記録95『オークの英雄』
オークの里にて、一匹の英雄がいた。
フォラマン・プルオン、オークの戦士の中で最も優秀であり、人間軍でも聖騎士を五人、兵士を二百人、そして魔法師団一つを滅ぼす程の力を持ち、次期四天王候補としても最有効力と言われていた。
当然、そんな優秀なオークの戦士との子供を儲けたいと考える雌オーク達は多く、オークの里では女性を引く手あまたであった。
しかし、戦士として純粋すぎるのか、フォラマンはどの女性からの誘いも断っていた。
実は男に興味があるのではという噂も立ち、性に自由なオーク達は男のオークをあてがってみた。
しかし、結果は失敗で男ですら断られた。
フォラマンの家族達も、仕方ないという事だけ伝えて理由が分からなかった。
しかし、あるオークがとんでもない状況を見てしまった。
それは、人族の村を襲った際、オークに有り余る性欲を使って、村娘達を慰み者にしていた時の事であった。
「おーい! フォラマン! お前もたまには遊んでみろよ! 楽しいし気持ち良いぞ!」
「いやあああああああ!!! 止めてええええええ!!」
「俺は……いいよ……」
「おいおい、お前いつもどうやって発散……ㇵッ!!」
すると仲間のオークはある事に気付いた。
何とフォラマンの股間は全く盛り上がっていなかったのだ。
「まさか……お前……」
勘付かれた事に気付いたフォラマンは、そっぽを向きながら答える。
「誰にも言うなよ……」
「わっ分かった……」
気まずい雰囲気が漂う中、オークの仲間は黙々と村娘達に腰を振っていた。
しかし、当然そんな口約束が守られる事はなく。
英雄の弱点であり、秘密はアッサリ広まった。
「まさか……フォラマン様が……イン〇テンツだ何て」
「それで女どころか男すら……」
「可哀そうに」
「……」
「すまない! 酒で酔った勢いでちょっと!! 本当にすまない!!」
フォルマンは、ジト目で仲間のオークを睨んだ後、溜息を吐きながら呆れたように答える。
「もういいよ……別に……最初から期待してなかったし……」
そんな言葉を残して、フォルマンは自分の家へと帰ったという。
そして、時は流れてペプリア国にて勇者が召喚されたという情報が入った。
その為、オークの兵士達も、フォラマンも勇者との戦いに備えて、出来るだけ人間軍の戦力を落とす為、戦いに明け暮れていた。
当然、フォラマンは戦果を挙げていた。
「フォラマン! 今日もお前のお陰で勝てたぜ!」
「ああ! イン〇テンツ何て気にすんな!!」
「そうだぜ! 男は股の大きさだけじゃ決まらないぜ! ガハハハハハ!!」
「そう……だな……」
フォラマンは、いつものように仲間の談笑に静かに頷く。
「ふうー! クールだなあ!」
「本当に勃ちさえすれば子供なんてわんさかだろうに」
「おい、聞こえたら失礼だろ」
当然、そんな会話も聞こえていたが全く無視してフォラマンは里へと帰った。
すると、里が何処か騒がしかった。
「どうしたんだ?」
「まままま!!! 魔王様が!! 魔王様が来ている! お前に用だって!!」
村人の一人が、慌てながらフォラマンに伝える。
「魔王様が……俺に……」
そして、案内された場所へと向かい、フォラマンは魔王の目の前で跪く。
「お前がフォラマン・プルオンか……よく来たな」
目の前にいる魔王は、姿がぼやけて良く見えなかった。
「は! 魔王様! フォラマンここに参上仕りました!」
「うむ……面を上げよ」
「は!」
フォラマンは、顔を上げて魔王を再び目に移すが、やはりしっかりと見えなかった。
「お主……悩みがあるのだな……しかもオークとしてはかなり異質な……」
「……そうですね……村中で噂になっていますしね」
苦笑しながら、魔王様の言葉に同意する。
「ふむ、確かに聞いた噂をな……辛い事情だ……」
「いえ……分かっていた事ですので……」
険しい表情になりながらも、フォラマンは答える。
「そんなお前に褒美を与えたいのだが……貴様の場合は金品や女や名誉より……その悩み自体をどうにかした方が至上の褒美だろうな……」
椅子の取っ手に肘を置いて、肘枕をしながら魔王は嗤う。
「私の悩みが解消されるのですか?」
「可能性はある、今ララルア街の出た近くの森……ラべレアの森をある錬金術師が移動している……そこに行けば貴様の願いはかなう可能性がある……その為の移動手段もこちらで用意しよう……上手くいけば……貴様のそれはこちらの利点にもなるかもしれないからな」
「……利点ですか……」
「安心しろ……その錬金術師には差別意識は薄いらしい……どんな事も受け入れ協力するだろう……しかも金銭よりも知識への渇望が大きい……見返りだってそれ程酷い物でもないだろう……まあ行ってみれば良い」
「本当によろしいのですか? 私なんかの為にそこまで」
「言っただろ……褒美ではあるがこちらの利点になるかもしれないとな……だから遠慮するな」
「分かりました……行かせて頂きます!」
少し嬉しそうにしながら、フォラマンは魔王の命に従った。
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「フォラマン、魔王様に褒美として悩みの解消の協力者を紹介されたと聞いた……本当か……」
「親父……」
フォラマンは、家に帰ると目の前には険しい表情をした父親が立っていた。
「はい……」
「そうか……」
「貴方は昔から悩んでいたものね……」
「俺もお前は誇りだ……ずっと我慢させてきた分今度はお前に俺が報いる番だ……それに魔王様の命であれば反対する理由はない」
帰って早々、フォラマンは非難されるどころか、家族達は優しく出迎えて旅立ちを祝福した。
「……ありがとう、皆」
フォラマンは、涙を流しながら、旅立ち前の晩餐を済ませた。
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惑達は、目の前に向かって走ってきている馬車をただ見ていた。
「何だろう? 人間ではない臭い、オークかな?」
「オーク! あの性欲の化け物が!」
「プラン知ってる! それってケダモノって言うんでしょ!」
「ふむ、こっちに向かっているな?」
『!!』
一斉に、三人はビクッと体を震わす。
しかし、近づくと共に徐々にスピードを落としていた。
「ま! まさか! 意識がある状態で犯すのがご趣味なの! やだ~」
「きも」
「イ姉ちゃんキモイ!!」
顔を赤くしながら、待つイネに二人は距離を置いた。
そして、馬車は止まり一人の屈強な戦士のオークが降りて来た。
「私の名前はフォラマン・プルオン! 貴方が錬金術師の西院円惑だな!」
「?? そうですけど?」
「折り入って相談があるのだが! 聞いては貰えないだろうか?」
「うん、良いよ」
そして、フォラマンは勇気を出して告げる。
「俺を女の子にしてくれ!!」
『!!!』
三人は、あまりの衝撃発言に口を開けながら驚く。
「いいよ!!」
『!!!!!!』
そして、惑の安請け合いに再び驚愕する。




