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第95話

「ほう、ネルメリアに」

「モニカさんも知ってるんですね」

「冒険者をやってればそれくらいはな」


 ネルメリアから家に戻り、ゴーさんの作ったご飯を皆で食べている。


「かつての仲間と会った感想は?」

「当たり前ですけどそこまで変わってなかったです」

「そのパーティーは強いんだろう?」

「まぁそうですね。プレイヤーの中では絶対にこの世界の最先端を行くパーティーではあります」

「随分仲間のことを信頼してるんだな」

「そりゃあ結構長い間一緒にやってきましたから。あのパーティー以上のプレイヤー達が居るとは思えないです」


 今はこの世界の冒険者の方が強いかもしれないが、時間が経てば必ず最強になるパーティーだ。


「まぁ今はどのプレイヤー達も休憩のタイミングなんで、俺達も好きなことやろうかなって思ってます」

「次の新しいプレイヤー様達が来るまでか?」

「そうですそうです。なのでその間に王都までは行きたいんですよね」

「他のプレイヤー様もこの間は休憩なのか?」

「いや、厳密に言うとそうじゃないです。別にプレイヤーの中でルールがあるわけでもないので。ただ、ある程度有名なクランはこのタイミングで探索を進めることはしないですし、仮にどこかのパーティーが抜け駆けしても追いつく自信が攻略組にはありますから」

「なるほど、ユーマは抜け駆けしないのか?」


 モニカさんはニヤニヤしながら、何か期待したような顔で俺の返答を待っている。


「しないですよ。自分のことを過大評価するわけじゃないですけど、たぶん俺が進めようとしたら文句言ってくると思います。最前線攻略組の皆とはこの世界でもフレンドになりましたし」

「なんだ、つまらないな。ユーマと他のプレイヤー様達の勝負も見てみたかったんだが」

「最前線攻略組にはまず勝てないですね。他の攻略組の有名どころにも勝てないと思います」

「そういえばお父様がユーマのことを随分買っていたぞ」

「大剣は今のところ使う予定はないので断りましたけどね」


 そんな話をしていると皆食事も食べ終わって自由な時間となる。


「ユーマ様、鶏舎のことで少しお話したいことがあります」

「あ、分かりました」


 セバスさんとハセクさんが家に来たので、そのままリビングで話を聞く。


「一応全て任せてもらえるということだったので、レイ様とハセクと私で決めた鶏舎を今から建て始めたいと思います」

「い、今からですか」

「プレイヤー様は驚かれる方も多いと聞きますが、この規模の鶏舎だと1日でできますから」

「そうなんですね。それで俺は何をすれば?」

「鶏舎を建ててくれる方がそろそろ来ますので、その方々に一時的な立ち入り許可をお願いします。ユーマ様が居られなくとも商人ギルドの職員に頼めば入れる事はできるのですが、その間ずっとその職員には見張りをしていただかないといけませんので」

「そこは人の目で監視するんですね」


 なるほど、俺の許可で入った人達なら商人ギルドの職員の手を煩わせずに建てられるのか。その代わりに何か盗みがあったとしても責任は問えないだろうけど。

 まぁセバスさんやハセクさん達も居るし、何か盗まれたりすることは無いだろう。


「分かりました。じゃあ立ち入り許可は俺が出しますね」

「ありがとうございます」

「(ペコペコ)」

「クゥ!」「アウ!」「……!」


 ハセクさんは俺とセバスさんが話をしてる間もウル達と仲良さそうにしているので、本当に良い人がこの家に来てくれて良かったと思う。


「あ、来ましたね」

「じゃあ許可出していきますね」


 建築士っぽい人達の他にも、魔法使いっぽい人や冒険者の格好をしている人にまで立ち入り許可を出し、あとは任せることにする。


「ではよろしくお願いします」

「カシワドリ達が一時的に厩舎の方に行きますが、鶏舎が出来ればすぐ移動させますから」

「分かりました、って言っても任せっきりになると思いますけど」

「いえいえ、ユーマ様は自由にしてください」

「ありがとうございます。お言葉に甘えますね」

「ユーマ様の家には近付かせませんので、そこはご安心ください」


 そうは言っても建ててもらっている立場ではあるので、ゴーさんには休憩の時にでも建築士さん達にアイスを出してもらうことにして、俺達はアウロサリバへと移動する。


「ふぅ、さてと。明日になったらまた夜が来るし、今日のうちに王都まで行きたいな」

「クゥ!」「アウ!」「……!」

「って思ったけど、最前線攻略組も帝国領のネルメリアで止まってたし、もしかして結構遠いのかな?」


 ということでまずは冒険者ギルドで王都までの距離を聞くことにする。


「すみません」

「はい、どうされました?」

「王都を目指してるんですけど、ここから王都までってどれくらいかかりますか?」

「そうですね、徒歩となりますとかなりの距離がありますが、プレイヤー様はお疲れにならないとも聞いてますし、歩き続けて1〜2日くらいでしょうか?」

「え、あ、そうですか。ありがとうございました」


 思っていたよりも遠いし、それだけ遠いなら急ぐ必要は無いのかもしれない。


「やっぱりゆっくり目指そうか」

「クゥ」「アウ」「……!」

「じゃあ依頼でも見るか」


 冒険者ギルドの依頼を見てみるが、全く知らないモンスターの名前が色々ある。

 そしてそういった知らないモンスターの名前がある依頼を除いて、更にその中でもあまり人気がなさそうな依頼を探して3つまで絞り込んだ。


納品依頼

内容:変わった形の石5つの納品

報酬:5,000G

期限:5日間


配達依頼

内容:指定された場所まで荷物を運ぶ。

報酬:5,000G

期限:5日間


清掃依頼

内容:商人ギルド横の待機所の掃除。

報酬:5,000G〜

期限:5日間


「今考えるともう少し討伐系の依頼受けて、お金を貯める方が良かったか?」


 まだ300万Gはあるが、またオークションをするとなるとお金は必要なため、コツコツ依頼をこなしてお金を貯めることも大事ではある。


「ウル達はどう?」

「クゥ?」「アウ?」「……?」

「モンスターいっぱい倒したりしたい? それとも配達依頼とか清掃依頼とかでいい?」

「クゥ!」「アウ!」「……!」

「戦いたいのね」


 一応今絞り込んだ3つの依頼は全て受けることにして、道中のモンスターを積極的に狩って、後でギルドの納品依頼を確認して依頼達成することにする。


「大体モンスターのドロップアイテムの納品は5つとかが多いから、それくらいの量が集まるまでは同じ種類のモンスターを倒して進もうか」

「クゥ!」「アウ!」「……!」


 こうして探索の方針も決まり、まずは配達依頼から始めることにする。


「これはもしかしたらピオネル村みたいな小さな村かもな」


 これまでの配達依頼と比べたら距離が非常に遠いため、モニカさんが住んでたような小屋だったり、虫料理を提供してくれた家よりも危険な場所なのは確定している。

 そしてそんな場所に1人で住んでいる可能性は低いため、そこに村がある可能性が高い。


「で、早速ゴブリンだけどすぐ倒しちゃったな」

「クゥ!」「……!」

「次は俺とルリで倒すか」

「アウ!」


 ゴブリンが襲ってきた瞬間俺とルリも武器を構えたが、ウルとエメラが遠距離魔法で倒してしまい、2人とも手に持った武器の出番は無かった。


「まぁ2体だけならすぐ倒せちゃうよな」


 このあとも慎重に道を進み、何度かゴブリンの襲撃を返り討ちにしていると、ゴブリン以外のモンスターが見えるようになった。


「あれは狼だな」

「クゥ!」「アウ!」「……!」


 王国領ではゴブリンばかり相手にしていたが、やっとそれ以外のモンスターと戦うことが出来る。


「えっと、名前がモルデルウルフか」

「クゥ!」「アウ!」「……!」

「たぶん噛みつかれたらヤバそうだな」


 顎が強そうで、一度噛みついたら離さないような大きな口をしている。


「ウルとエメラはいつも通りで、ルリはいつも以上に噛みつきに気をつけてくれ。逆に言うと噛みつき以外の攻撃はカウンターを狙っていいから」

「クゥ!」「アウ!」「……!」


 初めて戦うモンスターなので慎重にいくが、やっぱり見た目通りの顎の強さで、何度かエメラの樹魔法を噛み千切っていた。


「でも噛みつかれなければ関係ないな」

『キャゥッ』

「良いぞ、そのまま倒し切ろう」


 結局相手の土俵に上がって戦わなければ、どのモンスターも比較的簡単に倒すことが出来る。


「エメラの樹魔法で拘束したのは良かったし、それの手助けとしてウルが氷魔法で相手の動きを邪魔したのも良かった。ルリはあれだけ素早い相手に1人で対処できただけでも十分良かったから、皆このままの調子で行こう」

「クゥ!」「アウ!」「……!」


 このあとも、ゴブリンばかり出ていたのは何だったのかと思うくらい色んなモンスターが出てきたが、全てウル達と連携を取りながら倒して進み続けると、ついに俺達は配達先にたどり着くことができたのだった。




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