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第121話

「またスケルトンです」

「弓が厄介だな」

「ダークスネークも来ています」

「了解」


 俺達は探索を始めてからあまり進んでいないが、モンスターは大量に倒していた。


「お疲れ様です」

「やっぱり夜は戦うのが難しいな」

「クゥ」「アウ」「……!」「コン」


 どうしても近づいて来ないと敵が見えないのは戦いにくい。特に今回は弓で攻撃してくるスケルトンが出てきたため、敵の姿が見えない状態で攻撃を受けた時は危なかった。


「まだ魔法とかで攻撃してくるなら感知しやすいんだけど、矢は音も聞こえないし見えないしでヤバいな」

「私としては初見でここまでの対応が出来るなんて素晴らしいと思いましたけどね」

「だって、良かったな」

「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」


 俺達は少し休憩して、また奥へと進みだす。


「これなら不意打ちがない限りもっと奥に行っても大丈夫です」

「その不意打ちが怖くて気が抜けないんだよな」

「その発言でユーマさん達は大丈夫だと私は判断しました」

「じゃあルーロさんが連れていきたい場所にどこへでも連れてってください」

「ゆっくり進みますね。モンスターが襲ってきたら、今まで通り全て倒して進んでいきましょう」


 戦闘能力はあるが地形理解が全くない俺達の進み方をルーロさんは考えてくれたのだが、やっぱり全て倒して進んでいくというものだった。


「まぁルーロさんの夜目がなかったら何発かスケルトンの攻撃を受けてたと思いますし、ゆっくり倒していくしかないですよね」

「知らない土地でゆっくり倒していくことが出来るのも凄いことですよ」

「ちなみに不眠のヒツジが居る場所って遠いんですか?」

「いえ、場所で言うともうそろそろ出てきてもおかしくないのですが、珍しいモンスターなのであまり期待はしないでおくほうがいいと思います」


 最初のルーロさんは俺達の実力が分からないからか、声も出さずに指示したり、すぐ逃げられるように退路の確保を行ったりと慎重だったが、今は普通に声を出して話しているし、緊張感もだいぶ薄れていた。


「その不眠のヒツジが落とす夢の羊毛って何に使うんですか?」

「主に寝具で使われているものが人気ですね。クッションなんかにも使われることがありますが、すぐに寝てしまうということであまりお勧めは出来ません」


 なんだその現実にあったら絶対に爆売れするだろう商品は。


「俺も使えるのかな」

「プレイヤー様は寝てしまうと違う世界へ行ってしまうと聞いていますけど」

「そうなんですよね」

「あの、事前に夢の羊毛は知らなかったでしょうし、少し騙すような形になってしまったのですが、本当に見つけた場合売って貰って良いのですか?」

「全然大丈夫ですよ。ちなみに何体も倒したら俺も貰って良いですか?」

「それはもちろん良いですが、そんなに多く出てくるようなモンスターで「クゥ!」」


 前に居るウルから声がかかる。


「何が見えます?」

「ふ、不眠のヒツジです!」

「お、やっぱり言霊ってあるのかもしれないですね」

「そ、そんな」

「とにかく倒しましょうか」

「は、はい!」


 まだ俺には見えないが、何体か奥の方にモンスターが居るのは感じる。


「エメラは今回敵を逃さないように拘束を頼む」

「……!」

「ウルとルリはあんまり皆から離れないように攻撃して」

「クゥ!」「アウ!」

「シロはルーロさんの近くで様子見かな。そこから届くなら魔法で攻撃していいよ」

「コン!」


 そして俺はウルとルリの近くへ行き、照明係をする。


「えぇ、なんか滅茶苦茶睡眠不足の顔してるじゃないですか」

「そうですが、そんなことよりも危ないですよ!」

「何がですか?」

「不眠のヒツジは状態異常攻撃をしてきますから、側面には立たないようにと注意したじゃないですか!」


 ウルとルリは事前に言われていた通り、ちゃんと敵の正面に立って戦っているが、俺は今不眠のヒツジの側面に立っている。


「俺効かないんですよね、状態異常」

「き、効かない?」

「アイテムのおかげで効かないんですよ」

「あ、そ、そうでしたか」

「なのでとりあえず俺は無視してください」

「分かりましたが、そこに居ると他の不眠のヒツジ達が集まってきますよ?」


 ルーロさんが言うには、不眠のヒツジの習性として、相手を眠らせるために皆で囲おうとしてくるらしい。そうすれば自慢の羊毛で眠らせることが出来るのだとか。そして今の俺は囲んで眠らせるにはもってこいの状況だ。


「おお、集まってきた」

「ゆ、ユーマさん! 本当に大丈夫ですか?」

「心配しないでください、ルリは眠らされるかもしれないしそろそろシロと場所を交代して。俺の周りにいるこのヒツジ達は皆の魔法攻撃で倒してくれ」

「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」


 俺の周りにいる不眠のヒツジへ向けてシロの水魔法が飛んできたかと思えば、ウルの氷魔法で濡れた身体が凍らされていく。そしてかろうじて魔法が当たらなかったヒツジ達は必死に逃げようとするが、エメラの樹魔法で拘束される。

 俺が急に始めたことだったが、皆アドリブで完璧に自分の仕事をやってくれた。


「アウ!」

「あ、ありがとうございます」

「アウ」


 俺達が不眠のヒツジ達と戦っている時間が長かったからか、後ろからルーロさんを襲ってきたダークスネークが居た。

 ただそれもルリがちゃんと守ってくれたので、今回の戦闘は皆本当に偉かったな。


「おお、結構取れてますよ」


 まだエメラが拘束しているモンスターがいるので全部ではないが、既にインベントリの中には20くらい夢の羊毛が入っている。


「クゥ!」「コン!」

「よーし、全部倒したな」

「あの、ユーマさん。私は夢の羊毛を4つもいただけたら十分ですので」

「あ、そうなんですね。じゃあ余ったのは全部もらいますよ?」

「はい、むしろこんなに倒していただいたのに、4つだけしか買い取らないのが申し訳ないです」

「いやいや、俺も欲しいなと思っていっぱい倒しただけですし、そもそも存在自体元々知らなかったので、あまり気にしないでください」


 お互いに何度か交互に頭を下げ合う時間があったが、ここはモンスターが出てくる危険地帯だと思い出したのか、シャキッとしたルーロさんが戻ってくる。


「では街へと帰りますが、先程後ろからダークスネークが襲ってきたので、通ってきた道でもモンスター達がまた居るものだと思って注意していきましょう」

「了解」

「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」

「特に横から出てくるモンスターには注意してくださいね」


 こうしてルーロさんの指示により俺達は陣形を整え、ネルメリアへと帰るためまた気を引き締め直すのだった。




「帰ってきたな」

「クゥ」「アウ」「……!」「コン」

「お疲れ様でした」

「一旦冒険者ギルドの中に行きますか」

「そうですね。そこで夢の羊毛やお金の受け渡しはしましょう」


 まだ明るくなっていないが、ギルドの中には大勢の冒険者がいる。


「はい、確かに4ついただきました。本当にありがとうございました」

「いえ、俺の方こそお世話になりました」

「では私はこれで失礼します」

「ありがとうございました」


 少し騒がしいギルド内で依頼達成やルーロさんと色々やり取りをした俺達は、ルーロさんがギルドを出ていく形で解散ということになった。


「どんどん俺の想像してた冒険者に近づいてきたな」


 まだ太陽も出ていない早朝には端っこで仲間を待つ静かな人達が居て、依頼掲示板の依頼を選ぶ人達が居て、臨時パーティーを組もうと呼びかける人達が居て、パーティーが揃った人達からギルドを出ていくこの感じ。

 もう少し時間が経って日が昇れば、もっと元気な人達も増えて今以上に騒がしくなるんだろう。


「いやぁ、流石冒険者の街だな。あっという間に人が増えたし、眺めてるだけでも楽しい」

「お、プレイヤー様早いねぇ。今から探索かい?」

「いや、さっき終わりました」

「てことは夜探索してたのか。話には聞いてたがなかなかプレイヤー様もすげぇな」

「いや、夜中ずっと起きてるってなったら探索に行こうってなりません?」

「確かに眠たくないならそうなるかもな」


 朝から元気な冒険者のお兄さんは、俺にどんどん話しかけてくる。


「最近は絡まれたりしてないか?」

「あぁ、プレイヤーに絡んでくる冒険者がいたって話は聞きましたけど、俺は何もされてないですよ」

「なら良かった。俺はプレイヤー様を見てるのが好きでよ、3週間弱でここまで強くなってるのが今でも信じられねぇんだよ」

「まぁ生活魔法とか鑑定とかインベントリとか、便利なスキルは持ってますし、職業に就いたらそのスキルも使えますからね」

「まぁそれに嫉妬してる奴らもいるが、そんなのに負けるなよ!」

「ありがとうございます」


「おーい、揃ったから行くぞー」

「お、仲間に呼ばれたからここまでだ。話に付き合ってくれてありがとな」

「いえ、お気をつけて」

「じゃあな。……わりぃわりぃ、プレイヤー様と今話しててよ……」


 俺があの冒険者のお兄さんと話してる間も、遠くからあまり好意的でない視線を俺に向けてくる人が居るのにも気付いているが、ウル達が警戒し威嚇してくれてたので何か言ってくることはなかった。


「皆ありがとう。そろそろ出よっか」

「クゥ」「アウ」「……!」「コン」


 ルーロさんと解散したあとはあの冒険者のお兄さんに話しかけられるまで、何をするでもなく椅子に座ったまま冒険者ギルドを眺めていたが、冒険者ギルドの中でぼーっと冒険者達を眺めるのも悪くないなと思った。




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