第170話
「ありがとう、ボスを倒してくれたのもそうだし、掘り出してくれたのも」
「クゥ!」「コン!」
名前:ユーマ
レベル:33
職業:中級テイマー
所属ギルド :魔獣、冒険者、商人、職人
所属クラン:幸福なる種族 (リーダー)
パーティー:ユーマ、ウル、ルリ、エメラ、シロ
スキル:鑑定、生活魔法、インベントリ、『中級テイマー』、『片手剣術』
装備品:四王の片手剣(敏捷の珠・紅)、四王の鎧(希薄な存在)、四王の小手(暗闇の照明)、四王のズボン(協力の証)、四王の靴(敏捷の珠・碧)、幸運の指輪 (ビッグ・クイーンビー)、速さのブレスレット
名前:ウル
レベル:33
種族:アイシクルウルフ
パーティー:ユーマ、ウル、ルリ、エメラ、シロ
スキル:勤勉、成長、インベントリ、『アイシクルウルフ』『氷魔法』
装備品:赤の首輪(魔獣)、赤のおまもり(魔獣)
名前:ルリ
レベル:33
種族:巨人
パーティー:ユーマ、ウル、ルリ、エメラ、シロ
スキル:忍耐、超回復、成長、インベントリ、『巨人2』
装備品:赤の腕輪(魔獣)、赤のおまもり(魔獣)、銀の手斧(魔獣)、銀の小盾(魔獣)
名前:エメラ
レベル:33
種族:大樹の精霊
パーティー:ユーマ、ウル、ルリ、エメラ、シロ
スキル:支配、成長、インベントリ、『大樹の精霊』『樹魔法』
装備品:赤のチョーカー(魔獣)、赤のおまもり(魔獣)
名前:シロ
レベル:33
種族:善狐
パーティー:ユーマ、ウル、ルリ、エメラ、シロ
スキル:聡明、成長、インベントリ、『善狐』『水魔法』
装備品:赤の足輪(魔獣)、赤のおまもり(魔獣)
一応皆のレベルが上がっていることを確認したあと、ウル達にさっきの状況を聞く。
「ウル達がボスを倒してくれたんだよね?」
「クゥ!」「コン!」
「ボスが投げつけてきた大釜を2人は避けれたんだね」
ウルは跳躍とか回避とか色んなスキルがあるから避けれたんだろうけど、シロがあの攻撃を避けれたことには驚いた。
「ちなみにシロはどうやって逃げたの?」
「コン!」
俺がそう聞くと目の前で変身のスキルを使ったシロは、元の身体の大きさのまま、モグラのような姿へと変わった。
そして高く積もっている雪に飛び込むと、雪をかき分けて移動しているところを見せてくれる。
人化は魔法の威力が上がったりするためよく使ってるけど、まさか変身まで使いこなせるとは、シロはやっぱり賢いな。
「なる程な、シロはあの大釜を避けた後雪の中を移動したのか」
そんなわけで、ウルとシロのファインプレーのおかげもあり、俺達は見事スキーローンを倒すことが出来た。
そしてインベントリには『スキーローンの大髭』と『風の皮』もあり、俺達が行くのは残すところあと一箇所。
「追加報酬は……本当に出ないんだな」
ユニークボスやダンジョンボスのような、宝箱を落とす特殊なボスを抜いたとしても、20体くらいのボスを俺は今までに倒している。
そして俺が追加報酬を貰えたのは、タマゴと魔獣装備を1つずつであり、単純計算だと10%くらいの確率で追加報酬は貰えるということ。
「まぁもっと確率は低いだろうな」
初討伐や単独初討伐は、おそらく追加報酬を貰える確率を上げてくれるのだろう。
最初は何かしらの条件を満たせば追加報酬を確実に貰えたりするのでは? と期待していたが、ここまで追加報酬がランダムなら、確率の上昇しか考えられない。
そして俺は正直言って追加報酬が確率で貰えるこのシステムは良いと思う。
毎回毎回最初にそのボスを倒したプレイヤーに特別な報酬が渡されてしまえば、どんどん後続のプレイヤーとの差が広がっていくだろうし、少し追加報酬の確率を上げるくらいが、バランス的にも、プレイヤー達の気持ち的にも丁度良い。
俺が運良く最初のボスでルリのタマゴを手に入れることが出来たように、追加報酬で手に入るものは強力なものだったり便利なものばかりなはずだ。
俺は運良く最初にタマゴを手に入れたからこそ、何か条件を満たせば追加報酬が得られると思い込んで今まで踊らされていたわけだが、それくらい追加報酬は強力であり、ゲーマーなら無視できないものである。
だからこそ初討伐では確率だけ上げて、追加報酬は運次第という今の状況は良いバランスだと思う。
まぁ今の俺の考えが全て間違ってて、初討伐だろうが単独初討伐だろうが、他のプレイヤー達にボスが倒されたことをアナウンスされるだけで、追加報酬が貰えるかどうかは普通に倒すのと何も変わらないという可能性も本当に少しだけあるが。
「今まで戦ってきたボスが落とす追加報酬が何なのか知りたいな。というかこういうの気になりだしたら、全部のボスの追加報酬が気になるんだよな」
こういった凄く長い時間がかかりそうなことを調べるプレイヤーが結構居ることを俺は知っている。
彼ら彼女らの遊び方には共感できる部分とそうでない部分があるが、俺から言えるのはリスペクトしているということだ。
現在進行系で追加報酬のことを調べているプレイヤーはコネファンにも何人か居るだろうが、職業が違うと報酬も変わると思うので、はじめの街で戦えるボスの全ての追加報酬が判明するのに、何ヶ月、いや、何年かかるか想像がつかない。
「ま、黒の獅子からタマゴが出るってのは1つ俺が証明できたか」
「クゥ!」「コン!」
「あ、ちょ、ウルもシロも待って!」
そんなことを考えていると、俺に飛びついてきたウルとシロによって雪の上へと倒されてしまう。
「クゥ!」「コン!」
「え、絶対無理だって。俺1人でウルだけでもたぶん無理なのに、シロも一緒には持ち上げられないって」
「アウ!」「……!」
するとルリが下からウルの身体を支える準備を、エメラが樹魔法で俺の身体とウルとシロの2人の身体を固定し始める。
「え、本当に抱っこするの?」
「クゥ!」「コン!」
「……分かった。ルリはとにかく腕伸ばしてウルの身体支えてよ」
「アウ!」
「エメラも樹魔法で2人を俺に固定するだけじゃなくて、ちゃんと支えてね」
「……!」
「……よし、持ち上げるぞ、せーのっ!」
こうしてスキーローンを倒した後の雪が積もったボスエリアで、俺達は雪合戦やかまくらを作るような、雪と言えば! という遊びはせずに、ただ俺が皆を抱っこするだけに時間を使うのだった。
「ま、満足か?」
「クゥ!」「コン!」
もしこの身体が俺の現実の身体とリンクしていたら、ギックリ腰なんかでは済まなかっただろう。
ルリが支えてくれたおかげで持ち上げることには意外と簡単に成功したが、そのまま歩くことをご所望になったウルとシロのせいで、何度も2人と一緒に雪へダイブすることになった。
普段なら綺麗に受け身を取るだろうが、2人とも俺に固定されてるため、一緒に雪へ倒れ込むのを受け入れるしかないのだ。
まぁそれも含めて2人は楽しそうだったし、ルリとエメラも見てるだけで楽しそうにしてたから良かったのだろう。
俺1人の疲労で皆が元気になったなら良かった良かった。
「じゃあもうこのまま王都に帰らず最後の場所に向かうよ」
「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」
「今度雪のある場所に行ったら違う遊び方をしような」
本当はかまくらを皆で作ってみたりしたかったんだけど、その時間も抱っこの時間で失くなった。
「ん、ごめん。皆に襲ってくるモンスターは任せる」
「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」
次の場所へ向かっている途中にチャットが来たため、遂にクランへ呼び戻されるのかと思ったが、名前を見ると最前線攻略組のポドルからだった。
内容としては、予定を早めてネルメリアを出た最前線攻略組が、さっき帝都に着いたということ。そして帝都ではこれまでと違って冒険者にめちゃくちゃ好かれているとのことだった。
大勢の冒険者に声をかけられ、その全てがポドル達を助けてくれるようとするらしい。
例えば帝都の案内から始まり、オススメの鍛冶屋からご飯屋、帝都近くにいるモンスターの情報など、ほぼ全ての情報が冒険者に聞いただけで得られる状態なのだとか。
「(これ、俺の場合で言うとバズマさんだよな)」
俺がアウロサリバで喧嘩を買った人数は1人、そして王都で俺に好意的に接してくれたのはバズマさん1人。
最前線攻略組が喧嘩を買った人数は多数、そして帝都で好意的に接してくる冒険者の数も多数。
「この情報はポドルに教えないとな」
俺はチャットで自分の状況も教える。これを聞いたからって何か最前線攻略組に良いことが起こるかと言われたらそうではないけど、またもし同じような喧嘩イベントが起こった時、この情報を下にどう行動するか決めることは出来るはずだ。
「(てことは俺ももっと喧嘩を買えば良かったか?)」
俺が喧嘩した冒険者以外に、少なくとももう1人は喧嘩相手になってくれそうな人がいた。
その人は俺がアウロサリバへ最初に来た時絡んできた冒険者だけど、あの人が失礼な態度をとると仲間の人が庇ってて、結局俺と殴り合いに発展するようなことは無かった。
俺が他の人と喧嘩した時にも扉の近くで偶然再会したけど、その時もパーティーの人が居たし、俺がそもそもやる気じゃなかったから喧嘩は起こらなかった。
「(たぶんここまで絡んでくる冒険者が少なかったのはウル達のおかげだよな)」
ウル達はずっと嫌な視線を向けてくる冒険者達に睨み返してくれてたし、それが無かったら俺も最前線攻略組みたいに絡まれ続けてたのかもしれない。
俺に絡んできた全ての冒険者を返り討ちにした王都の世界線を少し見てみたかったけど、そうなるとまともにアウロサリバでは活動できなかっただろうし、これで良かったと思おう。
「よし、ありがとう。チャットは返信したから、一気にボスのところまで進むよ!」
「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」
今回のチャットはクランからの招集ではなかったが、チャットが届いたことによっていつ中断してもおかしくない状況なのだと理解し、俺達は急ぎ足で最後の場所へと向かうのだった。