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第182話

「じゃあ、今から明日の夜7時、ゲーム内だと4日後にあるイベントについて話をしたいんだけど……」


 俺はクランメンバーを前に今回のイベントの話を進めるのだが、新しく入った情報によると、どうやらイベントが行われる空間は、この世界をコピーした同じような世界らしく、そのコピーされた世界で色んな街に大量のモンスターが襲ってくるから、皆で街を守りましょうという感じらしい。

 なので、イベントの街でもこれまで築いてきた関係(例えば俺とフカさん、俺とモニカさんなどの関係)は変わらず、本当に別空間にもう1つイベントのための同じ世界があると思って良いとのこと。

 ちなみにイベント空間は時間ギリギリまでこっちの世界を読み込むようにしたいらしく、イベントが始まる1時間前までの世界が反映されることになるという話だ。


「まずここに居る人の中で、イベントの日に来れない人は居る?」


 俺は周りを見渡すが、誰も手を挙げていない。

 流石ログイン時間が長い人しか入れないブラッククランだ……いや、皆楽しいからやってるだけで、嫌々遊んでる人は居ないから……居ないよね?


「じゃあイベントに参加しないつもりの人は居る?」


 一応このイベントは参加しないことも出来て、現実では明日の夜7時〜0時までの5時間、ゲーム内時間にして15時間をイベント空間で過ごすことになる。

 他のゲームでもイベントに参加しないという人は少ないが、たまにイベントの内容によっては、「そのイベントを自分がしても意味がないから」というような理由で遊ばない人は居る。

 生産職で例えると、明らかに戦闘職じゃないと倒せない強い敵を討伐しないといけなかったり、報酬が戦闘職にしかあまり効果がないものだったり、イベント中アイテムを皆に配っても、報酬には何の影響も無いなどといった場合は、参加しないこともあるのだ。

 ただ、今回はそういう類いのイベントではなさそうだし、少なくともここに居るクランメンバーは皆、今回のイベントには参加するらしい。


「じゃあ次にイベント中クランとしてどう動くかなんだけど……」


 このイベントは街に押し寄せてくるモンスターをプレイヤー達で撃退するというものだが、他のクランと協力することもあるだろうし、コネファンならプレイヤーだけじゃなくて、この世界の人達とプレイヤーの力を合わせる展開も用意しているだろう。


 そしてうちのクランの話をすると、うちは第2陣で来たメンバーが多いため、王国領や帝国領に行ける人はそもそも少ない。

 そうなると必然的に方角の名前が付く街か、はじめの街を守ることになるのだが、どうしようか。


「たぶんまだはじめの街しか行けないって人は居ないだろうけど、北の街に行けないとか、南の街に行けないって人は居る?」

「ユーマさん!」

「はい、モリさんどうされました?」

「一応僕は初心者育成のリーダーを任されたので、皆さんが他の街に行くお手伝いをイベントが発表された日から積極的にしていました。おそらく最初の黒・青・赤・白の4体のボスをまだ倒していない方は居ないと思います!」

「え、そんなことしてくれてたんでつか?」


 ビックリしすぎて噛んでしまった。

 ここに来てモリさんの働きがあまりにも良過ぎる。そういうことなら色々面倒くさい事を考えなくて済むな。


「ありがとうございます。それならイベント中、その街に行けない! みたいなことは発生しなさそうなので、臨機応変に対応できそうです」


 イベント中プレイヤーはどういう形で評価され、どんな報酬が貰えるのか分からないが、出来るだけ進んだ街の防衛をする方が良いものを貰えると思うし、幸福なる種族の第2陣メンバーは東西南北のどこかの街をメインで守る事になりそうだ。


「じゃあここからはどの街を守るか決めようと思うんですけど、思い入れのある街とかある人居ます? 他のプレイヤー達との兼ね合いで、ここで決めた街を絶対に守ることになるかは分からないですけど」

「西の街に工房があるので、守るなら西が良いです!」

「僕もそう思います!」

「私もです」


 結構西の街という意見が多いな。というか思い入れのある街がない人が多いのかもしれない。

 武器や防具が強いからって、まだ皆のレベルは20に届かないくらいの人がほとんどだろうし、これは仕方がないことだろう。

 うちのクランだと、生産職の人達は西の街、戦闘職の人達はレベル上げのため南の街に今1番行く機会が多いだろうが、そうなると守りたい気持ちとしては西の街になるのは当然だな。


「じゃあ一応西の街を守る予定でいようと思います。ただ、はじめの街をどうしても守りたいというような人がいたら、そこは自由にして下さい。今回は誰かと競うってよりも協力が大事そうなので」

「ユーマさん良いですか?」

「はい、サキさんどうぞ」


 手を挙げたのは攻略組のサキさん。彼女達のパーティーはうちの攻略パーティーとして頑張ってもらうのだが、今回はまだレベル的にも足りていないし、活躍の機会は先になりそうだ。


「私達のパーティーは王国領に入ることが出来たのですが、それでも西の街を守りますか?」

「あ、もうそこまで行ったんですね」


 サキさん達の今のレベルは25らしく、あの植物特攻のお弁当と天候の指輪を使って倒したのだと思う。

 俺が肥大せし大樹を倒したのはレベル26とか7だった気がするが、おそらくサキさん達は24レベルでボスを倒したのだろう。


「基本的に第2陣から参加したメンバーには西の街を守ってもらうつもりでしたが、サキさん達のパーティーは王国領のピオネル村、もしくは少し進んだアクロサリバの街を守ってもらっても良いかもしれないですね」

「ということはユーマさんは他の街を守るのですか?」

「俺もそうですし、ガイルやメイちゃん、配信者のアリスさん達には、王国領か帝国領を守ってもらうことになると思います。俺の予想だと1番プレイヤーの人数が多くなるのは皆に守ってもらう東西南北の街で、他の街が人手不足になると思いますから」


 最初からコネファンを遊んでる人でも、生産職や初心者、あまり遊ぶ時間が取れていない人は、王国領や帝国領にまだ行けてないだろうし、東西南北の街は1番プレイヤーが溢れるゾーンだと俺は思っている。

 そして帝国領や王国領には、結構コネファンに慣れてる人や、攻略組級の人が固まっているだろうから、人は少なくても少数精鋭でなんとか街を守る、って感じになるんじゃないかなというのが俺の予想だ。


 そして先の街に行けば行く程襲ってくるモンスターは強くなると思うので、サキさん達は今のままだと王国領を守るにはレベルが足りないだろう。

 まだイベントが始まってないのでなんとも言えないが、どこかにプレイヤーが固まるよりも、満遍なく色んな街にプレイヤーが散らばって、今プレイヤーが行ける全ての街を守るというのが一番良い形だと思う。

 そういう意味でサキさん達が人手不足の王国領に来てくれたのは、全ての街を守るという点ではとても良いことだ。


「もし王国領や帝国領に行けるのに、うちのクランの方針が西の街を守ることになったからということで、皆と西の街を守ろうとしてる人が居るのなら、俺はやめて欲しいとだけ言っておきますね。俺はそれぞれ自分の1番進んでいる街を守るのが良いと思いますから」

「分かりました。ありがとうございます」

「俺も色々足りてなかった説明を皆にできたので良かったです。質問ありがとうございました」


 そしてこの後も少し質問があったが、この場にいない人達もいるため、今は第2陣組の話をメインで進める。


「イベント中俺とかガイルとか、リーダー格の人が皆居なくなっちゃうと思うけど、それはどうしようかな」

「僕が西の街に居ましょうか?」

「気持ちはありがたいですけど、モリさんも王国領とか帝国領に居る方が良いと思います。なので、リーダーの中で頼める人となると……小岩さんになるな」

「じ、自分です!?」

「うん。でも、小岩さんは戦闘が苦手って聞いてるし……」

「では私が!」


 そう言って名乗りを上げたのは、うちの料理長である腹ぺこさんだった。


「確かに腹ぺこさんなら任せられる……というか腹ぺこさんをうちの料理長としてリーダーにしましょう」

「料理人は私しか居ないですが」

「商人だって小岩さんしか居ないけどリーダーにしてるし、腹ぺこさんもリーダーにぴったりですよ」


 皆からも拍手が起こり、腹ぺこさんをリーダー格に上げるのに賛成だと伝えてくれる。


「ありがとうございます! 精一杯頑張ります!!」


 と、こんな感じでイベントの話は結構良い感じに纏まった。

 後はここに居ないメンバー、特に初期メンバーには情報をしっかり共有するのと、いざイベントが始まったら全然今話したような感じのイベントじゃなかった、とならないよう祈るのみだ。


「それじゃあイベントまでにまたもう一度くらい集まってもらったりするかもしれないけど、会議は夜にするからそこは安心してね」


 ダンジョン探索をしたり、夜中でもサポーターを雇って探索する人は関係ないが、それ以外の人達は夜だと暇になりがちなので、出来るだけその時間に会議はやろうと思う。

 まぁ生産職だと夜中に作業するって人もいるだろうし、太陽が出てるうちに遊んで夜になったら現実に戻って家のことをするという人も居るから、そういう人は無理に参加してもらわなくても良いけど、出来るだけ皆の邪魔にならないタイミングで会議はやりたい。


「じゃあ一旦家に帰ろうかな」


 またここには戻ってくるだろうが、一度俺はモニカさん達に挨拶するため、クランハウスを出てクリスタルから家へと移動するのだった。




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