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第151話

「まずこの地下の右側は全部装備関係のものを置くことになった」

「へぇ、そんなに置く装備ってある?」

「将来100人もクランメンバーが集まればこれくらいのスペースは必要になるかもな」


 俺は今ガイルにクランハウスの収納場所について説明を受けている。


「で、左側は食材関係を置きたいってよ」

「へぇ……あの、また同じ疑問なんだけど」

「色々やるんだって言ってたぞ。ワインとかなんとか言ってた気がする」

「なるほどね。樽とかがここに敷き詰められる未来があるのか」


 そして1階に戻る。


「一応1階だけ幸福なる種族じゃない奴も通れるようにして、他の場所はうちの奴以外通れないようにしておいたぞ」

「え、そんなこと出来るの?」

「この権利はクランリーダーとサブリーダーだけしか持ってないからな。ちなみにクランハウスへも許可なく入ることは出来ないぞ。誰か入れたいならその都度クランメンバーの許可が必要だ」

「ありがとう、俺だけだったら絶対そんな機能に気付かなかったよ」

「だから1階は貴重なものを置いたりしないように呼びかける」

「了解」

「て言っても奥に調理場があるから、調理道具とか食材は仕方ねぇな」

「まぁそこまで入ってくる人がいたら誰か気づくでしょ」


 このクランハウスには調理場があるが、工房のような施設は残念ながら無い。もしかしたら最前線攻略組のあのクランハウスにはついている可能性はあるが、俺達は西の街にさえ行けば工房があるため、生産職のメンバーにはとにかく西の街まで頑張って欲しい。


「1階は今日クラン会議をした場所が飯を食う場所で、あそこが一番広いな。他に会議室に使えそうな部屋もいくつかあった」

「さっき玄関前の広いスペースで皆立って話してたけど、何にもすることがない時に行ったり、雑談しやすいような空間を作りたいよね」

「まぁ玄関前は広いからな。端っこにテーブルと椅子でも置いて、そのまま雑談スペースにして良いと思うぞ。なんならパーティーメンバー募集中の奴が集まる場所を作ってもいいしな」

「いいね!」


 と言うことでガイルには後で机と椅子の設置の他、パーティーメンバー募集中と書いたボードをどこかに立ててもらって、クランハウスでパーティーを募集してる人が行く場所にしてもらう。


「まぁ1階はそんなもんだな。で、外に出たら裏庭があるんだが、まぁここは何に使っても良い。訓練スペースとして使っても良いし、芝生に寝転がるでも良いと思うぞ」

「ここは流石に耕して畑にはしたくないね」

「裏庭が広過ぎるユーマの家がおかしいんだ」


 そして俺とガイルは2階へ向かう。


「2階と3階はとにかく部屋の数が多い。2階でも15部屋、3階は20部屋ある」

「確かにそうだね」

「3階は完全に個人用の物置兼寝室だな。自分の家を持ってない奴は、ここで寝泊まりしてもらうことにした。まぁ宿屋が使いたい奴はそれでも良いが、物が置けないのはストレスだろうからな」

「了解」

「2階も大体は同じだが、正面のあの部屋はクランリーダーの部屋だ」

「え、あそこが俺の部屋?」

「不満か?」

「別に要らなくない? 俺このクランハウスに居る時間絶対少ないし」

「まぁそれなら商人の……名前は確か小岩だったか? ユーマが使わないなら小岩に普段は使ってもらえば良い。他にも何かのリーダーに任命されたやつは部屋をこの階に持ってもらうことにしたんだが、小岩はユーマと同じ部屋にしておこう。ユーマへの伝言も基本的には小岩に頼むことにする」

「ありがとう。確かに俺に用がある人にとっては部屋がある方がありがたいのか」


 俺自身は必要ないと思ったが、クランメンバーからしたらここに行けば俺に話せると考えると、部屋はやっぱり必要なのかもしれない。


「で、ユーマの部屋の右が俺の部屋なんだが、ポーションも置いておく部屋だ。そして左がメイの部屋で、そっちには錬金素材を置くことになってる。あ、価値の高いものはクランリーダーの部屋に置こうと思ってたんだ、良いか?」

「分かった」


 まぁ俺達には工房があるから、錬金素材はすぐそっちへ集めることになるだろうし、そうなるとメイちゃんの部屋にまた他のものが置かれることになるのだろう。


「こんなとこか?」

「ありがとう。今聞いた感じでたぶん良さそう」

「クランの上限が100人だが、アリス達やユーマは家を持ってて、俺とメイも工房に自分達の部屋がある。だからこのままクランメンバーが100人に増えたとしても、86人がここに住めれば良いわけだ」

「てことは3人ずつくらいで1部屋を使ってくれれば何とかなるかな?」

「まぁそうだな。3人だと部屋は少し狭いが」


 86人が住めるクランハウスなんて普通この段階で買えるわけがないのだが、このクランハウスなら住めてしまいそうなのが凄い。


 まぁ実際は寝泊まりを他所でしてもらって、荷物置きとして部屋を使ってもらうことになりそうだが。


「ちなみにうちと最前線攻略組以外のクランは、他のクランハウスを買ってる?」

「いや、色んなクランが見に来てるらしいが、どこも金がなくてこの辺りのは買えないらしい。うちも最前線攻略組も運が良かったな」


 普通はこんな序盤で買えるようなものではないが、いくつかこのクランハウスを買えるようになるイベントが散りばめられていたのだろう。

 たまたま俺はマルスさんというか、マルスさんと宝石を渡しに行った貴族のおかげで買えたし、最前線攻略組も商人ギルドへ納品とか、ユニークボスを倒したら話が進んだとかで買えたんだろうし、何が影響を与えるか本当に分からない。


「じゃあ説明はこれで終わりだな。どうする? ユーマはまたクランメンバーの面倒を見てくるか?」

「そうしようかな。でもその前に使わない装備とかは地下へ置いてくるよ」

「そうしてくれ」


 俺は地下へ行き、カジノの商品で余っている知力のブレスレットは持ったまま、他の装備は全てここに置いた。


「じゃあクランチャットで誰かに聞くか」


 俺は今手が空いているので、誰かの手伝いをします、とチャットすると、錬金術師のモリさんから連絡が来た。


「え、まだモリさんスー君とユー君の面倒見てるのか」


 俺からモリさんに頼んだのだが、ずっと面倒を見ていて飽きていないか心配になる。


「丁度今クランハウスにいるみたいだし、行くか」

「クゥ」「アウ」「……!」「コン」




「あ、ユーマさんお疲れ様です。今本当に大丈夫ですか?」

「俺は今何もすることがないのでフリーですよ」

「では、スーくんとユーくんにアドバイスをユーマさんから少ししてあげて欲しいです。僕には少し荷が重くて」

「え、モリさんにもアドバイス出来ないことって何ですか?」

「僕達はまだ職業に迷ってて」

「良い職業が分かんないです」

「確かスー君が槍士で、ユー君が短剣士だったよね」

「はい」

「そうです」


 俺は2人の戦いや性格の部分をあまり知らないので、どういった職業に就くのがいいかアドバイスするのは非常に難しい。

 なのでまずは2人の戦いを見てみることにする。


「皆で裏庭に行こっか。あそこならクランハウスの照明で明るいだろうし」

「分かりました」

「はい!」

「僕も行くほうが良いですか?」

「勿論モリさんも来てください。モリさんには2人と少しだけ戦ってもらいますから」

「え、僕が?」


 裏庭に来た俺達は早速スー君とユー君にモリさんと戦ってもらう。


「木剣とかじゃなくて良いですか?」

「プレイヤー同士はそもそも攻撃できないからね」

「あ、確かにそうでした」

「倒す!」

「行きます!」


 こうしてスー君達はモリさんに挑むが、レベル差というのは残酷なもので、錬金術師のモリさんに対して攻撃が掠る気配すらない。


「ちなみにモリさんは戦闘ってあんまり得意じゃないですよね?」

「はい、なので錬金術師を選びましたし」

「これで得意じゃない?」

「僕達ゲームセンスがないですか?」

「あぁ、ごめんごめん。言いたかったのはそういうことじゃなくて、レベルが上がれば戦闘が苦手でもこれだけ動けるよって話。まぁあとは他のゲームの経験値かな」


 スー君達は完全にコネファンが初めてなので、どういうアドバイスをするか悩む。


「一旦これで終わりにしようか。モリさんもありがとうございました」

「いえ、大丈夫です」

「取り敢えずスー君はどんな職業が良いの?」

「色んなモンスターを倒せる職業が良いです」

「近接職が良い?」

「はい!」

「最初に槍を選んだ理由を聞いても良い?」

「リーチが長くて、近接職の中だと安全に攻撃できると思ったから」


 ちゃんと自分の中で考えて、職業は選んでいたのは偉い。


「でも実際にやってみると難しかったでしょ?」

「はい」

「俺のおすすめは片手剣か両手剣かな。スー君には剣士系の職業の方が合ってると思う」

「理由を聞いても良いですか?」

「剣士は近接職の基本だから、教えてくれる人がいっぱいいる。片手剣なら盾を持っても良いし、もう1本剣を持っても良い。両手剣は片手剣より少し攻撃力が高い。まぁ大剣でも良いけど、ちょっと癖があるから最初は両手剣で良いと思う」


 スー君だけではなくユー君もモリさんも真剣に俺の話を聞いている。いや、モリさんはそこまで真剣に聞かなくて良いと思うけど。


「あとは剣士の良いところとして、動きのイメージがしやすいんじゃないかな。槍は強い武器だけど、どうしてもその長さを活かすためには距離感が大事になってくるし、持ち方も特殊で、剣みたいに相手を斬れないからね。剣士なら感覚も掴みやすくて、すぐ自分の手足みたいに使えるようになると思うよ。少なくとも槍よりは俺の経験上上達速度が圧倒的に速いと思う」

「分かりました。俺、剣士になります!」


 俺の説明で納得してくれたようだ。


「僕はどうすれば良いですか?」

「ユー君は結構短剣が合ってそうだったね」

「使いやすかったです」

「もしそのまま短剣を使うなら、俺なら盗賊を選ぶかな」

「どうしてですか?」

「短剣士とか細剣士とかって、剣士のスキルだとちょっと微妙だなって感じる人がするイメージなんだよね」

「良くないんですか?」

「まぁ良いんだけど、盗賊の方が探索で使えるスキルが多いと思うし、余程自分にその武器が合ってない限りは、そういう職業は選ばないんだよね。ゲームに慣れてて自分は短剣だったりレイピアしか使いません! っていう人ならその武器に合った職業を選んで良いと思うけど、初心者には俺はおすすめできないかも」

「なるほど、僕、盗賊にします」


 こうしてモリさんに頼まれたスー君、ユー君の職業選びだが、2人とも初心者ながらに色々考えていたし、モリさんもしっかりと2人のことを真剣に考えていて良い雰囲気だから、早く普通にパーティーを組めるまで2人のレベルが上がらないかなと思うのだった。




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