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第115話

「で、ユーマ的にはクランの方針をどうしたいんだ?」

「私はガチガチの攻略クランでも頑張ってみせますよ! 睡眠を削って食事は少しだけにして、全てを最低限の生活にすればどうにかなる気がします。私絶対に追いていかれないように頑張りますから!」

「いや、全然そんなつもりないから」


 メイちゃんは俺の過去の動画を見たせいで、感覚がおかしくなっている。


「このゲームではそんなガチガチの攻略をするつもりないから。流れに任せてやってくつもり」

「分かった。じゃあそれは一旦それでいいとして、メンバーは増やすか?」

「まぁせっかくクランを作ったなら、良い人が居たら入れてって良いと思うけど、誰かクランに入れたい人いる?」

「私は居ないです。ガイルさんとユーマさんしか話せるフレンドが居ないので」

「ちなみに話せないフレンドって誰?」

「同じ空間に少しだけ一緒に居た生産職の人達です。その場の流れで私もフレンド交換したんですけど、一度も連絡はしてないですし、顔も覚えてないです」

「そ、そっか。ガイルは?」

「俺も居ないな。どっかのクランに入ってる奴ばっかだ。もう少しこのクランを作るのが早かったら居たかもしれねえが」

「まぁ無理に入れなくて良いよ」


 ということで、しばらく幸福なる種族は3人だけのクランということか。


「皆入れたい人居たら言ってね。なんならガイルに言って俺に言う前に先に入れててもいいし」

「私から言うことはないと思いますけど、分かりました」

「ユーマも先に入れてから紹介でもいいぞ」

「分かった。たぶんホントにそうなると思う」


 メンバーはクランとしても少し増やす方向で決まったな。


「各々自由にやって、たまに話し合ったり素材渡したり、かな?」

「クランハウスはどうする?」

「確かにそうか。俺の今の家でも良いけど、いっぱい人が来るってなったらお隣さんに迷惑かけそうだしなぁ」

「新しいの買うために金集めか」

「私素材を買う以外ほとんど使い道ないので、家を買うなら渡しますよ!」

「さっきユーマが1000万もらってるの見てもそれ言えるのか?」

「うっ、私全部合わせても、200万も無いです。でもこれから装備装飾品が売れれば、お金は貯まりますよ!」

「いや、まぁもし必要ならお金は皆で出し合うけど、クランのためを思うならメイちゃんにはやっぱり錬金の腕を磨いてもらえると嬉しいかな」


 正直お金を集めるなら俺達がモンスターを狩りまくって納品するか、原石を掘り続けるか、カジノに行くかでいいだろう。

 メイちゃんがお金集めをするよりも、絶対に時間の無駄にならない錬金術師としての腕を磨いてくれる方が、俺にとってもメイちゃんにとっても良いと思う。


「じゃあクランハウスは一旦今俺達の使ってる工房にしとくか」

「それでお願い。あと何か話しておくことってある?」

「まぁ3人だしな。定期的に集まるのもまだ無くていいだろう。今までもチャットで連絡できたが、これからはクランチャットで3人同時に連絡が取れる。今急いで話すことは無いんじゃないか?」

「それもそっか。じゃあ最後にもう1回このクランの方針について話しておくけど、今は基本自由にやっていいから、各々楽しんで。何か手伝って欲しかったり、一緒にやりたいなってなったら声を掛け合う感じで行こう。今回みたいに困ったことがあったら、一旦話してみて解決できるかもしれないしね。あと、たぶんこれ以上緩くなることはないから、そこは覚悟というか、準備はしていてほしい」


 まぁ今は3人だし、クランってほどのものでもないかな。

 

「ユーマの予想はどんな感じだ?」

「予想?」

「これからこのクランはどうなっていくのかっていう予想だ。願望でもいいぞ」

「私も気になります」

「そうだなぁ。今のところは、攻略したいです! って人が入ってもいいし、スローライフしたいです! って人が入ってもいいクランにしようと思ってる。クランは目指す場所が同じ人達で集まるのが普通だと思うんだけど、色んな意見を持ってる人達の交流が出来る場にしたいかな」

「俺はそれだと荒れると思うけどな」

「まあ俺もそう思う。だからその時は抜けてもらおうかな。その人に合った他のクランをお勧めするよ、って言っても俺はそんなに偉いわけじゃないんだけどね。まぁでも"今は"そう思ってるだけだから。後々攻略したい! ってなったら攻略クランになるし、スローライフしたい! ってなったらのんびりクランにするよ」


 そもそも俺の今の状態がフラフラしてるし、クランの目指す場所もまだ決められないんだよな。


「私としては、その、嬉しいです。実力はないし、とても自分が格上のモンスターと戦えるわけではないですけど、それでも攻略クランの雰囲気を味わえる可能性があるってことですよね」

「人が足らなくて一緒に戦ってくれ! とかはあるかもね。まぁメイちゃんに1番可能性があるのは、このボスを倒すためのポーションを大量に作ってくれ! みたいなのかな。」

「ちょっと憧れてたんです。やっぱりこういうゲームをするなら、一度は味わっておきたいなって」

「まぁ楽しいよね。最前線攻略組の裏方が一杯いるのは、自分達が最強のプレイヤー達を支えてるって感覚が気持ちいいんだと思うし」


 昔素材集め等のファームをしてくれていたクランの人に、ありがとうございますと伝えたら逆に感謝されたことがあった。

 ずっと1番でいてくれて、やりがいがあるって。他のクランの裏方と同じような作業をしているのに、俺達だけは最強のパーティーを支えてやっているって気持ちにしてくれるから、ありがとうと、そう言われた。


 俺は自分で戦う方が好きだし、単純作業や同じ作業の繰り返しは苦手だけど、ファームの人達の中にはそういう気持ちで支えてくれる人が居るんだなと気付かされた。


「じゃあ一旦そんな感じでやってこう」

「まぁそうだな。また第2陣の新人達が入ってきたら勧誘とか考えるか」

「そうですね。今日はクラン設立もそうですけど、ユーマさんのおかげで工房の問題が解決しましたし、本当にありがとうございました!」

「これまでもそうだったけど、これからも助け合っていこうよ」

「そうだな。解決しなくても相談だけはするか」

「ですね」

「じゃ、俺は先行くね」

「おう、またな」

「また会いましょう」


 こうしてガイルとメイちゃんを置いて、俺は商人ギルドを出てきた。


「よし、帰ってマグマな置物を溶かすか!」

「クゥ」「アウ」「……!」「コン」


 お金は取り敢えずあった方が今後のためになるはずなので、一旦あの置物を溶かしたい。




「ただいま」

「ゴゴ」

「今回はゴーさんに魔法の笛でマグマな楽譜を見て演奏してもらおうかな」

「ゴゴ」


 おそらくゴーさんには何も意味がわからないだろうが、俺の言ったことをすぐ実行してくれる。


「俺がマグマな置物持っておくから、ルリと人化したシロでマグマ袋広げて、ウルはもしマグマが袋の中に入らなかった時すぐ冷やして、エメラも誰か火傷したらすぐ回復ね」

「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」

「よし、ゴーさんお願い」

「ゴゴ」


 そしてゴーさんが魔法の笛でマグマな楽譜通りに演奏すると、前と同じようにマグマな置物が溶けてきた。


「これは、綺麗だけど前のよりも小さいな」


 流石にあの特別な宝石が何度も手に入るわけではないか。


「まぁでもこれを売れば相当なお金になりそう」


 今の所持金は1500万Gくらいで、宝石箱の宝石や雨の夜に掘った原石を削って加工したものを売れば、2000万Gは余裕で超えてくれるはずだ。


「ゴーさんにこの原石削るのお願いしても良い?」

「ゴゴ!」


 ゴーさんが仕事を貰って喜ぶ姿を直視できない。せめて仕事を終えて皆が喜んでくれてから自分も喜んでほしい。もうこっちの罪悪感が凄くて凄くて。


「あ、じゃあ今から焼き芋の村に行って、前に言ってたあのさつまいもを貰ってくるよ」

「ゴゴ!」

「なんなら焼き芋も貰ってこようかな。ゴーさんに実物を見せるから」

「ゴゴ」


 ゴーさんは仕事が増えることに喜びしかないのだろうが、俺はゴーさんのためになることを何かしないと心が痛い。


「あ、そうだ。あ、あの、ゴーさん。せっかく家に居るし、行く前に皆の分のご飯って、作ってもらってもい「ゴゴ!」」

「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」


 あぁ、なんて複雑な気分なんだ。さっきゴーさんにはもう仕事をお願いしたのに、すぐまた頼んでしまった。

 ウル達はゴーさんのご飯に喜んでるし、俺も喜びたい。でも、ゴーさんには原石削りを任せ、毎日の家事に畑仕事、アイス作りにおそらくハセクさんとたまにモンスター達の世話をしている。

 そして今日新たに買い物やベラさんのお店への行き方を教えて仕事を増やしたばかりだというのに。


「ゴーさん、本当にありがとう」

「ゴゴ」


 俺の気持ちなんてゴーさんには分からないのか、仕事が増えていつもより楽しそうに料理をするゴーさんなのであった。




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