとか。


「じゃあ少しだけ収穫しますね。あとは置いておきます。モニカさんもここで出来たものは収穫して食べてくれて良いですから。美味しくなかったら食べなくていいですけどね」


 収穫しなくても良い仕組みなら、収穫したところにまた同じ種を植えていくようにしようかな。


「そんな事にはならないだろう。見るからに美味しそうではないか」

「じゃあ先にちょっと食べてみますか」


 切れる鋏を使って収穫したイチゴを皆に渡し一緒に食べる。


「お、美味しい! ユーマ、これは本当に美味しいぞ!」

「確かに、ベラさんのお店で食べたショートケーキのと比べても、これは美味しいかも」

「クゥ!」「アウアウ!」「……!!」


 ルリとエメラは特に美味しそうに食べている。


「じゃあ種買ってくるので、食べ終わったら水やりお願いします」


 そう言って水やりを任せ、1人で種を買って帰ってきた。


「あれ、なんで1人で買いに行けたんだ?」

「ユーマ、帰ってきたか。水やりは終わったから、あとはさっきのところにまた植えるだけだ」

「あ、はい。すぐ植えますね」


 骨粉を混ぜながら収穫した場所に種を植える。


「種は多めに買ってきたので、俺がいない時はこれ使ってください」

「分かった」


 そして、ミルクを絞りに厩舎に行くと


「あ、ハセクさんおはようございます」

「(ペコリ)」

「あの、魔法の搾乳機があるのでミルク絞ってみます?」

「(ぶんぶんぶん)」


 すごい勢いで縦に頭を振ってくれるので、ハセクさんにミルク絞りは任せることにする。


「ユーマがいない日は1人だと持っていくのがしんどいだろうから、私もこの時間にはここに来るようにしよう」

「それだと助かります」


 今空いているミルク保存缶は10Lが3つと20Lが4つなので、あと3日はミルクを絞ることは出来る。


「じゃあこれからお願いします。一応俺もいる時は来ますので」

「(ペコリ)」


 持てるかの確認のため、絞ったミルクはモニカさんとハセクさんが一緒に冷蔵室へ持って行き、今日の農業の日課は終了した。


「お、エマが来たようだから私は行くよ」

「はい、ありがとうございました」


 そして俺は畑で採れたイチゴを使って何か作ることにする。


「よし来た魔法シリーズ!」


 今回は魔法のミキサーでいちごミルクを作りたいと思う。


「って言っても砂糖とミルクとイチゴをミキサーで混ぜるだけか」


 それでも俺は油断せずに、一応魔法の包丁を持ちながら、魔法のミキサーに全ての素材を入れていく。


「よし、すぐできたな。皆も飲んでいいぞ」

「クゥ!!」「アウアウ!」「……!!」


 これは美味しい! 皆も美味しいのかさっきモニカさんの料理を食べたばっかりなのに、全て飲み干している。


「これはいいな。思った以上にイチゴを使ったが、本当に美味しく出来た」


 インベントリに入れておけば腐ることもないから、専用のボトルを買ってもいいかも。


「よし、そろそろベラさんのところでアイスの箱も貰うか」


 ということで家からはじめの街へと移動し、ベラさんのお店に着く。


「いらっしゃいませ」


 いつも通りケーキは買う。普通お腹がいっぱいになったら食べ物はあまり見たくなくなると思うんだが、うちの魔獣達はそうではないらしい。


「ベラさんどうも」

「ユーマ様お待ちしておりました」


 買い物を済ませるといつも通りのベラさんがいたので、いつも通りの場所に座る。


「今爺やに持ってきてもらいますので少々お待ちください」

「俺達もケーキを食べてるので、そこまで急いでもらわなくても大丈夫ですよ」


「あ、そうだ、この前の食料問題の件はどうなりました?」

「そちらは現在も対応中です。お店に来られる方には北の街だけでなく、今プレイヤー様が活動している場所でのお食事をおすすめしているところです。それでも今のユーマ様のように馴染みのあるお店で食べたいという方も居ますので、その場合こちらからは何も言いませんが」


 なるほど、それで食料問題が解決するといいな。俺もこのお店のケーキが食べられなくなるのは嫌だし。


「あ、そう言えばさっきうちで取れたイチゴです。これ美味しかったんでシュガーさんと食べてください」

「あら、わざわざありがとうございます」

「ユーマ様お待たせしました。こちらが注文されていたものでございます」


 ベラさんにイチゴを渡していると、良いタイミングでシュガーさんがアイスの箱を持ってきてくれた。


「お、使い捨てのやつも良いですね。普段遣いのも頑丈そうで良さそうです。ありがとうございました!」

「いえ、お役に立てて何よりです」

「ベラさんにうちで取れたイチゴを渡してるので良かったらどうぞ。あ、あとここで作っちゃいますね。ウル、お願いしていい?」

「クゥ!」


 使い捨てのアイスのカップにミルク(砂糖入り)を入れて、この場でウルに凍らせてもらう。


「では、本当にありがとうございました。また来ます」

「いつでもいらしてください」

「アイスとイチゴは後でベラ様と食べさせていただきますね」


 こうして俺は目的も果たせたので一度家に帰る。


「よし、色々なことが起こっててスルーしたけど、なんで俺は1人で街に行けたんだ?」

「クゥ?」「アウ?」「……?」


 普通でしょ? みたいな顔でウル達は見てくるが、俺としては急に魔獣と離れて違和感がすごかった。


「え、何? パーティーも外せるんだ」


 少しステータス画面をいじると魔獣をパーティーから外すことができた。


「あ、これが家がないと出来ないことか。確か魔獣が増えたら家で入れ替えられるって言ってたけど、そもそもテイムするなら1体分の空きは必要だし、考えてみれば魔獣をパーティーから外せないと仲間を増やすのはタマゴ以外無理か」


 家以外の場所だとパーティーから外すことはできないが、これでパーティーメンバーを連れて行くか置いていくか自由にできることが分かった。


 このしくみに気付いたきっかけが、ウル達が俺よりイチゴを優先したからということに目を瞑れば、テイマーにとってとても重要な良い発見だったことは確かだ。


「まぁ少なくとも今は全員で探索に行くから、関係ないっちゃ関係ないか」


 火を使うモンスター相手にエメラを連れて行かないとかは今後あるかもしれないけど、それも仲間が増えてからの話だ。


「じゃあまた買い物行くから、皆はもうちょっと家で遊んでて」

「クゥ!」「アウ!」「……!」


 そう言うとモニカさんとエマちゃんがいる場所までウル達が走っていったので、俺は職人ギルドまでいちごミルク専用のボトルを1人で買いに行くのだった。




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ウル達が「イチゴ食べるからパーティー抜けるわ」って、勝手にパーティーを抜けた? ということはこのゲームのテイマーは信頼度がより重要と…
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