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第98話

「とりあえずエメラは引き続き相手の妨害と俺達の回復に集中!」

「……!(コクコク)」

「それからエメラのことは絶対にルリが守ってくれ!」

「アウ!」

「ウルはエメラの指示で基本的に動いてるんだろうが、また俺を助けようとして近付くなよ!」

「クゥ」

「お前の攻撃だけが頼りなんだ、任せたからな!」

「クゥ!」


 現在俺達は予想以上の強さを見せるボスに苦戦していた。


「皆頼むぞ」


 こうなる30分前に遡る。




「よし、大体戦い方はこれでいいとして、あとは戦ってみてからだな」

「クゥ!」「アウ!」「……!」


 ボスに挑戦する前にできる準備はしたし、あとは戦ってみて調整していくしかない。


「じゃあ行こうか!」

「クゥ!」「アウ!」「……!」


 名前を見てみると、忘れられた森の賢人とある。


『ヴホォォォォォ!!!』

「自分から積極的に襲いかかってくるパターンか。俺とルリは前でボスを抑えるから、エメラは攻撃、ウルは敵の弱点を見つけてくれ」

「クゥ」「アウ」「……!」


 事前の話し合いでもしたが、ボスが積極的に動いて俺たちを狙ってくる場合は、ルリと俺でボスを止めて、その間にエメラとウルで攻撃してもらうという作戦だった。


「ルリ!」

「アウ!」

『ヴホホッ、ヴホォォ!!』

「あぶねぇ、流石にその力で6本も腕があるのは厄介だな」

「アウ」


 ルリはボスの両腕の振り下ろし攻撃を受け止めたはいいものの、余っている他の手でまた攻撃されそうになっていたので、俺は急いでルリの横に行きその攻撃の軌道をずらした。


「いけるか?」

「アウ!」


 俺が前で戦う方が安定はしそうだけど、そうするとルリのやることがなくなるし、本人もやる気があるのは良いことなのでギリギリまで任せてみる。


「さっきのでルリがボスの攻撃を受け止められるのは分かった。でも、相手は6本の腕があるんだ。それを頭に入れて動いてくれ」

「アウ」

「サポートは俺に任せろ」

「アウ!」

『ヴホッ!』


 こうしている間にもエメラとウルがボスに攻撃を仕掛けてくれるため、とにかくルリと俺は耐えることに集中すれば良い。


「エメラすまん。ルリに強化スキルを全部やるから、そっちは自力で何とかしてくれ」

「……!(コク)」


 いつもは魔獣スキル強化をエメラにかけているのだが、もし攻撃を食らいそうになった時にただの硬質化やタフネススキルだけじゃ耐えきれない気がしたので、今は安全のためにルリに全ての強化をかける。


「ウルもまだ弱点は見つけられてないな」


 必死に動き回っていろんな場所を攻撃しているが、どれもボスに大ダメージを与えられたような様子はない。


「ウル! 弱点探しはもう終わりにしよう。ウルも攻撃に回ってくれ。早めに倒さないと前が持たない」

「クゥ!」

「ルリもまだまだ俺達で耐えるぞ」

「アウ!」


 こうしてルリと俺がボスの攻撃を受け止めている間に、ウルとエメラで魔法攻撃をしてくれる。


「そろそろあいつの体力が半分だ、気を付けよう」

「クゥ!」「アウ!」「……!」


 そしてウルの攻撃でボスが少しよろめいた後、ボスの雰囲気が変わった。


『ヴホォォォォォォ!!!』

「こいつはどう変化するんだ?」

「クゥ」「アウ」「……!」


 ボスエリア全体が揺れたと思えば、近くの植物が成長し始めた。


「これはこれは、もしかしてエメラと同じ魔法か?」

「……!」

『ヴホッ!!!』

「周りの植物には気をつけろ!」

「ア、アウ」

「ルリ! エメラはルリを回復! その間は俺が前に出るから、ウルはエメラ達の近くで2人を守りながらボスを攻撃してくれ!」

「クゥ!」「……!」


 ボスの使用する魔法を今は植物魔法と呼ぶが、エメラと同じような魔法でルリを死角から攻撃し、毒状態にしてしまった。


「一応ポイズンスライムと戦う時に買った毒消しポーションをエメラに渡しておいてよかった」


 本当に最初の方に買ったものだが、捨てずに取っておいてよかった。


「で、植物魔法と筋肉モリモリの腕6本対俺1人ね」

『ヴホッ』

「流石にカウンターを叩き込む余裕は無さそう」

『ヴホォ!』

「いや、その腕持ってて魔法も使えるのはズルいって!」


 ルリが回復し切るまで俺が前で戦おうと思ってたが、たぶんこれは回復して戻ってきてもルリじゃ耐えられない。


「ウル! もっと攻撃して良いぞ!」

「クゥ!」

「エメラもルリをヒールしたら攻撃に回ってくれ!」

「……!」


 とりあえずルリはウルとエメラの近くに居させて、俺はボスと戦う。


「危ないなっ、ホントに!」

『ヴホホッ、ヴホホッ』

「いや、俺状態異常無効だからな」

『ヴホォォォ!!』


 植物魔法による明らかな毒攻撃を受けてもピンピンしている俺を見て、やっと自分の毒攻撃が効いていないと分かったらしい。


『ヴホォォォ!!』

「まぁそれなら物理攻撃でくるよなっ」


 ボスは俺に何度も腕を振り下ろしてくるが、その全てを避けていると俺ではなくウル達の居る方を狙うようになりだした。


「流石に攻撃しなさ過ぎたか」

『ヴホッ!』

「アウ!」


 回復したルリが前に出てボスの攻撃を受け止めたはいいが、全く抑えきれてない。


「ルリ! ルリはエメラ達を守ってくれ。俺がボスとやり合うから、もしまたそっちにボスが行ったら頼む」

「アウ」

「ウルはとにかく攻撃だけ考えてくれ。そしてエメラは俺とルリを回復したらまた攻撃を頼む」

「クゥ!」「……!」


 皆に指示を出して俺はボスの前に立つが、なかなかルリからタゲが外れない。

 おそらくエメラに攻撃がいかないよう敵視上昇スキルで自分にタゲを引いたのだろう。


「エメラ、俺に回復する準備だけしておいてくれ。あとルリは、俺にボスのタゲが移ったらエメラの近くまで移動してくれ」

「……!」「アウ!」


 こういうゲームにおいて敵視上昇のような敵の注意を引くスキルは重要だ。そして重要だからこそ余程のことがない限りそのスキルは切れないようになっている。


 ルリはもう敵視上昇のスキルを切っているつもりでもボスがまだルリを狙っていることから、敵視上昇は非常に強力なスキルだと再確認できた。


「じゃあエメラ、頼むぞ!」

『ヴホォォォ!!!』

「がぁぁあぁ! くっそ、おっもい、な」


 俺はボスの攻撃を真正面から受け止めた。実際には受け止めたと言うよりもただ攻撃を受けたように見えたかもしれない。


「クゥ!」

「おい! ウルは来るな!」

『ヴホッ! ヴホッ!』

「エメラ! 出来るだけ早く俺の体力を回復してくれ!」

「……!」


 ボスはウルが近付いてきたのは見えていただろうが、俺の体力が少ないことを分かっているのか、ウルには見向きもせずに俺への攻撃に集中していた。


「俺はボスの攻撃を避けるのに集中する! あとは全員エメラの指示に従ってくれ!」

「クゥ!」「アウ!」「……!」


 植物魔法は耐えるだろうが、あの腕の攻撃をあと一発でも掠れば俺は倒されるだろう。


「モルガが言ってた通り、いい勝負だなこれは」

『ヴホォォォ!!!』


 俺はこのあとボスの攻撃を避け続け、エメラの方に近付いては回復をしてもらい、またボスを引き連れて離れ、またエメラの方に近づくということを繰り返した。


「なんとなく分かったのは、腕6本を使って俺を攻撃する時は植物魔法は使えないっぽい。で、腕2本だけで攻撃するなら魔法も使えるって感じだ」

「……!」


 エメラに俺が気付いた情報を共有し、このタイミングで俺から皆にももう一度指示を出しておく。


「とりあえずエメラは引き続き相手の妨害と俺達の回復に集中!」

「……!(コクコク)」

「それからエメラのことは絶対にルリが守ってくれ!」

「アウ!」

「ウルはエメラの指示で基本的に動いてるんだろうが、また俺を助けようとして近付くなよ!」

「クゥ」

「お前の攻撃が頼りなんだ、任せたからな!」

「クゥ!」


 そして冒頭に戻る。


「ルリ!」

『ヴホッ!』

「アウ!」


 やっぱりこのやり方だとどうしてもエメラやウルの方にボスのタゲが移ってしまうことがあるが、その都度ルリが守っているので、また俺がボスのタゲを引いて引き離すということを繰り返す。


「……!」

「エメラナイス!」

『ヴホォォォ!』


 このボスとの戦い方にも慣れてきたため、俺とルリの体力も減ることが少なくなった。

 そうするとエメラが自由になり、ボスに対して妨害だけでなく攻撃する機会も増える。


「アウ!」

「ルリも来たか。十分気をつけてやるぞ!」

「アウ!」

『ヴホォォォォォォ!!!』


 ボスの体力も残り少なくなり、最後に何かしてくるならこのタイミングだ。


「全員離れろ!!!」

『ヴホォォォォォォ!!!』


 ボスの近くから大量の煙が出始め、せっかく来たルリにも離れてもらうことになった。


 おそらくこれは状態異常になる煙で、最後に出すということは非常に強力な状態異常攻撃なのだろう。

 本来ならこれの対策として状態異常にならないような準備をしてくるか、最初から近づかないようにするかだと思うが、俺は状態異常無効を持ってしまっている。


「今回は全然攻撃できなかったから、なっ!」

『ヴ、ヴホッ』

「恨むなら俺に状態異常無効の指輪を出したビッグ・クイーンビーを恨んでくれよっ!!!」

『ヴ、ヴホォ、ォ』


 こうして最後は煙を出している間動けないボスを状態異常無効の俺が攻撃し続け、ボスは俺に反撃することもできずそのまま倒れたのだった。




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