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第158話

「プレイヤー様が王都へ遂に来たか」

「おい、そんなこと言ってないで早く通してあげるぞ」

「そ、そうだな。馬車の中は魔獣のみだった。通って良し!」


 王都の門番さんに声をかけられ止まった後、問題ないということで王都の中へと馬車に乗って入る。


《王都が解放されました》


「デカいなぁ」


 王都の中に入ると、街並みに溶け込む気など一切無い大きなお城が奥の方に(そび)え立ち、あの中には王様やお姫様が居たりするのかもしれないなどと妄想が膨らむ。


 そもそも王国や帝国、連合国としか聞いてないので、それぞれどんな名前の国なのか今思うと全く知らないことに気付くが、ここで活動していたら後々分かるだろう。


「ここかな?」


 この馬車を返すためにも商人ギルドの位置を先に聞いていたため、王都の中を彷徨うこと無く待機所まで着いた。


「ここで良いですか?」

「はい。長旅お疲れ様でした」


 商人ギルドの職員さんとライドホースにお礼を言い、俺達は来る途中で見つけたクリスタルに触れる。


「これでいつでも王都に来れるな」


 このまま帰っても良いのだが、流石に冒険者ギルドを少しだけ見ておきたい。


「でも、また絡まれたりしないかな?」


 アウロサリバで冒険者に絡まれた実績のある俺は、またここでも絡まれないか少し不安だった。

 最前線攻略組のポドルからは、王都に着けばおそらく冒険者から何か言われることもなくなるだろうと聞いてるが、本当かどうかは分からない。


「まぁ絡まれたらその時だな」


 俺はウル達と一緒に王都の大きな冒険者ギルドへと入る。


「おおぉ!! プレイヤー様!!!」

「あ、ど、どうも」

「遂に王都にも来たか!!」


 冒険者ギルドに入ってすぐ、俺は熱烈な歓迎を受けている。

 たった1人の冒険者に、だが。

 この歓迎も、俺だからと言うよりプレイヤーだからというのが正しいな。


「今日着いたのか?」

「はい。さっき来て、冒険者ギルドに寄っていこうと思って」

「分からないことがあれば何でも聞いてくれ!」

「おい、さっき来たって言ってるだろ。あんまり迷惑かけんなよ」

「あ、確かにそうだな。プレイヤー様すまねぇ!!」

「え、あぁ、まぁ全然俺は大丈夫ですよ?」

「大丈夫だってよ!」

「気ぃ遣ってるんだよ! それくらい気付け!」


 歓迎してくれた冒険者には仲間がいるらしく、俺の方こそ仲間の人に気遣ってもらっている。


 そしてこのやり取りでほぼアウロサリバのような絡まれ方はしないだろうと予想できるので、少し安心できた。


「プレイヤー様! 俺達冒険者だから難しいこと分かんねぇけどよ、プレイヤー様も冒険者な事には変わりないからな。いつでも困ったら相談してくれ!」

「お前と俺等を一緒にするな! お前の頭が特別悪いだけだ」

「ひ、ひでぇよ」


 そんな俺を歓迎してくれた冒険者達は依頼があるのかギルドを出ていった。


「名前聞いてないなぁ」


 あれだけ頼ってくれと言われても、名前が分からなければ頼りたくても頼れない。

 まぁプレイヤーに友好的な冒険者が居るというだけでも良い情報が手に入った。


「おぉ、依頼ボードがそもそも大きいな」


 王都の冒険者ギルドなだけあり、これまでとは規模感が違う。

 ただ帝国領のネルメリアと比べると、ギルドの大きさこそここの方が大きいが、冒険者の数を考えると結構同じくらいな気はする。

 やっぱりあの盗賊に似たクロッソさん三兄弟の言う通り、ネルメリアが冒険者の街なだけある。

 話の通りなら帝都は更に冒険者が多いと聞いているため、こうなると少し帝都が気になってくるな。


「いや、こっちも十分凄いよな。俺の良くないとこが出た」


 王都の冒険者ギルドに来てここを褒めるならまだしも、他の街と変わらないかもと言うような感想を抱くくらいなら比較しない方が良い。

 俺は自ら楽しさを半減するような自分の行いを反省しつつ、冒険者ギルドを出た。


「魔獣ギルドも場所は聞いてるし、皆の装備だけ買うか」

「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」


 そして装備を購入した後は、流石に眠気も襲ってきてるのでもう寝ると決める。


「なんか魔獣ギルドが1番凄いな」


 王都の魔術師ギルドや職人ギルドには行ってないが、たぶん魔獣ギルドが1番これまでのギルドと比べて凄い気がする。


 ものすごく広い空間に見たこともない魔獣達、その中でも1番目立っているのは装備をつけたワイバーンの隊列。

 騎士の格好をした人がワイバーンと同じ数いるため、1人につき1体あのワイバーンを従えているのだろう。


「あれは王国のワイバーン部隊だよ」

「そうなんですね」

「あのワイバーン部隊は姫様のところのだね」

「何で見分けるんですか?」

「騎士の恰好さ。マントの色で分かるね」


 あの騎士達をよく見ると、薄い桃色のマントをしているため、おそらくそれが目印なのだろう。


「あの、ちなみにあなたは?」

「ここのギルド職員だよ。プレイヤー様が見えたからここまで来たんだ」

「そうだったんですね」

「ゆっくりしていくと良いよ」

「はい、ありがとうございます」


 職員さんはそう言うとギルドの奥の方へ入っていった。


「ゆっくりしたいけど、装備買ったら寝よう」


名前:赤の首輪(魔獣)

効果:防御力+60、全ステータス+4


名前:赤の腕輪(魔獣)

効果:防御力+60、全ステータス+4


名前:赤のチョーカー(魔獣)

効果:防御力+60、全ステータス+4


名前:赤の足輪(魔獣)

効果:防御力+60、全ステータス+4


 首輪はウル、腕輪はルリ、チョーカーはエメラ、足輪はシロにつけて、とりあえず1つ目の装備の更新は終わった。


「あともう1つずつ装備するってなると、どうしようかなぁ」


 もうこの際ウル達には好きな装備を自分で選んで欲しいが、皆俺が選ぶのを期待しているので決めるしかない。


「じゃあ皆でこれ付けるか」


名前:赤のおまもり(魔獣)

効果:防御力+60、全ステータス+4


 これなら首輪や腕輪をいくつも付ける必要は無いし、今つけてる装備に挟んだりすれば邪魔にもならないはず。


「これでウル達の防御力は120なのか」


 俺も王都で装備更新するつもりだが、俺の防具を全部合わせた防御力の値は100。頑丈値なんかを考え出すと俺の方がウル達よりも硬いのかもしれないが、とにかく今の俺はこれだけしっかり体を防具で覆っているのに、ウル達のアクセサリー2つに負けてしまうような防御力だということ。


「こりゃあ次は探索よりも装備が優先だな」


 王都に着いたら装備更新しようとは思っていたが、魔獣達の防御力より低い装備をつけているとなると、急いで装備を強くしたいと思った。


「帰るか」

「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」


 一応クランチャットで俺は今から寝ることを伝え、王都のクリスタルから北の街の家に帰る。


「なんかゴーさんとグーさんに会うのが久しぶりに感じるな」

「ゴゴ」「ググ」


 俺が居なかったからか、フカさんがゴーさんに渡したであろう新しいデザインのアイスカップと、スイートポテト用の包み紙と箱を見せてくれた。


「すごっ、要望通り皆の顔が描かれてる」

「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」


 そしてゴーさんはベラさんのところにフルーツも卸し始めたらしく、本当に俺が居なくても全部やってくれている。


「もうベラさんのとこで儲けたお金はゴーさんが使って良いよ?」

「ゴゴゴ」

「いや、もう俺は何もしてないし」

「ゴゴゴゴ」


 ゴーさんに預けた50万Gも今どうなっているのかは知らないが、俺としてはゴーさんに使って欲しい思いが強い。

 強いのだが、ゴーさんは頑なに俺にお金を渡すことは譲らない気で、必要分以上は受け取らないつもりらしい。


「分かった。じゃあある程度貯まったらゴーさんから渡してもらえる?」

「ゴゴ」

「ありがとう」


 俺の答えに満足したのか、グーさんを連れてまた家の仕事に戻っていった。


「じゃあ皆ありがとう。久しぶりにこんな長時間遊んだから、次起きてくるのが遅くなるかもだけど、ごめんね」

「クゥ」「アウ」「……!」「コン」


 最後にポドルへ俺が王都に行ってしまったことを報告しておく。

 たぶん帝都は最前線攻略組が解放するだろうけど、王都ももし解放しようとしているのなら、王都解放のアナウンスが無かった場合どこの誰に先を越されたのか気になるはずだ。

 こういうのは先に言っておく方が良い。俺は最前線攻略組が2〜3日はゲームを進めないと知っているし、あっちからするとズルしたように思われる可能性もある。


「あぁ、もう無理だ、寝よ。おやすみ」

「クゥ」「アウ」「……!」「コン」「キノ」


 いつの間にかやって来ていたキノさんにもおやすみを言って俺はログアウトし、カプセルベッドから出ると、そのまますぐベッドへと倒れ込むのだった。




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