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第155話

「いやぁ良かった良かった」

「レ、レ、レベルが2も上がりました!」

「これならふるみさんが1人でレベル上げするよりも効率は良かったと思うし、ちょっとホッとしたよ」


 南の街の外を探索したあとは少しだけダンジョンにも潜って、俺とふるみさんは14階層まで攻略した。


「エメラの拘束もウルの凍結も、敵の体力を半分以上減らさなかったらふるみさんに経験値が入ってるっていうのに気付けて良かった」

「あ、ありがとうございます!」

「いや、俺の方こそ色んな検証に付き合わせちゃってごめんね」


 南の街でモンスターを狩ることにした俺達は、ふるみさんに頼んで俺の検証に付き合ってもらった。


 最初は俺の手加減スキルで体力をギリギリまで削ったモンスターを倒してもらっていたが、何体倒してもふるみさんのレベルが上がりそうな感じではなかった。

 そして次はエメラに敵を拘束してもらい、ふるみさんが一撃で倒せるくらいの体力までモンスターを弱らせたのだが、それも駄目。

 そしてどんどん敵の体力を削らないようにしていき、最終的にふるみさんには敵の体力を半分以上自分で削ってもらうのを試した時、10体くらいふるみさんがモンスターを倒した所でレベルアップした。


 そしてそこから俺は採掘や採取に集中して、敵の体力に気を付けて貰いながらウル達にはふるみさんのサポートをお願いし、ある程度採掘と採取ポイントを回ったあと、ダンジョンへ一緒に行こうと俺から誘った。

 この時はもうふるみさんのレベル上げのためというよりも、本当にさっき検証した経験値の分配システムが間違っていないか俺が知りたかったからという思いが強かった。


 そしてダンジョンでウルの凍結やエメラの拘束により、身動きの取れなくなったモンスターをふるみさんが倒すこと1時間程、レベルアップの表記が視界の上の方に現れ、俺はなんとなく今のコネファンの経験値システムを理解できた。


「レベル差があるプレイヤーとパーティーを組む場合は、レベルの高いプレイヤーが削ってもいい敵の体力は半分までで、敵への拘束と状態異常、プレイヤーへの回復なんかは経験値獲得に与える影響はなし、って感じかな?」

「す、凄いです。こ、こうやって検証されてるんですね」

「いや、コネファンではあんまりこういうことしてないけどね。今回はクランの皆にとって有益な情報だと思ったからやっただけ。本当はここからもっと細かく検証するべきなんだろうけど、これくらいの情報でも十分だと思うから終わりにしよう。ダンジョン武器もいくつか手に入ったし、結果としては大満足だよ」


 そして俺達は探索で獲得した素材を持っていくためにも一度クランハウスへと移動し、クランハウスに着いてからふるみさんとパーティーを解散する。


「あ、あ、ありがとうございました!」

「本当にこっちも良い情報が手に入ったから、お互いにとって良かったよ」


 ふるみさんにはここまで来てもらったがこの後一度ログアウトするらしく、クランに提供してくれる素材を俺に預けてもらって、北の街の自分達の家へと帰るためまたクリスタルの方へと向かって行った。


「お、帰ってきたか。どうだった?」

「色んな情報が手に入ったけど、とりあえずガイルって虫食べれる?」

「あ?」


 この発言により少しだけ俺から距離を取ったガイルに、俺はふるみさんと一緒に行動した時間で手に入れた情報を全て共有するのだった。




「なるほどな。これはなかなか良い情報じゃねぇか?」

「攻略クランは俺達よりもう少し前に気付いてそうだけどね」

「そうか?」

「向こうの検証班って凄いから。第2陣が入ってくる前と後との違いとかも結構見つけてると思うよ」

「まぁ確かにそうかもな。いや、俺はそんなことよりもこの弁当だ。本当にこれ食うのか?」

「食べられないなら誰かにあげて良いよ。というか天候の指輪も渡してるし、ガイルは早く王国領に来てね?」

「確かにそうだな。こっちもそろそろ落ち着いてきたし、誰かとパーティー組んで行くか」


 幸福なる種族はあまりレベルの高い人が居ないため、ガイルやメイちゃんもクラン内で見ると今はレベルの高い部類に入る。

 サキさん率いる攻略パーティーに俺のところまで早く追い付いて欲しい気持ちもあるが、俺としてはガイルやメイちゃんに早く王国領まで来てもらって、そこで手に入る素材を使ったより良い装備を作ってもらいたい気持ちの方が今は強い。

 多分その方が結果的にクランメンバーの助けになると思うし。


「(俺も馬車を使える今のうちに王都まで行く方が良いかな?)」

「どうした?」

「いや、俺も少しだけ王国領を進もうかなって」

「ユーマには結構クランのために時間を使ってもらったしな」

「いや、それはガイルとメイちゃんもでしょ」

「元はと言えば俺とメイが困ってて生まれたクランだ。それに何度も言うが楽しいんだよ。今は工房でメイがアヤとモリに色々教えてるから、ここからはもっと生産職の俺達がクランへ提供できる物資も多くなるはずだ」


 ガイルもメイちゃんもクランを立ち上げる前に培った技術を、クランメンバーへ教えることに全く嫌そうではないし、むしろどんどん広がって行くのが嬉しそうだ。


 そしてこの話を俺とガイルがしている間も、何人かのクランメンバーが俺達に会釈して地下へと入っていく。

 おそらく取ってきた食材系のアイテムをクランのために持ってきてくれたのだろう。


「じゃあちょっと王都目指してみようかな」

「俺も一旦工房行ってから、メンバー集めて王国領前のエリアボス目指すか」


 俺達は第2陣が来てからゲーム内時間で約1日、ほぼクランのために動いていたが、ようやくここで自分の時間を作ることにした。


「じゃあ行ってくるよ」

「おう。俺もボスを倒したら伝えるようにする」

「その報告楽しみにしてるよ」


 俺はふるみさんから預かっていた素材やダンジョン武器をクランハウスへ置いてから出る。

 そしてクランハウスを出た後は、すぐ横の最前線攻略組が今どんな感じなのか少しだけ横目で見つつ、クリスタルまで急ぐのだった。




「ではこちらの馬車をお使い下さい」

「ありがとうございます」


 俺は早速王国領の街アウロサリバへと移動すると、以前商人ギルドの職員さんから言われた馬車を借りに来た。


「もう一度確認なんですけど、この馬車に乗って王都にある商人ギルドの待機所に着いたら、そこへ馬車を返したままで良いんですよね?」

「はい、そのようになっております。一部の街に馬車が集まり過ぎる等の問題が出た場合は、商人ギルドからプレイヤー様へ依頼を出し、馬車を他の場所へ届けていただくことも考えていますので、ユーマ様はこちらのことを気にせずご利用ください」

「なるほど、分かりました。じゃあ行ってきます」


 こうして俺は自分がこの前掃除した待機所から、自分で馬を操作して出る。


「おお、動いた。ウルは走るのに飽きたら乗ってくれ。ルリ達は乗り心地どうだ?」

「クゥ!」「アウ」「……」「コン」


 ウルは楽しそうだけど、他の皆からの返事が少し心配だ。


「ん〜、あんまり乗り心地が良くないか。夢の羊毛で掛け布団と枕を作った時に入れ替えた、前の布団と枕はあるけど、それ敷いてみるか?」

「アウ!」「……!」「コン!」


 ということで待機所を出てすぐに馬車を止め、後ろに乗っているルリ達へ前使っていた布団と枕を渡す。


「それ敷いても無理そうならちょっと考えるから、その時は声かけて」

「アウ」「……!」「コン」


 そしてアウロサリバの街を出る時、これまでは止められることのなかった門番の人に声をかけられる。


「ちょっと止まって。おっ、これが商人ギルドから通達のあったプレイヤー様専用馬車か」

「はい。俺も今初めて使ってます」

「よし、中は魔獣だけだな。大丈夫だと思うがその狼の魔獣を馬車で轢いたりしないよう気をつけるんだぞ」

「分かりました」

「クゥ!」

「王都まで一直線の道を使うなら馬車で半日くらいだろう。とにかく気を付けて行くように。通って良し!」


 こうして俺達は門番さんの許可を得て、街の外へと馬車に乗って出る。


「流石にウルは速いな」

「クゥ!」


 馬車はそこまで速度が出るわけではないので、ウルには前を行ってもらい俺達が馬車でウルを追いかける形だ。


 そして後ろのルリ達を確認すると、掛け布団を下に敷いて馬車の揺れは何とかなっているっぽい。


「なんか凄いな。俺達は馬車で移動して、ウルのことは走らせたり出来るって、今思うとこの自由度は結構凄いことだよな」


 もう現実で出来そうなことはほぼこの世界でも出来ることに俺は感動している。


「あとは馬達の様子も見ておかないと」


 この馬車を動かしているのは、俺が手綱を握っているこの2体のライドホース。

 馬車に乗っている間にライドホースをモンスターに狙われたらどうなるか、ボスを見つけた時この馬車はボスエリアまで入れるのかなど、気になることは色々あるが、今は大人しく大きな道を走らせて安全に王都を目指す。

 馬車を壊してしまったら弁償ということは聞いているため、この馬車を使うにはリスクもあるが、長距離の移動をするのに使わないという選択はないだろう。


「ウルが先行してモンスターがいるか見てくれるのも良いな」


 モンスターに見つかってから戦闘準備をするよりも、先にウルがモンスターを見つけてこっちが戦闘準備の時間を作れるのはやりやすい。


「ウルから声が掛かったらルリ達はすぐモンスターを倒す準備で」

「アウ!」「……!」「コン!」


 こうして俺達は一直線の道で王都を目指しつつ、モンスターへの警戒もしっかりと行いながら馬車を走らせるのだった。




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