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第160話

「反省したか?」

「ご、ごべんなざい」

「次叫びながら勝手に入ってみろ、もう二度とお前に装備作らねぇからな」


 バズマさんはこの鍛冶屋に叫びながら入っていくと、それ以上の声でバズマさんがおやっさんと呼ぶ人物に怒られ、ボコボコにされていた。


「で、ここに何の用で来た」

「おやっざんに、しょうがいじだい、プレイヤーざまを、連れてぎだ」


 おやっさんにボコボコにされた状況でも、枯れた声で涙を我慢しながら俺のことを紹介してくれる。


「あの、ユーマです。バズマさんには王都に来た時何でも頼ってくれって言ってもらって、さっき冒険者ギルドで困ってたら助けてくれたんです」

「ほぅ、お前にも人助け出来たんだな」

「ひ、ひでぇよ」

「で、ここに来たってことは装備の依頼か?」

「はい。オーダーメイドが出来ると聞いて来ました」

「そうだな。この後予定はあるのか?」

「いえ、俺は特に無いですけど」

「ならバズマは帰れ。こっからは長くなるからな」

「わがっだ」


 おやっさんに帰るよう言われたバズマさんは、入ってきた時とは真逆の静かな様子で帰っていくのだった。


「よし、ユーマは何を作りたいんだ?」

「えっと、全ての装備に装備装飾品を付けたいので、スロット付きの武器と防具が欲しいですね」

「全部か。素材はどうする?」

「一応いくつか使えそうな素材はありますけど、足りないと思うので取ってきます」

「じゃあ素材は全部そっち持ちか。武器は何を作ってほしい? 片手剣1本で良いのか?」

「そうですね。それでお願いします」

「となると……まぁ4〜500万くらいか?」


 俺が王都で見た装備屋だと、店売りの装備が1つ50万だとして、武器と防具全部合わせても250万Gだ。まぁ武器の値段は高い傾向があるから100万Gかかるとしても300万G。バズマさんに紹介してもらっといて言うのもあれだけど……高くないか?


「えっと、あの、ちょっと」

「どうした?」

「あの、ちょっと高いなって思って」

「そうか? 別に普通だけどな」

「一度こちらで作られた商品を見ても良いですか?」

「ん? アイツに何も聞いてねぇのか?」

「バズマさんにはここを紹介されただけですけど……」

「うちはオーダーメイドしかやってねぇから見せる商品なんて無いぞ」

「そうですか……」


 どうしよう、判断材料が無い。

 バズマさんに紹介してもらったは良いものの、本当にここで作ってもらって良いのだろうか。もっと他に良い鍛冶屋があったりするのではないだろうか。


 手持ちは今4000万あるが、また開催されるオークションのために少しでも残しておきたい気持ちはある。

 でも装備は大事だしここで作るべきか? お金の使い所はここだというのは間違いないし。

 とは言っても俺はテイマーだから、最悪ウル達が強ければそれで……




 そして俺はその場で色々考えた結果、バズマさんに紹介してもらったここで装備をお願いすることにした。


「……お願いします」

「まぁ大金だからな。アイツも値段くらい先に言ってやれば良かったのによ」


 俺は本人の前で結構悩んでいたが、なかなか失礼なことをしてしまったなと今になって反省する。


「よし、じゃあ何の素材で作りたいんだ?」

「一応これを使ってもらおうかなって思ってます」


 そう言って出したのは肥大せし大樹の樹皮や枝、堅固なる戦馬の蹄や毛皮といったボス素材に加えて、王都に来る途中倒したモンスター達の素材もいくつか見せる。


「ほぅ、なかなか良い素材持ってるな。お、悪戯フェアリーも倒したのか」

「その感じだと、もしかして素材としては肥大せし大樹とかの素材より、そっちの方が優秀ですか?」

「いや……まぁ、そういうわけじゃないが、そういうわけでもある、か。とにかく最初に言ってた通り、これじゃ足りねぇな」

「……そうですか」

「……正直に言うと今の素材でもそれなりのものは出来るだろうが、お前さんの腕ならもっと良い素材を取って来れるだろう。こっちが指定した素材を取ってくるなら更に強い装備は作ってやれるが、どうする?」


 俺は大事に取っておいたボス素材を使って装備を作ってもらおうとしてたが、このおやっさんが言うには、王都近くのモンスターを倒した方が今よりもっと良い装備が作れるとのこと。

 だから今出したボス素材を使わない方が、素材の相性的にも良い装備が作れるらしい。


「……じゃあ全部今から素材を取ってくるので、強い装備を作って貰って良いですか?」

「あぁ、だが俺から言っておいてなんだが、もうその素材は使わなくていいんだな?」

「はい。その方が装備を強く出来るなら、そうします。この素材は知り合いの誰かに使ってもらいますし」

「そうか。王都に来る前だったら、その素材を使った装備が強かっただろうな」


 今回で分かったことは、装備を作るタイミングが来たらすぐに作るべし、と言うことだ。


 アウロサリバに着いたタイミングでこのボス素材を使った装備を作っていれば良かったが、俺はそこを飛ばして王都に来てしまったため、ボス素材が一番輝くタイミングを逃してしまった。

 俺はウル達が居るから最悪俺の装備なんて弱くてもある程度戦えると思うが、これからはちゃんと装備更新をこまめにしようと思う。


「じゃあ今から素材を言ってくぞ」

「はい」

「まずは……」


 こうして俺は装備を作るためにモンスターを狩ることとなり、おやっさんから言われた必要な素材をメモした後、この鍛冶屋をあとにするのだった。




「じゃあこっから先はしばらくウル達に任せるから、よろしくな?」

「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」


 早速王都の外に出た俺達は、素材を集めるために森の中へと入っていた。

 そして装備が更新されてない俺と、前の2倍以上装備の防御力が上がったウル達という状況のため、モンスターを倒すのは任せて俺は大人しく強化スキルを掛けた後は採取したりして皆の戦闘を見守ることになった。


 勿論攻撃を受けなければ良いだけなので、俺もいつも通り戦闘に加わっても良いのだが、丁度良い機会なので皆の活躍を見守る時間にしたのだ。


「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」

「皆良い感じ」


 魔獣達の装備を更新しただけでこんなにも強くなるとは思ってなかった。 

 特に感じるのは防御力の恩恵だ。

 防御力が上がったことにより皆の戦闘の幅が広がり、ルリは顕著に防御力が戦闘力の引き上げに繋がっている。


(30レベルで装備を2つ付けれるようになったし、ここが魔獣の強くなるタイミングなんだろうな)


「襲いかかってくるモンスターは全部倒しながら、とにかくゆっくり進むよ」

「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」


 俺が居なくてもこの辺りのモンスターは余裕だ。相手のレベルは結構俺達より上だろうに、全然危なげがない。

 これまでタンクのルリの防御力が少し足りてなかったから不安定な部分があったが、これならもう40レベルくらいまで何も心配しなくて良い気がする。


「魔法組も強いしな」


 ウルもエメラもシロも魔法が使えると言うだけで強いのに、ちゃんと魔法使いとしての技術もあって褒め所が多すぎる。


 最近アリスさん達の戦闘を見ていたから余計に思うのかもしれないが、5人パーティーで遠距離攻撃の手段を3人持ってるのは結構強いなと気付いた。

 テイマーは自分の望むモンスターを仲間にしようとすれば出来なくはないが、そもそも理想のモンスターに出会うことが少ないだろう。

 そして魔法持ちのモンスターを狙って仲間にするなんて、魔法を使ってくるモンスターが少ない今の段階だとほぼ不可能だ。進化後に魔法を覚えてくれと願うしか無いだろう。

 そんな中で俺は運良く魔法持ち3人というこのパーティーを組めたことは奇跡に近い。


「やっぱりタマゴはデカいな」


 これから先もタマゴを見つけたら俺はもちろん孵化させるだろうが、タマゴを孵化させる時の俺のレベルが上がれば上がるほど、生まれてくる魔獣は少し弱くなる。

 何故なら孵化させる時の俺と同じレベルで魔獣も生まれてくるため、10レベルや30レベルで進化する魔獣を31レベルで孵化させたら、30レベルまでに習得するはずだった進化前スキルを持っていない状態でその魔獣は生まれてくることになるからだ。


 だから、タマゴはレベルが低い時に孵化させる方が強い。強いのだが……それもほんの少しだけ対策されている。

 何故ならタマゴから孵化させた魔獣を仲間にした時、プレイヤーのレベルが1上がる仕様だからだ。

 キノさんをテイムした時はレベルが上がらなかったので、タマゴを孵化させた場合だけプレイヤーのレベルが上がるというのは、ゲーム側が意図してこういうシステムにしたのだろう。


「でも70レベルとか80レベルになってタマゴを孵化させると、上がり辛いレベルが1だけでも上がるってことでもあるよな」


 俺はそんなテイマーの事や魔獣のことを色々考えながら、手袋をはめて採取をしている。

 戦闘はウル達に任せっきりで、こんなに周りを警戒することなく、全く探索に関係ないことばかり考えながら行う探索は、コネファンでは初めてかもしれない。


「皆強くなったなぁ」


 俺はウル達を見ては採取をし、そしてテイマーや魔獣の事を考え、またウル達を見て採取をするというサイクルで、森の奥にゆっくりと進んでいくのであった。




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