第131話
「長いな」
「クゥ」「ググ」
俺とウルとグーさんは、他の3人がコルクアントの巣穴から帰ってくるのを待っている。
「まぁもうこの辺のモンスターは倒しただろうし、ちょっとだけグーさんの性能を確認しても良い?」
「ググ」
「じゃあまずはグーさんはゴーさんと同じことが出来る?」
「グググ」
「出来ないのか。ほとんど同じことは出来る?」
「ググ」
「なるほど。1人で買い物には行けないけど、それ以外だとなんだろな。料理ができないとか?」
「ググ!」
「おお! 1回で当てれた。じゃあそれ以外は大体グーさんも出来るんだ」
「ググ」
ゴーさんがどこまで調整できるのかは知らないけど、自分の趣味である料理をグーさんができないようにもし作ったのなら、凄く人間臭くて良いなと思ってしまった。
あれだけ普段俺達のために動いてくれるゴーさんが、自分の趣味を見つけてそれを大事にしていると考えると本当に嬉しい。
まぁ俺が勝手に思ってるだけでそうじゃない可能性も全然あるけど。
「グーさんは外に出るの好き?」
「ググ」
「モンスターを狩るのは?」
「ググ」
「家で居るのは?」
「ググ」
「……自分の仕事が減るのは?」
「ググググ」
あぁゴーさん、グーさんは第2のゴーさんなんだね。
「そ、そっか。まぁゴーさんと2人で手分けして頑張ってくれたらうれしいよ」
「ググ」
《ウルのレベルが上がりました》
《ルリのレベルが上がりました》
《エメラのレベルが上がりました》
《シロのレベルが上がりました》
「アウ!」「……!」「コン!」
「お、帰ってきたな」
これで俺以外の皆のレベルが上がったが、30を超えると更にレベルの上がり辛さを感じる。
「たぶん今回の若いトレントとコルクアントのレベルは俺達より数レベル高かったと思うし、ビッグ・ビーの時みたいに2レベルくらい上がっても良い状況だったんだけど、やっぱりコネファンはレベルが全然上がらないって思ってた方が良いな」
「クゥ」「アウ」「……!」「コン」
ということで早速ステータスを見せてもらう。
名前:ウル
レベル:31
種族:アイシクルウルフ
パーティー:ユーマ、ウル、ルリ、エメラ、シロ、グーさん
スキル:勤勉、成長、インベントリ、『アイシクルウルフ』『氷魔法』
装備品:黒の首輪(魔獣)
名前:ルリ
レベル:31
種族:巨人
パーティー:ユーマ、ウル、ルリ、エメラ、シロ、グーさん
スキル:忍耐、超回復、成長、インベントリ、『巨人2』
装備品:黒の腕輪(魔獣)、銀の手斧(魔獣)、銀の小盾(魔獣)
名前:エメラ
レベル:31
種族:大樹の精霊
パーティー:ユーマ、ウル、ルリ、エメラ、シロ、グーさん
スキル:支配、成長、インベントリ、『大樹の精霊』『樹魔法』
装備品:黒のチョーカー(魔獣)
名前:シロ
レベル:31
種族:善狐
パーティー:ユーマ、ウル、ルリ、エメラ、シロ、グーさん
スキル:聡明、成長、インベントリ、『善狐』『水魔法』
装備品:黒の足輪(魔獣)
「よし、皆ちゃんと31レベルになってるな」
「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」
「ちょっと待って。一応インベントリの中を確認するから」
今回もビッグ・ビーの時のように女王アリが居たはずなので、何を落としたか見ておきたい。
名前:天候の指輪 (コルククイーンアント)
効果:天気予報、植物系モンスター特効
ドロップ品:特定のモンスターから低確率で手に入る指輪。24時間後までの天気が分かり、ドロップしたモンスターによって、もう1つの効果を得る。
「なんかまた変なの手に入れたな」
そして今回思ったのは、特定のモンスターから低確率で手に入る、と書いてある装備は大体同じような種類のモンスターから手に入るという話なのかもしれないということだ。
「幸運の指輪は幸運値上昇、天気の指輪は天気予報が出来て、あと1つの能力はモンスターによって変わる。これは他の種類の女王蜂モンスターを倒したら幸運の指輪が出て、女王蟻のモンスターを倒したら天気の指輪が出るということなのでは?」
そうなるとちょっとハニー・ビーを倒して検証してみたい気持ちはある。
「まぁもし倒すとしてもこの前ハチミツまで貰って仲良くなったハニー・ビーは倒さないでおこうかな」
とりあえず天気の指輪はインベントリにしまって、次にやることを皆へ共有する。
「じゃあ今回で依頼分は倒せたし、最後の調査依頼に行くか」
「クゥ」「アウ」「……!」「コン」「ググ」
ということで俺達は調査依頼を進めるために現場へと向かう。
「あった。たぶんあれが調査依頼の内容にあった謎のくぼみだろうけど、なんか多いな」
くぼみというよりいくつもの穴が空いている。
「お、モグラ?」
襲いかかってくる訳でもないのに、地面に出てくるとは思わなかった。
「穴の正体は、えっと……ノコギリモグラの仕業だったのか」
一応穴が出来た理由はノコギリモグラだということは分かった。
「でも大体調査依頼はこっからだよな」
なぜノコギリモグラが地面にでてきてるのか、そしてなぜあんなに穴ができてるのか、これを調べたい。
「ん? なんかあっちにもくぼみがあるな」
もう少し奥には、こっちとは違ってちゃんとしたくぼみがある。
「あれ、謎のくぼみってあっちか?」
近くで見てみると、さっきのいくつも穴があったくぼみと呼んで良いのか分からないようなものではなく、しっかりと大きなくぼみがこちらにはあった。
「あ、コルクアント」
1体のコルクアントがそのくぼみへと足を踏み入れると、くぼみの中から土が吹き出てどんどんコルクアントが下へと落ちていく。
「うわぁ、これたぶんアリジゴクだな」
アリジゴクの姿を見ることは出来なかったが、中を覗いてもさっきまで居たコルクアントの姿は見えなかった。
「一応倒しとくか。シロとウルに任せても良い?」
「クゥ!」「コン!」
シロが水魔法を使い、地上に出てきたアリジゴクをウルが氷魔法でトドメを刺す。
「一瞬しか見えなかったけど、なんかヤバそうな牙持ってたな」
ウルが倒す直前にあいつがパラライズアリジゴクという名前なのは確認できた。
「パラライズアリジゴクってことは麻痺だろうな。まぁお前にはこの辺にいっぱいアリのモンスターが居たし、ここはパラダイスだったかもな! なんて、ハハハ、はは……はぁ、何言ってるんだろ俺は」
サポーターのバンさんが言いそうなことを思いついて言ってみたが、ここは動画になってても絶対カットしよう。
「うん、帰ろっか」
「クゥ」「アウ」「……!」「コン」「ググ」
俺は魔獣達にオヤジギャグが伝わらなくて、本当に良かったと心から思った。
「お疲れ様でした」
魔獣ギルドで討伐依頼の達成報告をした後、冒険者ギルドで納品依頼の報告を終わらせて、今は調査依頼の報告をしている。
「……てことでパラライズアリジゴクってモンスターが原因だったようです」
「なるほど、あまりそのあたりで見られるようなモンスターではないため、報告してくれた方はくぼみの原因が分からなかったのでしょう」
「そうなんですね。あと近くにノコギリモグラの穴が大量にあったんで、最初はそっちが謎のくぼみかと思いました」
「なぜノコギリモグラだと?」
「地面に出てきてたんで」
「? それは何か獲物を見つけてノコギリモグラが出てきた様子でしたか?」
「いや、何もなかったですけど外に出てましたね」
「パラライズアリジゴクの存在によって、少し生態系が崩れている可能性がありますね。しばらく警戒しないといけないかもしれません」
ということで調査依頼の報酬として5万Gもらい、今回の依頼を終えた。
「さて、どうしよう」
俺としては今回の依頼を受けて、やっぱりガッツリと討伐系の依頼をするのは楽しいなと思ったんだが、まぁ今日はここまでかな。
「一旦グーさんはゴーさんに返そう」
「ググ」
最初はグーさんが何が出来るのかを調べたくて色々やってたが、この討伐依頼にもパーティーメンバーとして普通に連れてきてしまった。
「結構採取してくれたね。ありがとう」
「ググ」
薬草をはじめ、水晶や翡翠などの石、食べられない実や葉っぱという、俺には何に使うか分からない錬金素材を取ってきてくれた。
「あ、ゴーさん」
「ゴゴ」
俺達が家に帰ってくると、ゴーさんは畑の世話をしていた。
「グーさんと探索に行ったけど、色んな物を集めてくれて凄い活躍してくれたよ」
「ゴゴ」
「またお願いするかも。今日はありがとうグーさん」
「ググ」
「ゴゴ」
相変わらず仕事熱心なゴーレム達だ。もう俺は畑を自分だけでいじることは無いのだろう。
「あ、そう言えば夢の羊毛をまだ使ってないな」
サポーターのルーロさんが言うには寝具としてとても人気だと聞いてるし、ちょっと職人ギルドに行って作ってもらうか。
「でも北の街の職人ギルドでいいのかな?」
どの街の職人ギルドなら良い寝具を作ってくれるのかと考えていると、家の外から俺のことを呼ぶ声が聞こえる。
「あ、俺が出るよ」
「ゴゴ」「ググ」
ゴーさん達を制止して俺が出る。
「はーい、どなたですか?」
そう言って扉を開けると、笑顔でこちらを見るハティとその後ろにいつも通り居るサイさん、そして緊張した表情でどこか俺に助けを求めるような視線を向けてくるキプロが立っていた。