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第129話

「まぁ全員残るよね」

「ユーマっちのクラン楽しそう」

「僕はアヤりんが居てよかったっす」

「あたいはこんな設備が整った場所を使えるようになるなら、多少変なクランでも入ってただろうね」

「わたくしは皆様と一緒に入ることが出来たらと思っていたので、とても嬉しいですわ」

「うち、本当にユーマさんのクランに入れる!」

「まだ私達全員が入れるって決まったわけじゃないでしょ」


 いや、もう全員入ってもらって良いと俺は思ってます。


「う、うん、じゃあうちのクランのサブリーダー、ガイルにも話をしてもらおうかな?」

「あっ? お、俺?」

「サブリーダー! うちはアリスです。絶対に幸福なる種族の皆様の力になります!」

「あ、あぁ」

「ガイルから何かない? サブリーダーだからガイルの名前を呼んだけど、メイちゃんも言いたいことあったら言っていいよ」

「じゃ、じゃあ私からひとつだけ」

「お、なんだろう?」


 メイちゃんに話は振ったが、まさか話してくれるとは思わなかった。


「たぶん、私達のクランはユーマさんが物凄く凄くて、めちゃくちゃ凄くて、本当に凄いんです」

「おお! うちもそう思っていましたが、メーちゃんさんもそう思いますか!」

「はい。でも、ユーマさんがやりたいことに全部従うだけのクランじゃたぶん駄目で、もっと自由に活動するのがユーマさんが望んでることなんじゃないかなって」

「私はあまりメイのことを知らないけど、メイは何か個人で活動しているの?」

「いえ、そうじゃないです。むしろガイルさんにもユーマさんにも助けられてばっかりで」

「そうなのね」

「でも、ユーマさんもガイルさんも私のお手伝いとか、私がコネファンを今以上に楽しめるようにしてくれたり、凄く優しいんです。そして私のお手伝いをしてくれてる時が、勘違いだったら恥ずかしいですけど、2人ともなんだか楽しそうで、余計に頼っちゃうんですよね。だから、迷惑はあんまりかけたくないですけど、遠慮するよりは色々頼る方が皆が楽しくなるのかなって。そ、それだけです!」


 そう言ってメイちゃんは黙ってしまった。


「まぁ恥ずかしい話、頼られるのは俺も嬉しいかな。ただ頼られるだけじゃなくて、一緒に何か成長していく感覚があると楽しいのかも。俺は色んな素材をガイルとメイちゃんに渡して、次会う時はどうなってるのかなって楽しみだったし。現にガイル曰く今俺達のクランが装備では最先端らしいからね」

「そ、そうなのか? クランに入ったらあたいにも教えて欲しい!」

「あと、メイちゃんは自分ばっかり助けられたって言ってたけど、俺もメイちゃんにゴーレムを作ってもらったから。それにガイルは俺がコネファンの中で出来た初めてのフレンドで、一番最初お金が無かった時に、良い短剣を売ってくれたんだよ」

「店売りの方が良いって言ったがな」

「そういう気遣いも含めて俺達は結構助け合ってきたから。あとガイルはメイちゃんにコネファンの遊び方を教えてるだけでも十分でしょ? 初心者のメイちゃんがここまで出来るようになったのは、ほぼガイルのおかげでしょ」

「……」


 そう俺が言うと、メイちゃんだけでなくガイルも黙ってしまった。


「なるほど、私は今の話を聞いて余計に入りたくなった」

「もぐるも」

「僕もっす!」

「わたくしもです」

「あたいもだな」

「うちは最初からずっと入りたいです!」


 そう言ってくれるなら皆に入ってもらうか。


「じゃあここにいる全員、クラン『幸福なる種族』へ加入ってことで! 皆これからよろしく」

「うち、ゔぢ、ゆーまざんど、おなじぐらんにぃ、ゔぅぅ」

「泣いちゃった」

「まぁアリスは長いからね。泣いちゃうのも仕方ないかも」


 しばらくアリスさんが泣いていたが、このあと帝国領前のボスを倒しに行く予定があるということで、すぐ皆は出ていった。


「一気に6人増えたな」

「しかも全員配信者だぞ」

「私夢みたいです!」

「まだ他の配信者にここを紹介するみたいなこと言ってなかったか?」

「アリスさん達の家にまだ4人以上は女性配信者が住んでるって聞いた」

「ってことは後4人は少なくとも面接に来るのか」

「それは分からないけどね。他のクランに入ってる人もいるかもしれないし」


 とにかくこれでクランメンバーは9人、クランとしての人数はまだまだ少ないけど、ちょっとクランらしくなってきた。


「これ、第2陣のプレイヤーはどう誘う? 配信者が居るってなったらそれ目当てで入りたい奴が絶対出てくるぞ」

「まぁそこは追々考えよう。最悪ウル達に面接してもらって」

「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」

「それは厳しい面接だな」

「でしょ?」

「私も配信者になる方が良いですかね?」

「まぁコネファンが出来てるならアカウントさえ作ればいつでも配信は出来るしな。こんな機会二度とないだろうし、やってみたら良いんじゃないか?」

「そういうガイルは?」

「俺は……俺も始めてみるか?」


 ガイルはこういうのをあまりしないタイプに見えたが、皆やってるならということで配信を始める腰も軽くなったか。


「そうなると幸福なる種族は全員配信者になるね」

「ユーマは違うだろ」

「配信も過去にしたことはあるよ。ただ、最前線攻略組はいつも配信してたら全部の攻略を見せることになるから、動画にしないと駄目だったんだよね」

「なるほどな」

「今も珍しいことが結構起きてるし、配信してると全部知られちゃうのはちょっと嫌かな」

「まぁそれもそうか。とにかくここは各々好きにやれば良いクランだしな」


 ガイル達と話していると、随分長い時間ここに居たことに気付く。


「じゃあ俺はこの辺で」

「おう」

「また!」


 こうして俺は本日何度目かの工房をあとにする。


「第2陣が来たら行けなくなるだろうし、一旦グーさん連れて東の街にでも行ってみるか? 焼き魚じゃなくて生魚もゴーさんは欲しいだろうし」

「クゥ」「アウ」「……!」「コン」


 というわけで一度ゴーさんにグーさんを貸してもらうため、家へと帰ってきた。


「グーさん連れてって良い? もうグーさんに色々説明とか終わった?」

「ゴゴ」

「ありがとう、じゃあグーさん貸してもらうね」

「ゴゴ」

「行こっかグーさん」

「ググ」


 こうしてグーさんを連れ出すが、外から見ても俺かゴーさんの近くに居ないとグーさんが動けないとは分からないだろう。

 俺達の護衛をグーさんがしているような感じに見えるが、本当は俺の近くに居ないと動けないだけだし、そもそももっと離れててもグーさんは大丈夫なのだが、出来るだけ近い距離に居ようとするのは可愛い。


「よし、グーさんもクリスタル使えたな」

「ググ」


 パーティメンバーにグーさんを入れることは出来たが、ステータスは見れない。


「ゴーさんと違ってパーティーに入れることはできたけど、やっぱりグーさんのステータスは見れないや」

「ググ」


 まぁそれはいい。とにかく俺はグーさんが作られる時に使われた心得本の効果があるのかを知りたかった。


「グーさん、まずは釣りをしようか」

「ググ」


 東の街に来たのだが、前に来た時より人が少ない。もっと奥の方に良い釣りポイントがあるのか、前はこの辺で釣りをしていた人が多かったのに、もう今はほぼ居ない。


「じゃあグーさんお願いね」

「ググ!」


 グーさんは初めてだろうに、慣れた様子で釣りを始める。


「ググ」

「え、もう?」

「ググ」

「また?」

「ググ」

「分かったもう良いありがとう」

「ググ」


 どうやら釣りの心得本の効果はちゃんとグーさんにあるらしい。


「てことは採掘も採石も採取も、グーさんを連れていけば解決するのか」

「ググ」

「となると俺は今サポーターをパーティーメンバーとして入れてるような感じなのかな」


 あとはグーさんの戦闘能力も見ておきたいが、折角なら冒険者ギルドで依頼は受けておきたい。


「お、あった」


 俺は前と同じく常設依頼のゴミ拾いの依頼を受けて、モニカさんが住んでいた小屋の方向へと進み海岸沿いを歩く。


「ググ」

「普通に強いし、この辺の相手だと余裕だな」

「ググ」


 ゴーさんが生み出してしまったこのグーさんというゴーレムは、一体どこまで出来てしまうんだろう。


「よし、街まで帰るか」

「クゥ」「アウ」「……!」「コン」「ググ」


 そしてまた冒険者ギルドへと帰ってきたのだが、依頼達成のために窓口へ行くと、あっちから声をかけられる。


「以前ゴミ拾いをしてくれた方ですよね?」

「え、はい、そうですけど」

「あの時はありがとうございました。今回もゴミ拾いをしていただいて」

「いえ、俺は依頼をしただけで」

「最近は遠くへ釣りをされに行かれる方が多いので、ついでにゴミ拾いの依頼を受けてくださる方も多くなりました」

「あ、そうなんですね。それは良かったです」


 前はモニカさんを待たせたらいけないと思って、話もあんまり聞かずにすぐ出てしまったから、今回はその時の反省も込めて話を聞くことにする。


「いやぁ、プレイヤー様にゴミ拾いを受けてもらえて、冒険者ギルドとしてはこのような依頼を出していて良かったと思います」

「まぁこの街に住んでる人がゴミを捨てなくても、違う場所から流れてくるゴミもありますからね」

「そうなんですよ! なのでこの街でゴミを捨てないように呼びかけることも必要ですが、その呼びかけで全員がゴミを道や海に捨てなくなったとしても、海岸沿いにあるゴミを集めてもらうこの依頼を取り下げることなど出来ないのです!」

「そ、そうですよね」


 こうして俺は東の街の冒険者ギルドで、窓口の方からゴミについての話を次の依頼達成の冒険者が来るまで続けるのだった。


 


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