第148話
「じゃあ次は今日入ったメンバーね。ここは2人一気に紹介しようかな。スー君とユー君」
創設メンバー9人の自己紹介が終わり、ここからは新しいメンバーの紹介になる。
「スーです。職業は槍士です。でも初心者なので後で転生して他の職業にするかもしれません。色々分からないことがあったら皆に聞くのでよろしくお願いします!」
「スーの弟のユーです。職業は短剣士です。僕も初心者なので皆さんに今後助けてもらう事があるかもしれませんが、その時はよろしくお願いします」
2人ともなかなか渋い職業に就いているが、スー君はもう少し派手な職業に、ユー君はこのまま行くとしても盗賊とかの職業に転生しそう。
「次はモリさん」
「はい、モリです。職業は錬金術師です。僕は第2陣で来たプレイヤーではないので、レベルも今25あります。クランに入ったのは一緒に遊ぶ仲間が欲しかったからで、皆さんと一緒にこれから楽しく遊べたら良いなと思っています。ポーションが必要になったら僕に言ってください! これからよろしくお願いします」
モリさんは結局ずっとスー君とユー君の面倒を見てくれてたらしいので、もしかしたらしばらくは初心者組の引率の先生になるかもしれない。まぁ本人は楽しそうだから良いだろう。
「えっと、次は小岩さん」
「小岩です。職業は商人です。ただ、自分は情報屋をしたいと思っているです。戦いは苦手で、これまでやってきたゲームもあまり続かなかったので、今回はクランに入ることが出来てとても嬉しいです。情報屋としてクランに貢献出来るようになるまで時間は掛かるかもしれないですが、精一杯頑張るのでよろしくお願いします……です!」
俺は小岩さんの語尾になっている、ですというのがキャラ付けだと知っているし、今ので皆にもバレただろう。
あと、結構まともな人だというのは感じるので、なんやかんや初めての商人でもクランの助けがあれば楽しんでくれると思う。
「じゃあサキさん」
「はい、創設メンバーのメイの姉、サキです。職業は魔法使いで、弓も使います。クランリーダーであるユーマさんから攻略パーティーをこのクランで組んで良いと言っていただいて、私以外に5人、メイと一緒に勧誘した方々が居ます。勿論その5人もユーマさんの面接を受けているので安心してください。私達は幸福なる種族が攻略クランではないことをしっかりと胸に刻み、皆さんの迷惑にならないよう気を付けて活動しますので、どうかこれからよろしくお願いします」
「えっと、たぶん俺がこのクランは攻略クランじゃないからってことをサキさんに言ったからこんなにかしこまった挨拶になったんだと思うけど、このクランには生産職の人も多いから、攻略パーティーはあった方がみんな的にもやりがいがあって良いと思うので、みんなで協力し合って楽しみましょう」
皆もサキさんに拍手を送っているし、攻略パーティーがあることに不満を持っている人は居なさそうだ。
「じゃあ次の……」
こうして俺達は全員の自己紹介を1時間くらいかけて行うのだった。
「じゃあ全員の紹介は終わったから、何となくこの人は生産職だなとか、戦闘職の人だなとか分かったと思います。で、これからも人が増えていくことを考えて、何人かリーダー的な人を発表したいと思います。少し前に思い付いたことなので、もう勝手に俺の方で今決めますね。じゃ、まずは攻略パーティーをまとめるのはサキさん」
「はい」
「サキさんには攻略パーティーもそうですけど、なんか戦闘職の人の助けが欲しい、みたいな時にクラン員から連絡が来るかもと思っててください」
「分かりました」
サキさんは攻略クランの経験もあるため、色々任せても良さそうだ。もし分からないことがあれば抱え込まず俺に聞いてくれそうだし。
「そして生産職をまとめるのはガイル、って言いたいけどガイルはサブリーダーなので、メイちゃん」
「わ、私ですか?」
「一応創設メンバーなら誰にでも分からないことがあれば聞いてくれて良いんだけど、メイちゃんは今では幸福なる種族の立派な装備装飾品作りのプロですから。鍛冶師とか錬金術師はメイちゃんに色々聞いたら答えてくれると思います」
「が、頑張ります!」
まぁ生産職のリーダーをメイちゃんにしておけば、何か分からない事があった時俺かガイルに色々聞いてくれるだろうし、他の人もメイちゃんなら話しやすいって人も多いと思うから良さそうだ。
「それと、1人しか居ないけど商人のリーダーは小岩さんで」
「わ、分かったです」
「もしかしたら今後このクランの経理とかお願いするかもしれないけど、大丈夫ですか? もしそういうの苦手ならこっちでやりますけど」
「出来ると思うです」
「じゃあ今後クランのお金は小岩さんに預けて、小岩さんの方で色々そのお金を使ってやってもらって。商人ですし元手は必要だと思いますから、事前に言ってくれたら何割かは使ってもらってもいいですし」
「わ、分かったです!」
若干声が上擦っているが、商人はお金があればあるほど色々出来そうだし、是非このクランの商人として頑張ってもらいたい。
「あと、初心者とかこのクランに入ってきた新人さんをモリさんに任せたいんですけど、良いですか?」
「ぼ、僕ですか?」
「モリさんは面倒見が良さそうで、職業も錬金術師なのでポーションとかも作れるし、教えるには良いかなと思うんですけど」
「ぼ、僕で良ければその役目を務めさせていただきます!」
「気楽にで良いですからね。他の人もモリさんの時間を取りすぎるのは注意してください」
モリさんは困った時に抱え込みそうな雰囲気があるから、創設メンバーにも言って注意してもらおう。
「じゃあリーダーはそんな感じで。あ、配信者関係のリーダーはみるくさ……いや、アリスさんで」
「はい! ありがとうございます!」
どうしてもあのうるうるした目を向けられたら、みるくさんと言うことは出来なかった。
「これでリーダーの話は終わりかな。あとこのクランのルールをもう一度確認しておくと、このクランの不利益になるようなことを意図的に行うのはなし、他の人が嫌がることを強制するのもなし、色んな職業の人が居るからお互いにリスペクトし合って助け合いましょう」
「あぁ」「分かりました!」「了解っす」「かしこまりました」……
あとは何か話すことがあっただろうか?
「ユーマ、俺達はまだなんでこんなクランハウスが使えてるのか教えてもらってない」
「あぁ、確かに」
と言うことでこのクランハウスを購入できた経緯や、クランハウスの値段、隣のクランハウスが最前線攻略組のものであることなど、色々説明した。
「あと3つしか一等地のクランハウスは買えないわけだな」
「ガイルさんと話してましたけど、まさか本当にユーマさんが1人でクランハウスを買ってしまうとは思ってませんでした」
「確かにそうだな」
「このクランハウスの中なら皆長時間ログアウトしても大丈夫だから、宿屋に行くのが面倒くさい人はここでログアウトするといいと思う」
そして俺はこのクランハウスでもウル達をパーティーから外したりすることが出来るようになった。
「ユーマ、装備とかの話はしないのか?」
「あ、アヤさんありがとうございます、忘れてました。皆が使わなくなった装備とか、装備に限らず他の人に使って欲しいと思ったものは、このクランハウスのどこかに置いて使ってもらいましょう。これは職業ごとに部屋を決めておいて置くのが1番良いと思うので、右奥の部屋が装備、右手前の部屋がポーション、左奥がモンスター素材とかで、左手前はその他の物置にしますか? いや、すみません、後で配置は考えます」
とにかく皆のために強い装備や使える素材は置いておこうという意識になるのは、クランとしてとても良い。
「もしかしたらまだ伝え忘れてることもあるかもしれないけど、一旦そんな感じで幸福なる種族の第1回クラン会議は終了で。ありがとうございました」
「ありがとうございました!」
「これから頑張ります!」
「一緒にクランハウスの中見て回りません?」
「良いですね、行きましょう!」
皆外が暗くてモンスターを狩りに行けないため、しばらくはこのクランハウスにとどまることになりそうだ。
「良いクランになってきたんじゃないか?」
「そうだね。これからが楽しみだよ」
「第2陣の方々は私達の時と違って初日から夜が来る日なのは可哀想ですね」
「確かにそれはそうかも。ここから3日間毎日夜が来るのはちょっとストレスかもね」
そんな事を話していたらアリスさんから声がかかる。
「ユーマさん、今から面接をしてもらっても良いですか?」
「あ、確かにそうでしたね。ここに呼んでもらえますか?」
「分かりました!」
「俺達も勧誘に行くか。夜は何にもすることないだろうから、クランに入りたい奴はクリスタル前に集まってるだろ」
「そうですね。じゃあ私達行ってきます!」
こうしてアリスさん達の友達の配信者さんを面接したあと、またガイル達の連れて来る人達も面接すると思うと、今日だけでどれだけクランメンバーが増えるのだろうと、少し不安になるのだった。