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第128話

「お、お邪魔します!」

「意外と広い」

「ユーマっちこんな場所持ってるんだ」

「僕はこういう場所好きっすね」

「わたくしもあまりしっかりとこういう場所に来ることはないので、新鮮です」

「あたいは羨ましいな。こんなに設備が整ってる場所で作りたいぜ」


 先ほどアリスさんから連絡があり、今からどこかで話がしたいということだったので、西の街のカジノ裏通りにある、今現在工房だけでなくクランハウスとしても使用してる、クランの工房へとクリスタルから皆を案内してきた。


「ガイルとメイちゃんもありがとう」

「いや、ここは一応今はクランハウスだからな」

「今日はユーマさんにいっぱい会えて私もガイルさんも嬉しいです」

「俺も付け足すな」

「ガイルさんは嬉しくないんですか?」

「そう言われたら答え辛いだろ、こういう時は何も聞くな。ほら、俺らはあっち行くぞ」


 ガイルとメイちゃんは俺が面接をここで行った時のように、端っこの方で座ってくれる。


「じゃあアリスさん達の話を聞いてもいいですか?」

「は、はい。あああの、うちの、あの、チャンネルで、その」

「私が代わりに言うわ」

「じゃあみるくさんお願いします」

「うぅ、みーちゃんありがとう」


 ということでみるくさんに話を聞くと、さっきボス前でアリスさんが急に現れた俺の名前を連呼しながら俺へと詰め寄ったシーンについて、リスナーに向けた説明を行ったらしい。


「配信してない時も私の方でいつも動画は回してて、その動画をアリスのチャンネルで流すことにしたの」

「はぁ」

「AIにユーマの話題が出たところをピックアップしてもらって、全部アリスのチャンネルで動画を出すつもり」

「な、なるほど?」

「何年も前のは無理だけど、ユーマに会う前からアリスがユーマの動画を見てたってことが分かればそれでいいからね」


 そう言ってみるくさんはアリスの方を見る。


「アリスは自分がプライベートで私達にユーマのことを話してたのがリスナーにバレるわけだけど、その代わりにユーマとは何もこれまで関わりがなかったことは証明される。ユーマもついこの間まで私達と関わりがなかったって証明されるし良いでしょ?」

「はい」

「ただ、この件でアリスの配信を見なくなる人もいるでしょう。でも別に彼氏が居たら駄目とか、男性と話したら駄目とか、そういうのでアリスはやってこなかったでしょ? だから私の予想だとそこまでリスナーが離れることはないと思う。まぁしばらくはコメントを荒らされると思うけどね」

「うちは、どうなっても良い。けど、これでユーマさんに迷惑をかけるのが1番自分を許せなくて。もちろん皆にも迷惑かけちゃって」


 アリスさんは自分のことを責めているが、他のメンバーはそこまで何も思ってなさそうだ。


「あたいらは昔からアリスにユーマのこと聞いてたからな」

「僕もアリりんが悪いことしたわけじゃないし、全然何も問題ないっす」

「元はと言えばわたくしがユーマ様に配信をしているとお話していれば、皆様にユーマ様が来ると話していれば良かった話です。そして、少し視聴者様の前でアリス様が暴走してしまいましたが、この場にいる誰かを傷つけたわけではありませんから」

「もぐるは皆と遊びたい。それだけ」

「まぁそういうことだから、ユーマは今回の件これで許してくれる?」

「俺はそこまでしてくれて助かるよ。あと、俺も迷惑かけて申し訳ない」

「たぶんユーマの動画のコメントも少し荒れるかもしれないから、それだけ気をつけてね」

「あぁ、心配してくれてありがとう」


 正直今回はアリスさんが俺にすごい勢いで色んなことを話しながらめちゃくちゃ詰め寄って来ただけで、リスナーさんが俺とアリスさん達の関係を知っていたら何の問題がない話だった。

 女性配信者さんって色々難しいんだろうなという感想しかない俺は、これからアリスさん達と関わる時、俺も気を付ける努力をしようと、そう思いながら扉まで行く。


「じゃあ色々ありがとう」


 ということでアリスさん達との話し合いはこれで終わりかと思ったのだが、


「じゃあユーマ、次はユーマのクランの話について私達は聞きたいの」

「え?」

「ほら言っただろ?」

「ガイルさんの言う通りでしたね」


 ガイルとメイちゃんが端の方で楽しげに話しているが、今はそれどころではない。


「えっと、なんで?」

「興味あるから、ね?」

「うん」

「うっす」

「そうです」

「あぁ」

「はい!」


 いつの間にかアリスさんも元気を取り戻してるし。


「俺達のクランって、俺とガイルとメイちゃんの3人だけだよ?」

「あの、私ユーマさんの「アリスはちょっと黙ってて」はぃ」

「あはは、」

「私達はここに居る6人以外にも一緒にあの家に住んでるって言ったでしょ?」

「あぁ、それは聞いたけど」

「皆それぞれ自由にやってるし、今この6人が一緒にパーティーを組んでるのも王国と帝国に行きたかったからで、ボスを倒した後は解散して他の人と組むことになる可能性は高いの。勿論組むのはあの家に住んでる人達とだけどね」

「もぐる達ユーマのおかげで王国領には行けたよ」

「お、それは良かった。おめでとう」


 ということは、あの後また配信を付けてアリスさん達は肥大せし大樹を倒したのか。


「だからここに居る全員がユーマのクランに入るかは分からないし、皆個人でユーマのクランに入るかどうかは考える」

「なるほど」

「アリスはもうここがどんなクランでもユーマが居るだけで入りたいって言うだろうし、他の5人に向けて説明して欲しい。あ、勿論クランメンバーを募集してないなら帰るわ」

「いや、今は積極的に集めようとしてないだけでクランメンバーは募集してるよ」

「じゃあまずクランの名前から聞いてもいい?」

「うちのクランは『幸福なる種族』って名前で、あそこに居るメイちゃんが付けてくれたんだ」

「へっ? 私、見られてます!」

「良かったな。有名人に見られてるぞ」


 メイちゃんに視線が集まり続けるのは可哀想なので、クランの説明を続ける。


「正直このクランは何をするか決めてない。俺は冒険者メインだけど、他の2人は鍛冶師と錬金術師っていう生産職だし、攻略メインのクランになることは多分ないかな。かといってのんびりするだけのクランでもないし、今は良いなと思った人なら誰でも入ってもらって、活動を続けてるうちにこのクランだとやり辛いなとか、ちょっと輪を乱すような人が出てきたら抜けてもらったりして調整しようとは思ってる。人が集まればある程度の温度感と方向性は決まるだろうしね」

「そっか、じゃあルールみたいなものもそこまで決まってない?」


 そう言われてこの前の面接時に話したことをたとえ知り合いだとしてもやるのが筋だと考えて話す。


「ルールはあんまりないんだけど、今俺達のクランは見ての通り3人で、この工房を仮のクランハウスとして使ってるんだけど、もしこのクランに入った後すぐにクランハウスを買うためのお金を皆からもらうって言ったらどう?」

「私はすぐに用意できるか分からないけど、クランへ入ったならお金を最優先で集めるわ」

「僕は自分の装備のお金すらないから、装備を整えてからになるっすね」

「もぐるは手持ちにあるお金なら出せるよ」

「わたくしはユーマ様に初級魔法習得本をいただきましたから、おいくらでも集めさせていただきます」

「あたいは入団金じゃないならありがたいね。クランに入った後ならここで装備を作って売っても良いんだろう?」

「うちは何でもしますよ!」

「ユーマもアリスには聞いてない」

「みーちゃん酷い」


 どうやら皆はクランに入った後、ちゃんとクランメンバーとしての自覚というか、責任みたいな意識をしっかりと持ってくれるらしい。


「そうなると今の俺達の面接基準は全員合格してることになるかな?」

「何を試されたのか分からないけど、緩くない?」

「まぁまだ3人だから許して」

「じゃあ一旦ユーマのクランに入る気がない人はこの工房出ることにしよっか。ここでクランに入りたい人と入りたくない人に別れたとしても、このあとの帝国のボスまではちゃんと皆で倒しに行こうね」

「はい」

「うん」

「うっす」

「かしこまりました」

「あぁ」

「じゃあ入る気がない人はそのまま出て待ってて。行くよ、せーのっ」


 こうしてアリスさん達パーティーは皆目を閉じ、誰かがこの部屋の扉を開けて出ていくのを待つのだった。




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