記録93『教育方針』
ドライアドのハロルドから子供ドライアドを託された。
薄い緑の綺麗なドレス服に包まれたエメラルド色の綺麗なセミロングの髪を持ち、瞳は神同様の色になっている。
「ほら~勇者を殺す! 勇者を殺す!」
「あーい! ぶっ殺! ぶっ殺!」
ヨチヨチと歩きながら、エレンの手拍子と共にある方向へと歩く。
「ぐが! ぐげええhげ!!」
そこには、薄汚いゴブリンが簡易な勇者っぽい恰好で縛られていた。
「あああい!! ぶっ殺おおおおす!!」
突然、目を見開いて凶悪な表情になると同時に、体からつるを大量にゴブリンの体の中へと入り込む。
「あが!! あががががあ!! いぎいいいいいいいいい!! ひぎいいいいいい!!」
「今のひぎいいいって! エロとかで良く聞く奴なんだけど!!」
「黙っててください! イネさん!! 教育に悪いです!」
エレンは、イネに蔑視の目で否定する。
「おまゆう」
イネは、惑に習った言葉で多少反撃する。
そんな中、ゴブリンの皮膚からでも分かるぐらいにつるが体中を這いずっていく。
そして、ゴブリンは目や鼻から大量に血を流し出す。
「ぐがががうがあうgはぐあgふあgふあgふあふあhぐあhぐあふ!! っグアバアアアアア!!」
そして、苦痛を感じながら悲鳴を上げると同時につるが体の内側からゴブリンを引き裂いて肉片にした。
「きゃはははははははははは!! エレンお姉ちゃん! 勇者の臓物ぶちまけてやったよ!!」
「うんうん、そうね! ぶちまけたわねえ! 良くやったわ! 本番も頑張ろうね~!」
「うん!! 頑張る! だからもっともおおっと褒めてえええ!!」
嬉しそうにしながらドライアドの子供は、エレンに頭を撫でられる。
「ふふふ、見てくださいイネさん、二人はすっかり親子のようですよ」
「……」
惑は、二人を微笑ましそうに見つめているが、イネはジト目で二人を見ていた。
「勇者ぶっ殺す英才教育ですって!」
「まあ恐ろしい!」
イネは、取り敢えず惑の井戸端会議のノリには少しだけ乗ってあげた。
「ねえ! 惑さん! そろそろこの子にも名前を付けて上げません!」
「そうだな、君がつけて良いよ」
「私が?」
「うん、一番絆が深くなっているからね……そういうのは繋がりが大きい者が付けて上げると良いよ、この子の成長性もそれで上がりやすいからね」
惑の言葉に少しエレンは引っ掛かったが、名付け親になれるという事が嬉しく思えたのか、ウキウキしながら考える。
「ねえ、惑さん……この子はドライアドだけど……ある意味では植物だよね?」
「まあそうだね……」
「惑さんのいた世界では植物を他にどんな言葉で読んでたの? こっちでも色々と呼び方があるけどどれもピンと来なくて……」
「そうだな……すぐに思い出せるのがプラントで植物っていう意味ぐらいかな? 後は色々は五か国語があるけど日常会話程度には覚えたぐらいで詳しくない」
「!! それだ! プラントの初めを取ってプランちゃん!!」
その言葉を聞いて、惑は顎を掻きながら頷く。
「うん、良いんじゃないそれで? ちなみにこの世界では植物や木を何ていうの?」
「勇者を見守りし者とか、勇者の道しるべとか、勇者の……ッチ! 不快になって来た」
「なるほど……色々な言語があるものだ」
勇者に対しての嫌悪のせいでこの世界での名前を付けたくなかったという理由を知っても、惑は特に何も感じなかった。
「プラン! わーい! ……え? プラン、もしかして勇者なんかの仲間にならないといけないの? いやあああああ!! いやああああ!!」
駄々を捏ねるように、プランは地面に寝転がり足と手をバタバタさせながら泣く。
「あら~良い子ね~!」
「うん、君にとってはとても良い子だね……将来あの子とは遊んじゃいけませんとか言う母親になってそうだけど」
「何が言いました?」
「いえなんでも」
イチャモンを付けたイネを、エレンは見下すように睨む。
しかし、イネはプランを見ると顔を赤くする。
「ねえ……私にも」
「ダメです」
「少しぐらい良いでしょ? そのゴブリンも私が……
「ダメです」
エレンは、イネにプランの教育を任せる事を関しては、断固として反対した。
イネは、その事に関して不満そうにする。
「取り敢えず今日は寝よう、すっかり辺りも暗いし、はい! 臓物ご飯!」
「あ! ありがとうございます」
「……ありがとう」
惑から食事を取ると食べ始める。
「プランもー!」
「はいはい!」
そして、プランには大量のゴブリンの内臓や肉の入ったスープを渡す。
「いただきます!!」
「はいよく出来ましたー!」
エレンは、嬉しそうにしながらプランにご飯を食べさせる。
「うーん!! 美味いい!!」
プランは、嬉しそうにしながら具沢山スープを頬張った。
イネは、プランを物欲しそうに見ていた。




