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第112話

「分からないなぁ」

「クゥ」「アウ」「……!」「コン」


 俺はリビングで今回入手したアイテムを見ているのだが、どうしても洞窟の中で何も報酬が得られなかったことに納得がいかない。


「同じ人は何回も同じ場所の報酬は受け取れないのか? でもそんなことないと思うんだけどなぁ」


 もしそうならあの切り株の上に石を置かないで欲しかった。いや、あの石を持って帰ってくるのが正解だったのか?


「ウル達はどう思う?」

「クゥ?」「アウ?」「……?」「コン?」

「いや、何でもない」

「ん? ユーマか。おはよう」

「あ、モニカさんおはようございます。今日は起きるのが早いですね」

「ちょっと今日は早朝から探索に行く予定でな」

「ならゴーさんにご飯を作ってもらいますか」

「そうだな。私は色々準備をしてくる」


 さっきゴーさんは外に居た気がするので、大きめの声でゴーさんを呼ぶ。


「ゴーさーん」

「ゴゴ」

「今日は早めに食事をもらってもいいかな?」

「ゴゴ」

「ありがとう。待ってるよ」


 万能農具片手にやって来たゴーさんは、もう俺達に畑仕事どころか水やりすらさせないつもりなのか、こんな朝早くから作業をしていた。


「たぶん畑に種を植えたりしてくれてたんだろうな」

「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」

「ん、どうしたんだ?」


 ウル達が急に俺を引っ張り、キッチンの前まで連れてくる。


「これは食材だな」

「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」

「まだ欲しいのか?」

「ゴゴ」

「あぁ、もしかしてゴーさんが料理するための食材がもっと欲しいってこと?」

「クゥ」「アウ」「……!」「コン」

「ちょっと違うっぽいな」


 ゴーさんはどこで手に入れたのかわからない箱を移動させて、足りない身長を箱の上に乗って補い、前よりも料理がしやすそうだ。


「あ、ゴーさんの趣味か?」

「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」

「ゴゴ!」

「もしかして、料理が趣味になったの?」

「ゴゴ!」

「そ、そっか」


 まさかいつものゴーさんの仕事内容がそのまま趣味になるなんて思ってなかっ……いや、ちょっとその予感はしてたか。


「えっと、食材はそのまま買ってきたほうがいい?」

「……」

「それとも種の方が良い?」

「ゴゴ」

「分かった。まだ余裕はあると思うけど、種は買ってくるよ。というかゴーさんにお金を渡したら、好きなものを自分で買ってきたりする?」

「ゴゴ!! ゴゴゴ!!!」

「おお、そっか、分かったから料理に集中して!」

「ゴゴ」


 ゴーさんの場合外に出てみたくて興奮してるんじゃなくて、また自分の仕事が増えるから喜んでる可能性の方が高いんだよな。


「ユーマはどこだ?」

「あ、そっち行きますね。ゴーさんこれ、50万Gあれば足りると思うから、はい。無駄遣いはしないよう……ゴーさんなら無駄遣いもしていいかな。たぶんしなさそうだし」

「ゴゴ」

「これで好きなもの買って。というかゴーさんが自由に外へ出られるなら、今度ベラさんのところにハセクさんとゴーさんで行ってもらって、お金もついでに貰ってきてくれたら嬉しいかも」

「ゴゴ!」

「まぁそれはたまにでいいからね」

「ゴゴ」

「ハセクさんには後でこれ渡しといて」


 そう言って、今度ゴーさんを一緒にベラさんのお店まで連れて行ってあげてくださいと書いた紙を渡す。


「モニカさんおまたせしました。なんだか今日は、その、眠たそうですね」

「あぁ、ちょっと昨日パーティーメンバーと久し振りにお酒をな」

「でも23時くらいに俺がこの家へ来たときは居なかったですけど」

「まだ外にいたんだ」

「そうだったんですね。お疲れ様です。でもそれなのにこんな早くから大丈夫ですか?」

「危険なことをするわけじゃないからな。それに私が酒に弱いだけで、パーティーとしてはそこまで問題はない」

「ゴゴ」

「ありがとう」


 ゴーさんが料理を持ってきてくれたので、皆で食べる。


「ユーマは夜何してたんだ?」

「南の街の近くで鉱石を掘ったりしてました」

「雨が降ってたのにか?」

「視界は最悪でしたけど、素材は最高でしたね」

「まぁ普通は少し良くなる程度なんだが、カジノでのユーマを見ていると相当良いものが手に入ったんだろうな」

「ほぼ鉄とか銅は取れなくて、銀とか月火鉱石とかそういうのがほとんどでしたね」

「そんなになのか。それならもう素材集めとしては最高の時間だったのだろうな」

「まぁ、そうですね」

「ん? 何か気に入らない事があったのか?」

「素材は最高でした。宝の地図から宝箱も見つけて、全体を通して見ると凄く良かったんですけど、1つだけ納得いかないことがあって」


 モニカさんは俺の様子に気付いてくれ、食べる手を止めて続きを聞いてくれる。


「エメラのタマゴを見つけた洞窟にまた行ったんです。説明はちょっと省きますけど、またタマゴを貰えてもおかしくないような状況だったのに、しばらく待っても報酬が何もなくて、それで少し残念だったなって。報酬を受け取る手順は完璧だったと思うんですけど」

「そうか、それは確かに残念だな」

「もしかしたら他の人だと受け取れるかもしれないんで、ちょっと他の人を呼んで試してみようと思います」

「その優しさはユーマの良いところだ」

「知らない人に取られるのが嫌なだけですよ」


 そう言いながら俺はガイルに連絡する。


「では私は行ってくる」

「気を付けてくださいね」

「クゥ」「アウ」「……!」「コン」「ゴゴ」

「あ、エマに言うのを忘れていた。すまないが今日は休みだと言っておいてくれないか?」

「了解です」

「助かる」


 そう言ってモニカさんは家を出ていった。


「エマちゃんが来るまで結構時間あるな。畑でも「ゴゴ」ゴーさんがやってるよね。なら掃除でもし「ゴゴ」ゴーさんがやってるよね。なら買い物にでも「ゴゴ」ゴーさんが行きたいよね」


 全部ここでやることはゴーさんの仕事を奪うことになる。


「いや、一緒に買い物に行って、ゴーさんがこれから一人で買い物に行くための練習をしよう」

「ゴゴ!」

「エマちゃんが来るまでには帰ってきたいし、早速行こうか」

「クゥ」「アウ」「……!」「コン」「ゴゴ」


 まだ人通りの少ない道を皆で歩く。


「まぁ職人ギルド近くはもうこの時間でも賑わってるな」

「ゴゴ」

「ここから説明するぞ。あそこで種を買えて、あっちは見ての通り食材が売ってる。奥は鉱石とかを取り扱ってるからあんまりゴーさんが行くことはないかな。他の場所は俺もあんまり見てないから実際に行って見てみて」

「ゴゴ」

「じゃあこのままベラさんのお店にも行こうかな」




「すみません今いいですか?」

「おはようございます。ユーマ様ですね」

「あ、この前の店員さん」

「お店はまだですけど、どうされましたか?」

「今後俺の代わりにこのゴーさんが売った分のお金を取りに来ることを伝えたくて。たぶん最初はハセクさんと一緒に来ることになると思うんですけど」

「ゴゴ」

「ではそのように周知させておきます」

「あの、ご迷惑じゃないですか?」

「ユーマ様はオーナーのお気に入……前のお店からのお得意様ですし、目玉商品の仕入れ先でもあります。それにとても覚えやすいのでこちらの負担にはなりませんよ」

「そうですか、ではお願いします。5日か6日後くらいから色々フルーツは納品できるようになると思うので」

「かしこまりました」

「準備中に失礼しました」

「いえいえ、またいらしてください」


 これでゴーさんの仕事は増えた。良いこと、なんだよな?


「じゃあ戻るか」

「ゴゴ」




「あ、ユーマさん」

「お、ちょうどだね」

「今日は少し早く来ちゃいました」

「あ、ごめん。今日はモニカさんが朝から出かけてて、どうしよっかな」

「そうなんですね。残念ですけど、ユーマさんのお家には毎日少しは居ないといけないですし」

「俺もアイスの加工とかがあるから家には居るんだけど」

「ゴゴ」

「分かった、アイスの加工はゴーさんに任せるよ。でも、ウル達は必要だろうし、そうなると俺も暇になるな」

「あの、ユーマさんが特訓をつけてくれませんか?」

「お、俺?」

「駄目ですか?」

「まぁ、良いけど(最近なんでこんなに誰かを教えることが多いんだ?)」


 ということでアイス作りはウル達に任せ、俺とエマちゃんは裏のいつもの場所で訓練を始める。


「ユーマさんは冒険者だと聞いてますけど、その、どれくらいの強さと言いますか、あの」

「あぁ、大丈夫。モニカさんとの訓練は見たことあるから、エマちゃんが本気で俺を倒しに来てもやられることはないよ」

「安心しましたけど、少し悔しいですね」

「まぁその気持ちは大事かも。冒険者になるなら尚更ね」


 エマちゃんはいつも通りランニングから始めるが、俺はその間にミルク缶を運んでくれているハセクさんを見つけ、話をする。


「あの、たぶん後でゴーさんからメモを渡されると思うんですけど、これからゴーさんも一緒にアイスの納品に連れて行ってほしくて。色々手伝ってくれると思うのでよろしくお願いします」

「(ぶんぶん)」

「ゴゴ」

「あ、ゴーさん。一応ハセクさんには話しておいたけど、後でメモ渡してね」

「ゴゴ」


 ハセクさんが運んでいたミルク缶をゴーさんが奪い、ウル達も来てハセクさんの後を追う。


「皆俺が居ない時はこうやって運ぶのを手伝ってくれてるんだな」

「ユーマさん、走り終わりました」

「お、分かった。じゃあ始めよっか」

「お願いします!」


 いつもと違う相手に挑むのが楽しみなのか、俺を倒せるかもという気持ちがあるからなのか、エマちゃんの表情がモニカさんとの訓練よりも俺には楽しそうに見えて、少しだけ嬉しかった。




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