記録94『プランの想い』
次の日、イネは再びプランの遊び道具を集める為、森へと入って行った。
「さてと、イネがゴブリンを……後一匹いなかったっけ?」
「いましたよね? 逃げたんですかね? 多分イネさんが居る中私達を襲えるわけないから生存本能が働いたのでは?」
そんな事を考えながら惑は、残りのゴブリンの臓物を煮ていた。
「それ腐ってないですよね?」
「大丈夫、アイテムボックスで保存してたから……他にも色々臓物あるけど食べる?」
「勇者の臓物はありますか?」
「それは無い」
「ッチ」
舌打ちするエレンを見ても特に反応せず、臓物スープを渡す。
「はい、イネは後で渡すからまずはプランな」
「わーい! 勇者の臓物う!!」
「違うよ」
そして、先に食事を取っているとイネも帰って来た。
「ただ……先に食べてる……」
「ファイイネ」
そのまま、近くに置いていたスープを渡す。
「はいはい、玩具はこれぐらいで良い?」
「はい、ありがとうございます、これでプランちゃん今日も沢山遊んで勉強しましょうね! 勇者を殺すのはどんな方法でも貴方の本能の赴くままに殺す勉強だから」
「うん!!」
元気よく返事をしながら、スープを掻き込んで、平らげてしまう。
「ご馳走様!」
「お粗末様」
惑は、頭を下げながら食器を貰う。
「ねえねえ! ママあ! 早く遊ぼう!」
「ごめんね、もう少し待ってえ! 私も食べてしまうから」
「やだやだあ!! 今遊ぶのおお!」
「ご馳走様」
何故か、後で食べたイネは既に食べ終わっていた。
「じゃあ私と遊ぼうか!!」
「良いの! わーい!」
「え、っと……お願いします」
イネは、嬉しそうにしながらプランと一緒にゴブリンの玩具で遊ぼうと森へと入った。
「大丈夫かな……」
「それ聞く?」
惑は、基本プランに関しては実験以外で面倒を見る様子はなかった。
恐らく遊びすらも実験の為の何かで塗り固めてしまう。
しかし、それでもイネと遊ばせるより不安はなかったのだが。
残念ながら先に食べた惑も、まだ食事を終えていなかった。
しかし、惑はそんな目で見るエレンに言った。
「僕が食べ終わっていてもイネに遊ばせるよ、面白そうだし」
惑が、知的好奇心のみでしか行動しない事を考えると、どうしようもなかった。
そして、何とかスープを食べ終えると、走ってプランの方へと向かった。
そして、とんでもない光景を目にした。
「ぐべべべべ!! ガベエエエエエエエエエ!!」
ゴブリンは、穴という穴からつるに侵入され、顔を赤くしながらどこか悶えている様子であった。
「こらああ! やっぱりこんなことを教えてる!!」
「ちょ! ちょっとぐらいいだろ!」
「何ですかその言いぐさは! ふざけないでください!」
激怒しながらイネに問い詰める。
「ええ! でもこういう方法も知っていた方が勇者に屈辱を与えれると思うけど?」
「私は屈辱を与えたいんじゃなくて復讐して殺したいんです! それにこれはプランちゃんに教育に悪いでしょ!」
「君の教えている事も十分教育に悪いけど?」
そんな言い合いを見ていて、少し泣きそうになるプランを惑は手を引っ張って連れて行く。
「さ、パパとママは喧嘩中だからあっち行こうか?」
「……うん」
惑は、そのまま先程のスープを飲んでいたところへと戻った。
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惑は、プランと一緒に食事の後片付けをしていた。
「ねえ惑お?」
「? 何?」
「惑はどうしてエレンお姉ちゃんに協力しているの?」
それを聞いて、惑は心底楽しそうに答える。
「だって人の想いに応えるのって楽しいじゃないか! 科学の進歩はいつだって人の信念と想いが関わっていた! 当然奇跡を起こす為のアクションだけど行動しないと奇跡は起きない、そして人の想いは常に奇跡を起こし続けていた……その為なら僕の大切な科学を利用して貰わないといけないだろ? たまに科学を使って地位や名誉を求める者がいるけど……」
「ごめんなさい、分かんない」
「分かんないかあ~仕方ない……勇者殺しに夢中になっている子供にはまだ分からないか……」
そして、全ての片づけを終えると惑も、プランに質問した。
「で? 君は僕にそんな事を聞いたけど君だってエレンやイネ、更には僕ですら利用しているだろ? 君の心は一体どうなっているんだい?」
興味深々に、惑はプランを観察する。
「私は何が何でも勇者を殺す、その為には屈辱を味合わせる事も覚えるし、殺し方も覚える……プランはとにかくママの残したこの想いを晴らすのが最優先なの……でも良いでしょ? これでエレンちゃんはプランと一緒に勇者を殺せるわけだし殺害確率が上がる……わくわくわくわく! おもちゃを壊しながら勇者を壊すのが楽しみなんだ!」
「ふーむ、君の知的好奇心はとても子供らしい夢中な方だ……だがそれだけじゃ勇者は殺せない……勉強じゃなくて見つけるをしないと最強は勝てない……最強の嫌がる弱点を見つけるのはかなりハードだ……もし興味があるなら僕の方でも勉強するといい、きっといい結果が生まれるよ」
「そうなの?」
「知識があれば奇跡を起こす為の想いが具体化する……形作りは大事さ!」
その言葉を聞いて、プランは素直に頷く。




