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第164話

「そりゃあ第2陣で来た奴だろうな」

「だよね」


 俺は尾行から逃げて家に帰った後、ゴーさんが職人ギルドで依頼を受けられるように俺のゴーレムだと示すメモだけ渡し、クランハウスへとやって来ていた。


 そしてクランハウスには今日も人が居て、丁度ガイルとメイちゃんも工房ではなくこっちに居たので、さっきの出来事を2人に話していた。


「ユーマさんが北の街に住んでいることはもう動画でもありますもんね」

「まぁちょっとユーマの後ろついて行っただけなんじゃねぇか?」

「でもコネファンが始まってすぐの時に、配信者の人に絡みに行ったプレイヤーがBANされたっていう事件があったのに、自分もそうなるかもしれないっていう恐怖とかないのかな?」

「あぁ、あれアリスらしいな」

「え、アリスさんなんですか!?」

「メイちゃんは知らなかったんだ」


 まぁこんなことをメイちゃんに言ってる俺も、モニカさんと俺が初めてアリスさんを見た時に、アリスさんがファンのプレイヤー達に向けて「BANされたいの?」みたいなことを言ってたから知ったんだけど。


「BANされたそいつはアリスが許可出したから、第2陣の入ってくるタイミングでプレイ出来るようになったらしいぞ」

「なるほど。せっかく抽選当たったのに1週間遅れだから、実質第2陣とおんなじ扱いになったわけか」

「そいつはアリスの許可がなけりゃずっと遊べなかっただろうがな」


 こういったゲームで一度アカウント停止されると、基本的に戻って来ることはないが、アリスさんの許可もあって遊べるようになったのは、その人の運が良かっただけだろう。


 そしてガイルが言うには、結構迷惑プレイヤーは今も居るらしく、アカウント停止までは行かなくても、24時間ログイン制限のようなことはされているのだとか。

 ただ、コネファンが面白過ぎて、一度制限をかけられたプレイヤーは帰ってきた後結構大人しくなっているという話は面白かった。


 俺は迷惑なことをするプレイヤーはずっと迷惑なことをやりがちだと思っている。けど、こうやってプレイできなくなるのは嫌だから反省するというのは、ゲームのためにも、迷惑をかけるプレイヤー達の更生の機会としても良いと思う。


「ま、なんかあったら言ってくれ」

「私ユーマさんの力になりますから!」

「いや、ガイルにもメイちゃんにも既に助けられてるよ」


 ガイルとメイちゃんがここに居たのは、クランのことを色々やってくれてたかららしい。

 2人とも俺に話したがらないが、面接に来たプレイヤーの対応や、クランメンバーのための武器やポーション作りなどをしてくれている。

 今もその素材をクランハウスへ取りに来てたらしく、俺なんかよりもめちゃくちゃクランのために動いてくれていた。

 


「人数って凄いです。素材が簡単に集まりますから」

「俺がさっき第2陣のメンバーに出来上がった武器を渡して、メイも一緒にポーションを渡したんだが、なかなか好評だったな」

「そういうのって俺が率先してやらないといけないんじゃない?」

「いや、ユーマはこっちから連絡するまでは王都を楽しんでくれ。生産職でもないしな。どうせあと数日したらまた嫌でもクランのために動いてもらうことになる」


 ガイルがそうやって言うのには理由がある。先程全体連絡でイベントのお知らせが来たからだ。

 まだ詳細は発表されてないが、うちのクランは第2陣メンバーが多いのもあって、取り敢えずイベントまでにレベルを上げたいと思ってるプレイヤーが多いのだろう。


 これまでカジノやオークションといったゲーム内でのイベントはあったが、コネファン側から全体連絡で発表されるようなイベントはこれが初めてだ。

 もしかしたらレベルなんて全く関係ないイベントかもしれないが、詳細が分からない以上今はレベルを上げるしか出来ることはないため、皆必死になってモンスターを狩っているらしい。


「あ、そうだ。これ返すぞ」

「おっ、てことは遂に王国領に?」

「あぁ。肥大せし大樹だったか? それが無かったら俺達には無理だったな」

「植物特攻のお弁当にも助けられました!」


 ガイルとメイちゃんはクランメンバーのモリさんを誘った後、あと2人戦闘職のメンバーを集めようとした時、丁度クランハウスにとおるさんとともるさんの双子姉妹が来て、一緒にボス討伐へ行ったらしい。

 その2人からボス戦中配信するって聞いて、メイちゃんがド緊張してた話はまた今度聞かせてもらおう。


 そしてパーティーメンバーを6人集めたガイル達だが、そのメンバーだと誰も魔法を使うプレイヤーが居ないため、俺としては結構厳しいボス戦になったのだろうと思ったが、天候の指輪と昆虫食のお弁当による植物系モンスター特攻がかなり活躍したらしい。

 もう相手の体がどんどん削れて、自分達がめちゃくちゃ強くなったのだと錯覚するくらい気持ちの良い戦いだったとか。


「ボス戦の後のゴブリン戦の方が苦戦したくらいですよ」

「まぁメイのは言い過ぎだが、それくらい俺達はあのボスに対して強かったな。木の枝が面白いくらい簡単に切れるんだ」

「役に立ったなら良かったよ。ちなみにボス戦でレベルは上がった?」

「あぁ、一緒に行った全員上がったはずだ」


 やっぱり自分達よりも強いボスを倒せるのなら、それがレベルを上げるには手っ取り早いのかもしれない。

 そもそも戦闘職でも格上のボスを倒すことが難しいのはそうなんだが、今回でボス対策アイテムのようなものもあると知れたし、準備さえすれば生産職でも格上のボスを簡単に倒せるということが分かって良かった。


 今考えたら俺の幸運の指輪なんて状態異常無効という破格の性能をしてるから、色んなモンスターに対する対策アイテムなんだろうけど……

 クランメンバーの皆のためになるなら、天候の指輪の方は共有物としてここに置いとこうかな?


「今回みたいに指輪があればボスを倒せる生産職のメンバーも居るだろうし、この天候の指輪を地下に置いてこようと思うんだけど、誰かがずっと持ってたりしちゃうかな?」

「基本的に今地下にある装備は自由に使って良いものだからな。もしかしたら最初に見つけた奴が持ち続ける可能性はある」

「そっかぁ」

「そうだな……それなら貸出制にして装備を管理するか? ドロップ品のアクセサリー装備なんかは強い効果のものが多いだろうしな。貸出装備と自由に使って良い装備のスペースを分けて、貸出装備は何時から何時まで使う予定だってメモさせても良いぞ」


 俺はそこまでしなくてもいいと思ったが、これから天候の指輪のような特定の場面で効果を発揮する強力な装備が出てきた時、皆自分のインベントリの肥やしにする可能性が高いと言われた。

 ガイルとしてはせっかく皆このクランに入ってるのに、そこで助け合わないのは勿体ないということで、後でガイル自ら貸出装備のスペースを作ってくれるそうだ。


「こっちで上手くやっとく。装備は俺の管轄だしな」

「なんかガイルの仕事を俺が増やしてばっかな気がする」

「ま、俺は副クラン長だ。クラン長様に命令されたらある程度はやってやるよ」

「命令することなんてそんなにないと思うけど、頼もしいよ」


 ということで、ガイルのお陰でこのクランには皆で助け合うための便利なシステムがまた1つ出来るのだった。


「ちなみにガイル達はまだ王国領進んでないよね?」

「私達は村のクリスタルで帰りました」

「そっか。もっと進んで街に着いたら、王都まで行くのは手伝うよ」

「それはありがたいな」

「またユーマさんと遊べるんですね!」

「今もユーマとは遊んでるだろ」

「そうですけど……」

「メイちゃんがどれくらい強くなったかその時見せてもらうよ」

「はい!」


 随分クランハウスで話し込んでしまったが、元々は誰かに俺が跡を付けられていたという話をガイルとメイちゃんに聞いてもらったのが始まりだった。

 そしてそろそろ俺もそうだし、2人もやることがあるということで、一旦話はここで終わりにする。


「じゃあこの天候の指輪は預かるぞ。良いんだな?」

「うん。あ、出来ればその指輪使う人は、使う時にクランチャットで雨が降るのかどうか書いて欲しいな」

「そういえばそんな効果もあったな。分かった。一応その指輪の説明のとこに、そうするようには書いておく。気付かない奴も居るだろうがな」

「まぁそれは仕方ないね」


 こうしてガイルはそのまま地下へ、メイちゃんは2階の部屋へ行き、俺も2階の自分に割り当てられた部屋に行く。

 ここは商人の小岩さんの部屋でもあるため、好き勝手俺がこの部屋に荷物を置くようなことは勿論しない。


 俺がこの部屋に来たのは何か俺宛のメモが置いてあったりしないか確認したかったからで、机を確認しても何もなさそうだったので、確認後すぐにクランハウスを出た。


「じゃあまた探索に戻るけど良い?」

「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」


 ウル達の許可も得て、クリスタルから王都へと俺達はまた戻る。


「で、次はここに行くのか」


 俺はおやっさんに言われた素材を集めるため、また違うボスの居る場所を目指すのだが、そこには向かう順番まで指定されていた。

 それは何もその順番に倒したらレアな素材が手に入る、みたいな話ではなく、単純に俺達のためを思って考えてくれた順番らしい。

 だから比較的簡単に倒せるものから順番に戦うよう指示されていて、その間に俺達のレベルがいくつか上がれば、最後の敵も倒しやすくなるのだとか。


「じゃあまたさっきの森行くよ」

「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」


 例のごとく俺はウル達の後ろをついて行きながら、また採取のために手袋をつけて次の場所へと向かうのだった。




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