第59話
《ユーマのレベルが上がりました》
《ウルのレベルが上がりました》
《ルリのレベルが上がりました》
《エメラのレベルが上がりました》
名前:ユーマ
レベル:25
職業:中級テイマー
所属ギルド :魔獣、冒険者
パーティー:ユーマ、ウル、ルリ、エメラ
スキル:鑑定、生活魔法、インベントリ、『中級テイマー』、『片手剣術』
装備品:四王の片手剣、四王の鎧、四王の小手(暗闇の照明)、四王のズボン、四王の靴、幸運の指輪 (ビッグ・クイーンビー)
名前:ウル
レベル:25
種族:ホワイトウルフ
パーティー:ユーマ、ウル、ルリ、エメラ
スキル:勤勉、成長、インベントリ、『ホワイトウルフ』『氷魔法』
装備品:黒の首輪(魔獣)
名前:ルリ
レベル:25
種族:巨人
パーティー:ユーマ、ウル、ルリ、エメラ
スキル:忍耐、超回復、成長、インベントリ、『巨人2』
装備品:黒の腕輪(魔獣)、銀の手斧(魔獣)、銀の小盾(魔獣)
名前:エメラ
レベル:25
種族:樹の精霊
パーティー:ユーマ、ウル、ルリ、エメラ
スキル:支配、成長、インベントリ、『樹の精霊』『樹魔法』
装備品:黒のチョーカー(魔獣)
「6人だとやっぱりレベルは上がりにくいな」
「あたし達は2人だったけど、こんなにモンスターを早く倒せなかったから効率は良いよね〜」
「確かに、私とくるみの2人だったらこんなに多くのモンスターが出てきた時点で逃げてたもんね」
俺とウル達は役割もしっかりしてるし、パーティーとしての基礎はもう完成してるからなぁ。
「でも一応これで17階までは終わったから、実質レベルを上げれるのはあと2階層か」
「出来るだけたくさんのモンスターを倒さないと! ユーマ達が居るうちに稼げる経験値は稼いどこ!」
「ほんと、くるみがすいません」
「まぁ、素直なのは良いことだから」
くるみさんの本音すぎる発言もあったが、ボスのことを考えるともう1レベルくらいは上げときたいか。
「くるみさんの言ってた通りレベルをあと2階層で上げるのには賛成なんで、できるだけ倒していきますか」
「よし、頑張るぞ!」
「分かりました!」
「クゥ!」「アウ!」「……!」
「上がらなかったな」
「あたし達はレベル26になったけどね」
18・19階層の広いエリアをある程度回って敵をかなりの数倒したと思うが、それでも俺達のレベルは上がらなかった。
「レベル的には格上の敵なはずだけど、全然上がらなかったな」
「あたしとミカからすると、こんなに一気にモンスターを倒せるのがすごいと思うけどね」
「私達は基本3体までの敵を相手するようにしてましたから、規模感も安定感も2人の時と全く違いました」
あれ? 大量にモンスターを出して一気に狩るやり方はしてないのか。俺とウルしかいなかった時からこの狩り方はやってたけど、もしかして普通じゃない?
「でも、モンスターが出てきてくれるならいっぱい居た方が良くない?」
「それはユーマ達が4人パーティーだからだって。あたしら2人だとそんなの無理だし、デスペナルティ受けるとそれこそ面倒臭いから普通はやらないでしょ」
「そ、そっか」
攻略組でも普通はやらないのか。ウルごめん、俺は知らない間にハードモードでお前のことを育ててしまってた。
「よしよし、ウルは良い子だな。ルリとエメラもな」
「クゥ!」「アウ!」「……!」
そして今回はルリとエメラを撫でることも忘れない。俺は失敗から学ぶのだ。
「じゃあ最後のボスだけど、何か知ってる?」
「あたしらは何も聞いてないよ。なんか悔しいじゃん、倒してないボスのこと聞くの」
「それは確かに、じゃあ皆初見のボスってことか」
どんなボスか分からないが、ここまで来たら1回で倒したい。
「じゃあ準備できたし、行こうか」
「頑張るぞー」
「はい!」
「クゥ!」「アウ!」「……!」
そして俺達は最後のボスが待つ階層へと降りていった。
そこには大きな騎士の鎧が壁に並んでおり、中央には槍を手に持って立つ金色の騎士がいた。
「たぶんボスってあれだよね」
「たぶんな」
「壁の鎧も動き出してきそうですね」
ミカさんの言う通りになったら、それこそ6人パーティーじゃないと倒すのは難しいだろうな。
……カチャ、ガシャン……
鎧の擦れる音が響くと同時に、目の前の金色の騎士の目が怪しく光る。
動き出したボスの名前を見ると、黄金の騎士と出た。
「ルリはあの槍に気をつけて。正面から受けるのはやめて、受け流すことを考えてくれ」
「アウ!」
「くるみさんもそのつもりでいて欲しい。ルリの後ろだからって攻撃がこないと思わずに注意してくれ」
「オッケー」
「ウルは最初氷魔法で様子見ながら、いけると思ったらどんどん攻撃して」
「クゥ!」
「エメラとミカさんは相手の遠距離攻撃に気をつけつつ、できるだけ攻撃の手は止めないでほしい」
「分かりました」「(コクコク)」
俺は最初にルリへ魔獣ステータス強化と、エメラに魔獣スキル強化をかけて前に出る。
「初見はルリだけだとやっぱりキツそうだから、少し俺と一緒に戦おうな」
「アウ!」
ルリは俺が前に居るうちはあえて敵視上昇を使わずにいてくれる。このおかげで敵が俺に向けて攻撃することが多くなる。
「ルリは自分の盾で受け流すことを考えろよ」
「アウ!」
ボスが俺に向かって槍で突いてくるが、片手剣で軌道をずらしながらカウンターを狙う。
しかし、鎧が硬くダメージがあまり入らない。これはレベル差もあるが、単純に物理攻撃に強いということだろう。
「ルリはとりあえず攻撃を防ぐことが1番だな。槍の薙ぎ払いを気をつければ、後は何とかなるだろう」
「アウ!」
ある程度敵の攻撃パターンを俺が戦うことでルリに見せることが出来たので、ここからはルリに前を任せる。
ルリもここからは敵視上昇のスキルをボスに使い、ボスのヘイトを取って前衛としての役割を果たすことに集中している。
「エメラは魔法で攻撃しつつもたまにあの槍を拘束してやってくれ。特にあの槍で横の薙ぎ払いをしようとした時は頼む」
「(コクコク)」
「ウルは今から俺と一緒に行動しよう」
「クゥ!」
ウルを俺のところまで呼び、俺の動きに合わせてもらう。
「俺の攻撃したところを一緒に攻撃してくれ。ボスから離れてる時もウルは氷魔法で同じ場所を頼む」
「クゥ!」
そう言って俺とウルはひたすら黄金の騎士の左膝の部分を攻撃する。
「あそこだけ明らかに弱点っぽい錆び方をしてるんだよな」
他の場所は黄金の騎士というだけあり光り輝いているが、あの左膝だけはメッキが剥がれたように錆びている。
「意外とダメージ入らないだけで余裕じゃない?」
「またくるみはそんなこと言って」
そう2人が話した瞬間、黄金の騎士の様子がおかしくなる。
……ガンッ、ガンッ、ガンッ……
「なんであんなに槍を地面に叩きつけてるの?」
「わ、わからないけど注意しないと」
「2人とも、出来るだけエメラから離れないようにしてくれ。後ろの騎士が動き出した」
黄金の騎士が地面に叩きつけた槍の音によって眠りから覚めた騎士達は、ゆっくりと俺たちに向かってくる。
「エメラ、2人を守りながらお前も2人に守ってもらってくれ。俺とウルはルリの方を助ける」
「……!(コクコク)」
「ということでエメラをお願いします。あの数を倒してからボスを倒すのはルリが持たないので、エメラの拘束をうまく使いながら8体の騎士の相手は任せました」
「あたし達があのボスの相手出来ないのは悔しいけど、あたしらどっちもあんまりダメージ与えられないもんね」
「分かりました。ボスはお願いします!」
そして俺とウルはルリの方に駆けつける。
「ルリもこっからは出来るだけ攻撃もしてくれ。早く倒さないと次はエメラ達が危ない」
「アウ!」
俺はルリにまたステータス強化を、ウルにスキル強化をかけ、自分もボスに攻撃する。
「ウルは氷魔法多めで頼む。加速も部分強化もどんどん使ってくれ」
「クゥ!」
ルリは一生懸命槍を盾で受け流しては、相手に手斧で攻撃している。
外から見ると大きさが違いすぎて、本物の槍にミニチュアサイズのおもちゃの盾と斧で戦っているように見える。
「これじゃあどっちが巨人なのか分からないよな」
ただルリも力は負けておらず、盾より何倍も大きい槍を受け流すどころか、正面から受け止める時もあった。
「正直正面で受け止めるのは失敗したら危ないけど、これで相手もより力を込めた攻撃じゃないとルリには効かないって思ったな」
こうしてボスの攻撃が大振りになればなるほど、受け流した時の隙は大きくなる。
ルリはしっかりと受け止められる攻撃を選んで受け止めていた。横の薙ぎ払いなんかは絶対に止められないが、あまり反動をつけずに突いたボスの槍をしっかりと狙ったのは流石だったな。
「ルリ、いいぞ! これでやりやすくなった!」
ルリのファインプレイのおかげでさっきよりも隙の大きくなったボスに、ウルの氷魔法と俺の片手剣の攻撃で何度も仕掛ける。
「もうボスは倒せそうだから、エメラ達もその騎士達からここまで逃げてきて、一緒に攻撃してくれ!」
「……!」
「分かりました!」
「りょーかい!」
最後に俺はエメラにステータス強化とスキル強化をかけて、追いかけてきた8体の騎士達を相手する。
「少しくらいなら俺だけでも耐えれるだろ」
相手の身体が大きいため、結局俺に攻撃できるのは、後ろを取らせさえしなければ3体が限度だ。
「でもこいつらの相手をしてたら、ウル達の方を見る余裕は全くないな」
ボス戦で出てくる敵なだけあって、弱いなんてことはない。むしろ、この8体を倒す方が黄金の騎士1体を倒すより難しいかも。
居るんだよなぁ、ボスより強いボス戦に出てくる雑魚敵。雑魚敵って言いながら1番厄介なやつだ。
「まぁこいつらに俺から攻撃する必要はないから、あと少し逃げ回りますか」
こうして相手の攻撃を受け流し、たまに攻撃することでウル達の方へ行かないようにしながら1人で耐えていると、騎士達が急に動かなくなった。
「やったーーー!」
「やりました!」
「良かった良かった。これで俺たちもクリア出来たぞ」
「クゥ!」「アウ!」「……!」
黄金の騎士を倒した瞬間をこの中で俺だけ見ることが出来なかったため、喜び方に差がある気がするが、ダンジョンをクリアできたことは本当に嬉しい。
「ありがとうございました! ユーマさん達が居なかったらたぶんここまで来れてませんし」
「ユーマ達強かったね。最初は絶対あたし達の方がもっと強いって思ってたのに」
「まぁ今はダンジョンをクリアできたことを喜ぼう」
こうして俺達は少しの間、黄金の騎士を倒したボスの部屋に留まってお互いを褒め合うのだった。