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第21話

「ちょっと前までここが普通だったのに、他の街に自分の家を持つと久しぶりに感じるなぁ」

「クゥ」「アウ!」


 ウルはいつも通り、ルリは目を輝かせている。


 確かに北の街に比べると、ここはプレイヤーも多いし、街も大きいし、キラキラして見えるのはわかる。


「じゃあ、俺とウルのお気に入りの場所に行こうか」

「クゥ!」「アウ?」


 ウルはもうどこに行くのかなんとなく見当がついているのか、さっきよりも嬉しそうだ。


「こんにちは」

「いらっしゃい」

「あの、焼いて欲しい食材があるんですけど、お願いできたりします?」

「あぁ」

「量が多くなっても大丈夫ですか?」

「他の客が来るまではな」

 

 やってきたのはギムナさんの串焼き屋台で、どうにかしたいと思ってたインベントリの肉を少しここで焼いてもらうことにした。


 ウサギ肉10に、イノシシ肉、シカ肉、クマ肉を5ずつ焼いてもらう。


「はいよ」


 そう言って出された串焼きは、ウルの分は串から外されてお皿に乗っており、気遣いがありがたい。


「ルリも、いただきますしてからな」

「アウ?」


 ウルは、既に伏せのポーズでウルなりのいただきますをして食べている。


「手を合わせていただきますだ」

「アゥアゥアウ!」


 これでルリもいただきますを覚えたな。


「美味いなぁ」

「クゥ!」

「アウ!」


 3人でモグモグしながら食べている前では、ギムナさんが渡した肉を焼いてくれている。


「そう言えばベラさんに会いました。ギムナさんがカシワドリを渡した相手ってベラさんだったんですね」

「あそこは卵の消費が多いからな。すぐに元も取れるだろうし、良い買い物だったろうよ」


 てことはメスのカシワドリをベラさんは買ったんだろう。


「あと、俺達北の街についたんですけど、北の街でおすすめの場所ってあります?」

「あそこは農業が盛んだからな、美味い飯はどこでも食えるだろうよ。ただまぁプレイヤー様はクリスタルを移動できるんだろ? 農業やるなら良いだろうが、そうじゃないならちょいと退屈かもな」


「じゃあここから近い所でおすすめの街ってあります?」

「今言った通り北は農業が盛んで、東は海があるから海鮮なんかが多いな。南は冒険者向け、西は娯楽も多くて大きい金が動く商人の街って感じだ。ただ、どこも先に進めばそれぞれ国があるから、そんなに気にせず進めば良いと思うぞ」


 そう言った後、調理し終わった大量の肉を渡してくれた。

 

「ほら、これで全部だ」


 調理された肉をインベントリに入れて、代金の1,000Gを払う。


「ご馳走様でした」

「おう」


 なかなかいい情報も貰えたし、やっぱり戻ってきてよかった。


「さて、じゃあもう1つのおすすめの店へ行こうか」

「クゥ!」

「アウ!」


 ある程度お腹の膨れた様子の魔獣たちを連れてきたのは、もちろんベラさんのお店。


「いらっしゃいませ」

「チーズケーキと、ショートケーキを2つずつお願いします」


 色々種類があって決めるのが難しいだろうし、今回はこの前おすすめされたものを買っておく。

 

「今度買うときのためにどのケーキがいいか今のうちに探しておくといいぞ」


 そう言うとルリは目を輝かせてショーケースに張り付いている。


「そう言えば隣でピザとかパンを売ってるって言ってたな」


 ケーキを用意してもらってる間に、隣で売ってあるパンとピザも少し購入する。


「肉だけでも美味しいけど、やっぱりお米かパンは欲しいよな」


 これからは街の中ではお米を食べて、外ではパンにしようかな。

 なんて考えていると、もしかしたら来てくれるかな? と期待していた人物に横から声をかけられた。


「また来てくれて嬉しいです」

「どうも。今回は前に言ってたピザとパンも買ってみました」


 購入した商品をもらって、店の外に行く。


「新しい魔獣が増えていますね」

「ちょうどほんの少し前に仲間になりました。新しい仲間のルリです」

「アウ」


 話しながら座れる場所に行き、2人分のケーキを出す。


「ちなみにベラさんのお時間は大丈夫なんですか?」

「ええ、私がお邪魔している身ですから、心配なさらないでください」


 なんか、これから俺たちがこのお店に来たら必ずベラさんが出てきそうな気がする。


「じゃあ、ちょっと話したいこともあるので、食べながらでも良いですか?」

「もちろんです! 私も用意しますね」


「いただきます」「クゥ」「アウ」


 食べながら、ベラさんにもギムナさんに話したような内容を話す。


「俺達って北の街に行けたんですけど、何をしようか迷ってなかなか決められなかったんですよ。なので、この世界の人に色々アドバイスをもらおうかなって」

「なるほど。ユーマ様は何をしようかお困りになっているのですね?」


「そうですね。色んなギルドの依頼をしたり、お気に入りのお店を見つけたり、あとは生産職も少しだけやってみたいなって気持ちもありますけど、どれも今すぐにって感じではないですね」

「分かりました。では、ユーマ様がこの世界で1番大切にしていることはなんですか?」

「大切にしていることですか」


 今までは最速で攻略を進めること、そのゲームで最強になることが、ゲームをする上で1番だったが、それがなくなった今俺は何を大切にしているのだろうか。


「純粋に楽しもうって思ったんですよね。前までは楽しかったことが、急いで、頑張って、疲れて、最後には楽しいと思えなくなったことがあったんです。なので、今回はこの世界を自分なりに楽しめたら良いなって」

「では楽しむために1番大切なことは何ですか?」

「自由にやりたいなって感じです」

「もっと具体的にはどうですか?」


 この世界で1番大切なことを具体的にか。


「魔獣と冒険すること、ですかね。単純にウルやルリと一緒にいるのが楽しいですし、テイマーとして頑張りたいです。あとは、他のプレイヤーよりも強くなりたいって思ってしまっている部分もあります」

「魔獣と冒険すること、とても素晴らしいと思います。強さを求めることも良いではないですか。なぜ強くなることが駄目かのように考えられているのですか?」


「前に強くなることに注力し過ぎて、疲れて嫌になったんです。今回はそうなりたくないなって」

「では、そうならないようにいたしましょう。魔獣と冒険したい気持ちも、強くなりたい気持ちも、全てユーマ様の本心でしょうから」


「そうですね、難しく考え過ぎてたのかも知れません」

「定期的にこちらに来ていただければ、お話することで解決できることもあるかと思います。本当は私が話したいだけなのですけどね」


 ベラさんにそう言われて少し気が楽になった。俺は気にし過ぎていたのかもしれない。


「ウルとルリは、モンスター倒すのは好きか?」

「クゥ!」

「アウ!」

「良かったですね。これでユーマ様のやりたいことは魔獣にとってもやりたいことだということが分かりましたし」


 確かに今思うとウルとルリに最初に相談するべきだった。こんな当たり前のことに気が付かなかったなんて。


「では私はここで失礼いたします。またご一緒できることを楽しみにしてますね」

「ありがとうございました」


 そう言ってベラさんは去っていったので、俺達も動き出すことにする。


「じゃあ、早速今俺がやりたいと思っていることを言っておく。俺は北の街以外の街にも行ってみたい。そして何よりも色んなボスを倒したい」

「クゥ」

「アウ」

 

「でも、農業もしたいし、依頼も受けたいし、お金も稼ぎたい。これが今俺の思いつくやりたいこと全部だ。それで2人に聞く。ボス討伐、農業、依頼、お金稼ぎ、この4つの中から先にやりたい事を選んでくれ。今選ばなくても後々全部やるからな」

「クゥ!」

「アウ!」


「よし、ボス討伐なら上、農業なら右、依頼なら左、お金稼ぎなら下を、せーので指を差すぞ」

「クゥ」

「アウ」

「行くぞ、せーのっ!」



 

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