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第132話

「ここがユーマさんのお家!」

「ゆっくりしてってね。サイさんもくつろいでください。あ、でも俺結構立ち入り許可を色んな人に出してるんで、あんまりサイさんは気が休まらないかもしれないです。ごめんなさい」

「お気遣いありがとうございます」

「(ユーマさん、僕、どうすれば良いですか?)」

「なんでそんなにキプロは緊張してるの?」

「(まさか執事の方が一緒に居るとは思わないじゃないですか!)」


 小声で叫ぶことが出来るなんて、キプロは器用だな。


「キプロさんも改めてこれからよろしくお願いします」

「よ、よろしくお願いします!」

「サイ、ユーマさんに話をしてもらってもいい?」

「かしこまりました」

「話?」


 キプロはハティが自分にさん付けするのに、執事であるサイさんにはハティがさん付けせずに呼んでいるこの状況が、余計にハティが貴族だという事実を見せられて耐えられないのかもな。


 と、そんな考察は置いといて、今はサイさんから話を聞こう。


「ハティお嬢様が北の街へしばらく滞在する許可をいただきましたので、その間ユーマ様の家に寝泊まりさせていただきたいといった話でございます」

「おお、許可もらえたんだ」

「頑張りました!」

「ですのでハティお嬢様のお部屋、そしてなければ大丈夫ですが私の部屋も貸していただけると助かります」

「あぁ、そうなると玄関前の部屋は余ってるからそこにハティで、サイさんには俺の部屋を使ってもらうしかないかな。俺の使ってる寝室は広いし、俺がこの世界に居る時も居ない時も基本的に1人で使えると思うから。ただ、この世界に俺が起きてきた時サイさんが寝てたら起こしちゃうかもだけど」


 そう提案はしたが、少しサイさんは悩んでいる。


「……申し訳ございません。他にハティお嬢様が泊まることの出来る部屋はございませんか?」

「あぁ、確かにサイさん的には護衛し辛いですし、何より玄関は危ないですもんね」

「……すみません」

「サイ! ユーマさん、自分は玄関前の部屋でも良いですよ!」


 もしかしたら俺の家で住むことも、両親にこっちで寝泊まりする許可を貰った条件の1つなのかもしれない。

 ハティの焦り方が、俺にそんなことを言って失礼でしょというような意味合いに加えて、もしここに住めなかったらどうしようという切羽詰まったようなものも見える。


「分かりました。俺の部屋をハティに使ってもらいましょうか。他の部屋より広いですし、リビングのすぐ近くにありますから安全です」

「ユーマ様はどちらで寝られるのですか?」

「最悪俺は布団さえあれば家の中ならどこでも良いんですよね。玄関の部屋に俺が寝るとハティを心配するサイさんと一緒で、たぶんウル達が俺の心配をすると思うんです。だからリビングの端っこに布団敷いて寝ようかなと」

「それなら自分がリビングで寝ます!」

「それはやめてよ。あ、錬金部屋か鍛冶部屋に寝ようかな。そこなら邪魔にならないだろうし良さそう」


 正直俺はこの世界に生きているわけじゃないから、寝心地とか全く関係がない。

 ただ、ハティからすると家主を追い出すのは少し思うところがあるのだろう。


「ハティ、本当に大丈夫だから。俺がこの世界で寝てる時はそもそもこっちの意識がないし、今はそうするだけで後々どうするかはこっちで考えるよ」

「……分かりました。ユーマさんありがとうございます」

「ありがとうございます」

「じゃあサイさんは玄関の部屋で大丈夫ですか?」

「はい、ありがたく使わせていただきます」

「そうすると玄関前の部屋に飾ってある写真を廊下に飾り直して貰えると助かります」

「かしこまりました」


 ということで寝室のものをインベントリへと片付けたが、丁度良いし夢の羊毛を使った布団をこのまま作ってもらいに行く。


「じゃあ立ち入り許可は2人とももらってると思いますし、自由に使ってください。この家にはモニカさんとモルガっていう女性2人も住んでるので、もし帰ってきたら挨拶とかしてください」

「分かりました!」

「じゃあキプロもお店があるだろうし、一緒に出ますね」


 そうハティとサイさんに言って、キプロを連れて俺達は家を出る。


「ユーマさんはなんで貴族の方と普通に話せてるんですか!」

「まぁ慣れかな? なんなら最初はハティに騙されたようなものだったし、ハティが貴族って感覚は薄いかも」

「え?」

「まぁこれはもう終わったことだから、今のハティを見てあげて。ハティにも色々あったんだよ」

「そうなんですね」

「あ、そういえばなんでキプロはうちにご飯食べに来なかったの?」

「ユーマさん達と話したら寂しい気持ちが小さくなって、朝の訓練にも早く顔を出したくて鍛冶を頑張ってました」

「そっかそっか、それなら良かった。朝も晩も来ていいからね。昼は誰も居ないことが多いと思うからお勧めできないけど」


 こうして話しながら俺達はキプロの店に着く。


「じゃあまたね」

「はい!」

「あ、オススメの布団屋さん? いや、家具屋さんかな? オーダーメイドで布団を作ってくれるお店とか知らない?」

「そうですね……、西の街にはありますよ」

「お、そうなんだ、じゃあそこに行ってみるよ。教えてくれてありがとう」

「はい、ではまた!」


 キプロと別れ、早速俺達は今教えてもらったお店に行くため西の街まで移動する。


「カジノ通りではないって言ってたよな」


 西の街にはほぼカジノかマルスさんに宝石の加工をしてもらうため来てるので、なかなか他の場所に行く機会はない。


「あ、この家具屋さんがキプロの言ってた店かな」


 カジノ通りとは違い、ここは静かで色んな雑貨や家具を売っているお店が多い。


「いらっしゃい、プレイヤー様は何をお探しで?」

「この夢の羊毛を使った布団を作ってほしくて」

「こりゃ珍しいね」

「たぶんこの夢の羊毛って寝具以外使わないですよね?」

「そうだね。それ以外の使い道はあまりないかもねぇ」

「じゃああるだけ全部布団にしちゃってください」

「5つ、いや、6つくらいは余裕で作れるけど」

「じゃあ5つでお願いします」

「デザインは?」

「2つは暗めの色で、3つは明るめの色でお願いします」

「はいよ、昼前にはできてるよ」


 たぶんそれくらいの時間に俺は寝る気がするので丁度良い。


「じゃあまた取りに来ます」

「枕も作っとくからね」

「あ、じゃあ1つだけ大きい布団と枕に出来たらして欲しいです。羊毛足りそうですか?」

「それで丁度くらいだね」

「じゃあお願いします」

「はいよ」


 こうして気になっていた夢の羊毛で作られた布団を、俺も手に入れることが出来る。


「この辺に色々売ってるし食器とかも買い足すか」


 家に人が増えたため、この機会に色々な雑貨も買い足していく。


「ん? あれ、あの羊ってもしかして」


 俺は少し遠くにいた、羊の魔獣を連れているプレイヤーらしき人に声をかける。


「こんにちは、もしかしてしーちゃんの飼い主さんですか?」

「ウル君の飼い主さん? 久しぶり!」


 この人とは一度魔獣ギルドで話し合ったのに、飼い主の名前をお互いに伝えていなかったため魔獣の名前しか分からない。


「す、すごい。随分と魔獣がいっぱい居るんだね」

「そうですね。しーちゃんは1人ですか?」

「タマゴをもらえるイベントが来たら頑張るけど、そういうのがなかったからずっとしーちゃんだけかな」

「そうですか、ちなみに俺も全部タマゴからです」

「えぇ!」

「でも結構強いモンスターを倒した後にタマゴは貰えたんで、手に入れるのは難しいと思います」

「そっかぁ、でもそろそろ僕はタマゴが貰えるイベントが来ると思うな」


 確かにそれはそうかもしれない。最初の1体だけでそれ以降テイムしていない人はいっぱい居るだろうし。


「あの、とりあえずお互いに名前を知りたくないですか?」

「確かに、僕はペルタ」

「俺はユーマです。あと、ウル以外にはルリ、エメラ、シロですね」

「アウ」「……!」「コン」

「ユーマみたいにいっぱい魔獣がいるプレイヤーは少ないからね」

「まぁあんまり見たことはないですね」

「角ウサギしか魔獣に居ない、ウサギマスターが1番テイマーの中だと有名かな?」

「へぇ、そんな人が居るんですね」

「結構強いらしいよ。まぁこれもクランメンバーから聞いた話だけどね」

「あ、クランに入ってるんですか?」

「皆で頑張って楽しもうっていうのんびりクランにね」


 やっぱりクランに入ってる人は思った以上に多いな。


「それにしても随分大きくなったね」

「あ、ウルですか? 10レベルで大きくなって、さらにその後もう1回進化してこの身体になりました」

「しーちゃんは10レベルで進化してそのままだけど、それでも大きいよね」

「やっぱり防御力が高いんですか?」

「そうだね、たぶん他のモンスターよりも防御力はあるけど、その分攻撃力はないかも」

「ウルは攻撃力と敏捷性が高いですね。耐久力はないんで前を張らせることはあんまりしないですけど」

「しーちゃんが今後攻撃スキルとか攻撃魔法を覚えてくれたら良いけど、たぶん防御力が上がっていくんだろうなぁ」


 そういえば他のテイマーの魔獣はどんなスキルを持っているのだろう。


「しーちゃんが進化してスキルは増えましたか?」

「増えたけどパッシブスキルだから、なにか出来るようになったりはしなかったかな」

「そうなんですね」

「能力の詳細は分からないけど、たぶん耐久力が上がるスキルだからしーちゃんには合ってるね」


 と、色々ペルタさんと話していたら、俺達が少し通行人の邪魔になっていることに気付いた。


「一度カジノ通りの近くで軽くご飯でも食べます?」

「そうだね」


 ということで俺とペルタさんはカジノ通りへ魔獣達を連れて歩くのだが、魔獣が多くて珍しいのか、お店に入るまで色々な人に見られながら歩くことになるのだった。




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