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第194話

「あの、エメラさんや。俺達もそちらにお邪魔して良いのかな?」

「……!(コクッ)」

「えっと、こんにちは?」

『……!』『……』『(コクコク)』『(コクッ)』


 森の中を進み続けて2〜3時間は経過し、このままだと今日のお昼ご飯は我慢するしかないかな? なんて思っていた時、妖精っぽいモンスター達に出逢った。


 一瞬悪戯フェアリーかと思ったが、少年少女のような見た目に4枚の(はね)、肩に乗せれそうなほど小さな身体からは、油断してはいけない強者のオーラを感じた。

 それに見た目が良いモンスターは昔から強いって相場が決まってるんだ。


 そんな相手を俺は最初敵だと思って攻撃しようとしたのだが、エメラが俺達の間に入るとそれを制止し、妖精モンスター達に近づき話し始めると、そのままエメラがついて行くので俺達も追いかけるしかなかった。


「あの、ここはこの子達の家?」

「(コクッ)」

「そっか。取り敢えずここで食事していいか聞いてくれる? 皆お腹空いてるだろうし」

「……!」


 大きな樹に小さな穴が空いており、たぶん彼らはあの穴の中で生活してるんだろう。

 俺達は家の中に入る訳では無いが、近くでご飯を食べていいかどうかは聞くべきだと思ったので、エメラにお願いする。


 そしてどうやらここで食べるのは問題ないとのことらしく、場所を借りて俺達はいつも通り食事をするのだが……


「えっと、エメラとかウル達のご飯じゃなくて、俺のご飯が気になるの? あ、このデザート?」

『『『『(コクコクッ)』』』』

「なら……はいこれ、4つに分けたから皆で食べてね」

『『『『……!!』』』』


 騎士団長様のところに行った時、ウル達はその場でチーズタルトを食べていたが、俺は結局あの場で食べずにインベントリに入れていた。

 だから今度外でご飯を食べる時にでも、と思ってたんだけど、あんなに食べたそうにされたらあげるしかない。

 まぁ家の前で食べさせてもらってるし、場所代と思えばいいか。


「それにしても、こんな場所で妖精のモンスターに出逢うとは思わなかったなぁ」


 ゴブリンや悪戯フェアリーのように醜い容姿をしているモンスターは、プレイヤーがテイムしたいと思うことは少ないだろうが、目の前の妖精モンスター達はほぼ100%の確率で全員がテイムしたいと思うだろう。

 それくらい見た目が可愛いし、過去にも色んなゲームをやってきた人なら、このタイプのモンスターが絶対に今後更に強くなるってすぐに分かるはずだ。


 だから俺はエメラを通じてこの妖精モンスター達に仲間になってもらおうと思うのだが……


「エメラ、この子達は俺達に付いてくる気ってありそう?」

「(ふるふる)」

「ないのかぁ。ゴーさんのご飯でも無理?」

「…………(ふるふる)」


 少し間が空いたが、それでも無理そうらしい。


「それなら戦って弱らせてからテイム、ってわけにもいかないしなぁ。……俺って直接モンスターをテイムするの苦手なのかな?」


 キノさんを仲間にした時は本人が仲間になりたそうにしてたから出来たけど、毎回そんな感じで相手に確認取ってからテイムするのはなんか違う気がする。

 もっと凶暴で話が通じないようなモンスターを弱らせて、仲間になってくれるのを願いながらテイム! っていうのが俺の知ってるテイマーなんだけどなぁ……


「そんなにここって居心地良い?」

『『『『(コク)』』』』

「……そっかぁ。それなら仕方ないよな」


 俺はもうこの妖精モンスター達と仲良くなってしまったため、今から戦闘して弱らせてからテイムなんてことは絶対に出来ない。

 そもそもそんなことしたらエメラにも嫌われそうだし。


「……じゃあ皆を仲間にするのは諦めようかな」


 非常に残念だが、相手に断られたなら諦めるしかない。

 エメラが仲間に居るからこそ分かるが、この子達は絶対に魔法を上手に使うだろうし、弱いわけがないんだけど。


 見た目で予想するなら、風か水、もしくは土の魔法を使ってきそうな気がする。

 水魔法ならシロと被るけど、風か土なら被らないし、やっぱり仲間にしたいなぁ、なんて。


「ってあれ? そういえば何で名前と体力ゲージが見えないんだ?」


 コネファンではモンスターの名前と体力は見えるはずなのに、この妖精モンスター達のは見えない。


 コネファンで名前と体力が見えない存在は、プレイヤーとこの世界の人達しか俺は知らないが、もしかしてこの子達はモンスターだと思ってたけど、そうじゃないのか?


「もしそうなら攻撃しても効かなかったのか? まぁ仮にそうだとしても攻撃しなくて良かったとは思うけど」


 こんな森の中で見つけたら普通は攻撃するだろうけど、エメラのおかげで助かった。


「でも、言葉を話せないから名前は聞けないよな」


 この妖精モンスター……じゃなくて、妖精さん4人の名前を知ることが出来ないのは残念だけど、ここに住んでるなら色々知ってるだろうし、せっかくなら教えてもらおう。


「この辺で強いモンスターとか、面白そうな場所ってないかな? 俺達は今ボスを探してるんだけど」

『……!!』


 どこまで会話ができるか不安だったが、1人の妖精さんが勢いよく手を挙げると、ある方向に指をさす。


「あっちに強いモンスターが居るの?」

『……!!』

「教えてくれてありがとう」

 つんつん

「ん、何かな?」

『……(じーーー)』

「ええっと、あっちにもモンスター? いや、モンスターじゃないけど何かあるんだね?」

『……(コク)』

 ぐいぐいっ

「おっとっと、はいはい。え、あっちとあっちにも何かあるんだ」

『(コクッ)』『(コクコクッ)』


 この後も色々教えてくれようとしてるのか、一生懸命俺に何かを伝えようと動いているのだが、途中で何も伝わらない俺の代わりに、エメラが妖精さんの話を聞いてくれた。


 いや、最初からエメラに妖精さんの話を聞いてもらって、後で俺がエメラに案内してもらえばそれで良かったな。


「でも、こんなとこ来ようとする人なんてほぼ居ないだろうに、よく作り込んでるなぁ」


 俺達はほぼ道なき道を歩いてたし、妖精さん達と出逢ったのも植物が生い茂ってる動きづらい場所だった。

 そんな場所でもこういうことが起こるのだから、もうどこを探索しても何か起こるんじゃないかって思う。


「でも何か起こるとしたら最初の人だけだもんな」


 だから攻略組は面白い。

 眠い目をこすってレベル上げをしないといけなかったり、面白そうなイベントを無視して攻略しないといけないことはあるけど、行く先々全てが誰もまだ来たことのない場所というのは素晴らしいものだった。

 そしてコネファンだと攻略組じゃなくてもこのように誰も足を踏み入れたことのない場所はいっぱいある為、ウル達と一緒にこういう探索を続けていきたいと思う。


「じゃあ妖精さんが何を教えてくれたのかわからないけど、まずはボスを倒しに行くか」

「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」


 俺達は少しの間お世話になった妖精さん達とお別れして、最初に教えてもらったボスが居るという場所へ向かう。


「ボスが強過ぎたりしなかったら嬉しいな」


 一応ここは王都の周辺というよりは、王都とアウロサリバの間の森という感じなので、そこまで強いモンスターが出てくることはないと思うのだが……


「クゥ!」


 ウルの声で全員が足を止める。この先に何か居るらしいが、警戒して欲しいのか俺達の前をいつもよりゆっくり歩く。


「もしかしてボスだった? でもそれだとボスエリアがあるはずだから警戒はしなくていいよな」

「クゥ!」

「……あぁ、なる程な」


 目の前に見えたのは種類の違う大量のモンスター達。

 それを操っているのは奥の方に何体も居る悪戯フェアリーなのだろう。


「これはホブゴブリンみたいな中ボスパターンだな」


 だからウルはこんなに周囲を警戒しながら俺達をここに連れてきたのか。

 リベンジこそ果たしたけど、俺達は最初ゴブリンの巣に挑んで負けたもんなぁ。


「色んなモンスター達が居るし、ここは悪戯フェアリーの巣なんだろうな」


 枯れかけの大きな樹が奥にあり、あそこがこの巣の中心っぽい。

 ということは中ボスがあの場所にいる可能性も高いというわけで、手前に居るモンスター達よりもあっちを警戒するべきではある。


「でもゴブリンの時と同じでモンスターの量が多すぎるよな」


 今回は種類の違うモンスターを相手にしないといけないのが結構しんどそうだ。

 悪戯フェアリーを倒せばモンスター達の統率は取れなくなるだろうが、そのモンスター達がこの場から逃げるとも限らないし、むしろ更に暴れてこの場をかき乱してくるかもしれない。


「どうするエメラ、俺は悪戯フェアリーを先に倒すでも、操られてるモンスターを倒してから悪戯フェアリーを倒すでも、どっちでも良いぞ」

「……」

「クゥ」「アウ」「コン」


 エメラはどう戦うべきか考えていて、ウル達はエメラの決定を待っている。

 そして俺はと言うと……


(やっと新しくした装備が活躍しそうな展開が来たな)


 せっかく装備を新しくしたのに、あまりその恩恵を感じられる機会が少なかったから、やっとしっかりとした活躍の場が来て嬉しかった。


「悪戯フェアリーを先に倒していくなら、ウルにその役目をやってもらう。手前から全部倒していくなら、ウルも今回は出来るだけ俺達の近くで戦って欲しい」

「クゥ!」

「ルリは基本的に大きなモンスターの相手をお願い。もし相手の統率が取れなくなって、モンスターがバラバラに動くようなことがあったら、後衛の近くまで下がって守りに徹するように」

「アウ!」

「エメラとシロはどんな状況でもやることは変わらないよ。とにかく敵を倒し続ける、どれだけ早く倒せるかによってパーティー全員の負担が変わってくるから」

「……」「コン!」


 エメラはまだどう戦うか考えているため返事はないが、俺の言葉がなくても分かってるだろう。


「で、今回は俺も皆の近くで戦うけど……一か八かで中ボスに向かって俺が戦いに行くような展開でも良いぞ?」

「「「「……」」」」

「ってのは嘘で、そうならないように皆で頑張ろう!」

「「「「……」」」」

「あ、あれ? 冗談のつもりというか、今回は1回で倒し切るぞ! って皆が盛り上がるのを期待してたんだけど……」


 もうゴブリンへリベンジは果たしたし、俺としては士気を上げる目的で言ったんだけど、なんかウル達が俺の予想とは違う形で気合いが入ってる、というか、殺気立ってる。


「えっと、エメラの作戦が決まったらすぐ戦おっか……」


 こうして妖精さんに教えてもらった、中ボスの居そうな悪戯フェアリーの巣を見つけた俺達は、かつてない程にトゲトゲした、殺気立った雰囲気の中戦いが始まろうとしていた。




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