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第2話

《チュートリアルを開始します。インベントリの武器を装備し、目の前の的に向かって攻撃してください。》


 初めてこういったゲームをする人の殆どは、どの武器がどういったものなのか全く分からない。

 なんなら動画で見たことがあっても、上手く扱えずに萎えてしまう人もいるのだ。

 

 なのでこういったチュートリアルで様々な武器を試すことは、非常に重要なのである。


「まぁ俺は流石にここに置いてあるような武器くらいなら全部扱えるんだ、がっ」

 スパンッ……


 そう言って目の前の的に片手剣を振り下ろすと、キラキラとしたエフェクトが出た。

 

 おそらくこのゲームにおいてクリティカルダメージを与えた時に出るものだろうが、分かりやすくて良いな。


「ふう〜、こんなもんかな。流石に検証以外でこんなにもチュートリアルをゆっくりやったのは久しぶりだな」

 

 一通り全ての武器を使用してみたが、今まで通りならスタートダッシュを優先して見向きもしなかっただろう。


「それにしてもこのゲームは初心者に優しく設定されてそうだな。武器を使用する時に少しアシストが効いている気がする」


 流石有名なゲーム会社が協力して作った、今1番の注目を集めているコネファンだ。

 

 昔は武器の扱いに慣れない人が多く、発売後すぐのゲーム内調査で、非戦闘職メインのプレイヤーが6割という伝説の時代があった。 

 あの時と比較するとゲーム側も工夫して頑張ってるんだなと感じる。

 

 そんな時代に噛み合ったからこそ、俺もそこまで苦労せず最前線攻略組の仲間入りができたのだろう。

 

 今から入ろうと思っても、競争相手が多く、才能溢れる人も多い。

 

 そう考えるとまた頭を下げて戻るべきかと一瞬思ったが、すぐにその考えを振り切る。

 まだあの場所を抜けてから1日も経っていないため、前の考え方に引っ張られるが、俺はゲームを楽しむことを選んだんだ。


「はぁ、しっかりしないとな。別に最前線攻略が悪いんじゃない。俺がゲームを楽しむためには少し距離を置かないといけないってだけだ」


 また戻りたくなったらその時はその時だ。まずは純粋にゲームを楽しむことを思い出そう。


《次のチュートリアルを開始します。草原に生えている薬草5本の採取と、スライム1体の討伐をお願いします。》

《スライム討伐が出来ないと判断された場合は、ウィンドウの表示ボタンから依頼画面を押して、『スライム討伐の拒否』を選択してください》


 これまた優しい設計だこと。まぁモンスターを倒せない人がいた場合、ここで詰んでしまうんだろうな。

 

 モンスターを倒したくない人に配慮されてるんだろうけど、こちとらNPCの人間やプレイヤーともバチバチに戦ってきた身だ。流石にこんなところでは躓かない。


「さっき言われたインベントリ内の武器から1つ選んで倒せって事なんだろうけど、どれにしよっかな」


 このチュートリアルで使った武器が最初の装備になるなんて事もあり得るし、ここはちょっと考えるか。


「と言っても武器は何でも良いなぁ」


 鍛冶師になるプレイヤーが作りやすいことを考えると、序盤は剣とか短剣が無難か? 鍛冶師は使用人口の多い武器を作って売ろうとするだろうし。

 

 仮に序盤はNPCメイドの店売り武器の方が強くても、最終的にはプレイヤーの作ったものか、ドロップアイテムの武器の方が強くなることが多い。

 プレイヤーメイド品を買って鍛冶師との繋がりを作っておけば、後々強い武器を手に入れられるだろう。

 

「いや、なんなら自分で武器を作るのもあり、か」


 前まではこんな選択肢なんてあり得なかったが、俺もようやく柔軟な考え方が出来るようになってきたようだ。

 

 最前線までは行かなくとも、攻略もしつつ、スローライフもしつつっていうのが今の俺の理想の遊び方な気がする。俺の性格上攻略要素がないとそれこそ楽しめないし。


 ということで俺は武器に片手剣を選び、サクッと薬草5本の採取とスライム討伐を完了した。


「いやぁ、チュートリアルの討伐と採取より、武器選びの方が時間かかったな」


《最後のチュートリアルです。これから映像を流します。映像にはルールやマナーなどの簡単な説明、この世界のこと、そしてユーマ様がこの後選択することになる職業について流れますので、是非参考にしてみてください。》


 そうして流れてきたのはこのゲームをする前にも公式が上げていた動画に加えて、この世界の街の住人の視点や、草原や火山などの色々な場所を飛び回る鳥の視点、最後にはモンスターと戦う冒険者達の視点が。


 壮大な音楽とともにタイトルが映し出され、興奮覚めやらぬまま自分のいるゲーム世界へと戻された。


「こ、これは、すげぇな。まだチュートリアルしかしてないのに、こんなにワクワクさせてくるなんて、ヤバすぎるっ!」


 やっぱり街の外の世界や、最後の冒険者達の映像が頭にこびりついて、ほとんどのプレイヤーは冒険に出るだろう。

 

 これもゲーム会社の作戦なんだろうが、騙されてもいいと思えるくらい見事なものだった。


「ま、俺は最初から職業は決めてたし関係ないんだが、ますますやる気が上がったな」


《では、これでチュートリアルを終了いたします。ユーマ様がこの世界を長く楽しんでくださることを願っています》


 こうして目の前がまた白くなり、気がつくと街の広場にあるクリスタルの前で俺は立っていた。

 

 周りを見渡すと俺と同じような人がちらほら。そして周囲を観察していると、また1人近くにプレイヤーと思われる人が現れた。


「なるほど、テレポートしてきたように見えるんだな」


 流石にしっかりとゲーム開始時刻からログインしている人が多いのか、街の中が騒がしい。

 確か販売数が1万くらいだったか? おそらくその殆どのプレイヤーが今この街にいるのだろう。

 既に次回の販売予約も始まっていると聞くが、一度にこれ以上のプレイヤーがこの街に集まるととんでもない事になるからそうしたのかもしれない。


「ま、俺はパーティー組んでやっていく感じでもないし、早く教会に行って職業に就こう」


 マップを確認しつつ教会に向かう道すがら、この世界のNPCを観察する。

 と言ってもほぼプレイヤーとの違いは無いので、店の店員や赤ちゃんを抱いている人など、プレイヤーではないだろうと思われる人たちの観察だが。


「やっぱり普通に会話できるし、この規模のゲームならNPC1人に対しても好感度が設定されてるんだろうな」


 数年前までは、AIがこれほど進化するとは思わなかった。今はこのゲームの管理すらAIに任せているというし、AIの進化は止まらない。


「てことで、NPCに対して色々話してみるべきだな。なんならプレイヤーよりもNPCの方が話が通じるかもしれないし」


 歩いているときに聞こえたのだが、既に1人不適切な行動により二度とこのゲームにログインできなくなった奴がいるらしい。

 どんな行動をしてbanされたのか分からないが、流石にこれだけの人数がいると噂が広まるのも早いな。


 俺はそんなことを考えて歩いている内に、教会前に着いた。教会にはなかなか多くの人数がいるのだが、教会が広いため窮屈さはあまり感じない。


「さてと、流石にシスターもプレイヤーと同じ数いるわけじゃないし、見様見真似でやってみるか」


 女神像の近くでお祈りをしている人達がいるので、それに倣って俺もやってみると


《あなたの望む職業を選択してください》


 剣士、魔法使い、僧侶、盗賊、弓使い、鍛冶師、商人…………


 上の方にオススメとされる職業が並んでおり、現在その職業を選んでいる人数が5段階でぼんやりと分かるようになっている。


 剣士や魔法使いは小さく『5』とあり、僧侶や盗賊は『4』、弓使いは『3』、鍛冶師は『2』、商人は『1』となっている。


 そんな数字など関係なく、俺は初めから決めていた職業を探す。そしてその単語を見つけ、迷わず選択した。


《あなたの選択する職業は『テイマー』でよろしいですか?》


「はい」


《あなたは今から『テイマー』です。選択した職業を変更したい場合、また全てをやり直し転生したい場合はこちらまでお越しください。》


 そう聞こえたのを最後に、脳内に響く声と職業選択画面が消えた。


「よしっ、これでテイマーになれたぞ。これが俺の新しいゲーム人生の一歩目だ!」




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