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第201話

「いいですか!!! このイベントは幸福なる種族としての活躍の場です!!!」

「(この声は……腹ぺこさん?)」

「元最前線攻略組であるユーマさんの活躍、現在1番強い装備を作るガイルさん達、そして有名配信者であるアリスさん達。このクランに私達のような第2陣のメンバーが居ても居なくても、幸福なる種族は大きく成長していくでしょう」


 俺は2階の部屋から降りてきて、先にクランハウスを出ようと扉に手をかけたタイミングで、腹ぺこさんの声が聞こえてきた。

 本当なら会議を先に抜けたんだし、早く王都の下見へ行った方が良いのだが、この言葉の続きが気になって外に出られない。

 後ろを見るとウル達も足を止めて話を聞こうとしてるので、扉の前で腹ぺこさんの話を最後まで聞くことにする。


「ですが!!! 私達はそんな凄い方達からおこぼれを貰うためにこのクランへ入った訳じゃないはずです!!! 強い装備を作ってもらい、有名な配信者と同じクランに所属しているというステータスをもらい、クラン長の通ってきた道の後ろを続くために入ったわけじゃないはずです!!!」


 確かに腹ぺこさんは自分のお店を持ちたいって話だったけど、他の人達にもそういう具体的な目標がある訳では無い。

 ただ、クランに貢献してくれる気持ちが強かったり、クランメンバーの誰かに恩を感じて入ったりという人は多いため、新しいクランではあるものの結構絆は強い方だと思う。


「私達は、この素晴らしいクランに入ることが出来た素晴らしいメンバーと一緒に成長するために、何か自分の目標に向かって進むために、このクランに貢献したいという想いを持って入ったはずです!!! だから、この素晴らしいクランへ貢献することの出来る機会を絶対に逃してはいけないのです!!!」


 あれ、なんか腹ぺこさんからどことなくアリスさん臭がするんだけど……


「攻略組でもない幸福なる種族がこのイベントで活躍すれば誰もが思うはずです。幸福なる種族に所属している人達は凄いのだと。元最前線攻略組であるクラン長、今1番強い装備を作る生産職、有名配信者、それだけのクランでは無いのだと!!! さぁ、誰もが分かる形で私達の存在を世界へと知らしめましょう。アウロサリバで1番の貢献度を取り、幸福なる種族に隙はないと、このクランは何でも出来る最高のクランなのだと私達が証明するのです!!!」

「「「「「うぉぉぉぉぉ!!!!!!」」」」」


 なんか怒号にも近い声がクランハウス中に響き渡っていて、今にも皆がこちらに向かって出てきそうな気がしたため、俺は急いで扉を開けるとクランハウスからクリスタルまで走るのだった。




「なんか凄かったな」

「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」


 腹ぺこさんからどことなくアリスさんに近い雰囲気を感じたのは、俺のことを話す時のアリスさんと、幸福なる種族のことを話す腹ぺこさんが似てたからだろう。

 俺は知らなかったが、腹ぺこさんは相当うちのクランのことを気に入ってるらしい。

 本人からそんなこと一度も聞いたことなかったが、あの言葉を聞いたら腹ぺこさんの幸福なる種族に対する愛情が伝わってきた。


「偉大な御方ってクランは有名どころではないけど攻略組だし、アウロサリバでうちが1位の貢献度を取るのはなかなか厳しいと思うけど、皆のあのやる気を見たら、もしかしたらって期待しちゃうな」


 最前線攻略組を抜くとか、モンスター討伐数1位を目指すとかそういうことではなく、あくまでも自分達がギリギリ達成できそうな、アウロサリバの貢献度1位を目指すというところも、皆のやる気アップに繋がっていると思う。

 最初腹ぺこさんにまとめ役をお願いしたのは誰も西の街を守るリーダー枠がいなかったからだが、これからもこういう時はお願いして良いかもしれない。


 腹ぺこさんはうちのクランメンバーの食事を1人で作ってるので、俺以外の皆とは交流する機会も多いし、たぶん1番クランメンバーのことを知っていると思う。

 だからこそ腹ぺこさんの言葉は皆に響くだろうし、いつも自分達のために料理を作ってくれる腹ぺこさんが言うなら、自分達も頑張ろうって思う気持ちも強まる。

 俺は皆があんな声を出してるところは見たことがないし、イベント前の話し合いとしては最高だったと思う。


「うちは普段こういう熱血系のクランじゃないんだけど、イベントの日はこれくらい気合入ってる方が皆も楽しいだろうな」


 攻略組でもなければのんびりクランでもない、中間に位置する俺達のクランは皆が自由に遊べるのが強みだ。


 それこそ自分のお店を持ちたいと言ってうちに入った腹ぺこさんや、おしゃべりがしたくて入った生産職の人、ゲームをするのが初めてで、メイちゃんに声を掛けられたから入ってみようと思ったスー君ユー君など、幸福なる種族には色んな人が居る。

 皆クランに入ってる以上クランのために何かしたいとは思ってくれてるはずだが、皆それぞれやりたいことは違う。

 そんなバラバラなメンバーがこういう時に1つになるというのは、攻略組とはまた違う良さがあって良いなと思った。


「まぁそんな中でも俺は皆と違う場所に居るんだけどな」

「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」

「あぁ、ごめんごめん。ウル達とは一緒だもんな。……よし! 俺達も皆に負けないよう頑張るか!」


 俺もウル達も腹ぺこさんのあの言葉にどこか気合が入ったのか、イベントで活躍したいという気持ちは強くなっていた。


「あれユーマじゃないか?」

「優美なる秩序と元最前線攻略組が居るならここも余裕だな」

「でも人数はそこまで多くなさそうだし、もしかしたら俺達も貢献度上位に食い込めるかも?」

「無理無理、聞いたことない名前の攻略組の奴らにすら勝てねぇのに、有名どころに勝てるわけがねぇ」


 俺達はこの前下見で行くことが出来なかった場所を目指して歩いているのだが、すれ違うプレイヤー達は俺のことを知ってるし、俺も他のゲームで何度か見た記憶のあるプレイヤーが多かった。

 やっぱり新しいゲームだから知らない人も少しはいるが、基本的には見慣れた人達ばっかりだ。


「ユーマさん」

「あ、ミカさんこんにちは。あれ、くるみさんは居ないんですね」

「くるみは自分の担当の場所を下見してなかったので、ププさん直々に教えてもらってます」

「そうなんですね」


 たぶん優美なる秩序は人数が足りていないから、6人パーティーではなくもっと少ない人数に分かれて色んな場所を守ることになってるのだろう。

 ほぼ全員が第2陣スタートというハンデがやっぱり痛いな。


「やっぱり王都くらい大きな街だと、人数的な問題がありますよね。優美なる秩序はメインパーティーを分けて配置することにしたんですか?」

「そうなんです。私もくるみも違う場所に配置されて、生産職の方とパーティーを組んで守ることになってます」

「まぁ仕方がないですよね」 

「……優美なる秩序に入って初めてのイベントなので、私もくるみも楽しみにしていたのですが、団長達と一緒に出来ないのはちょっと残念です」

「人数問題は仕方がないですよね」


 こうなるとミカさんやくるみさんが貢献度ランキング上位になるのは厳しくて、俺が結構上位に食い込めそうで状況的には嬉しいんだけど、ちょっと複雑だな。


「あの、ユーマさんはお一人ですか?」

「ウル達が居るので俺だけではないですけど」

「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」

「あ、すみません!」

「いや、大丈夫です、ウル達は怒ってないですよ。自分達が居るよってアピールしただけで。たぶんですけど、ミカさんは俺以外にクランメンバーが居るかどうか聞きたかったんですよね?」

「そうです!」

「ここには俺だけしかいないです。クランの皆はほぼ全員アウロサリバを守ってるので」


 俺がそう言うとミカさんの表情が少し曇った。

 もしかしたら王都を守るプレイヤーが予定より多かったら、ミカさん達もテミスさんとパーティーを組んでイベントを遊べたのかもしれない。

 ただ、俺のクランではガイルとメイちゃんくらいしか王都に来れる人は居ないし、戦力になるかどうかって考えたら怪しい。


「……そうです、か」

「あの、テミスさんは今回のイベントって誰とパーティーを組むんですか?」

「団長はププ先輩と組んで貢献度1位を取るとのことでした」

「なるほど。確かにそれなら取れますね」


 まぁ優美なる秩序としてはそれが1番確実か。 

 ミカさんを目の前にして申し訳ないが、テミスさんとププさんが2人で組めばほぼ優美なる秩序のパーティーが完成していると言って良いだろう。

 それくらいあの2人はパワーがあるし、はっきり言って最前線攻略組のメンバーと同じくらいの実力がある。


 自慢じゃないが俺はこれでも自分が強いことは理解してるつもりだし、最前線攻略組へ所属するに値する実力を持っていると思っている。

 そしてそれはテミスさんとププさんにも言えること。

 あの2人も相当な実力者だし、今すぐに最前線攻略組の誰かと交代しても何も問題ない。

 なんなら今のゆうたよりは確実に2人の方が実力も経験もあるだろう。


「あ、今から最後のミーティングがあるので、失礼します!」

「あっ」


 ミカさんは俺にそう言って王都のクリスタルの方へ走って行ったが、俺もテミスさんからチャットで呼ばれてるんだよなぁ。


「ちょっと気まずいけど、追いかけるか」

「クゥ」「アウ」「……!」「コン」


「ミカさん!」

「あれ、ユーマさん?」


 俺達は走っているミカさんに追いつき、自分もテミスさんに呼ばれていることを伝えると、ミカさんは顔を真っ赤にして俺に謝るのだった。




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