記録91『暗闇の戦い』
イネに防戦一方のまま、有志達と戦っていた。
「糞!! どうして!! どうして気付いてくれないんだ! 西院円惑は君を幸せにはしないというのに! 最後には君も捨てられるんだぞ!」
「その意味のない説得はいつ終わるのかな? それともずっと続ける気? 戦う気がないならこっちはもう終盤に入るね! 皆! 一緒に殺すニャよおお!」
『は!!』
すると、ぞろぞろとドライアドの兵士達が現れた。
そして、皆槍を握りながら有志達に襲い掛かる。
「不味い!! プロテクション!!」
レティリアは、防御魔法をより強くして攻撃に耐える。
しかし、既に国がドライアドにとってのステータスを向上させる環境にしている為、攻撃力も攻撃速度も飛躍的に上がっていた。
「皆!! 一点集中で攻撃を繰り返せえ!!」
『おおおおおおおおおおおおおお!!』
「不味いよ有志! このままじゃプロテクションが破られる!!」
「有志!」
「糞おお! どうして! どうして分かってくれないんだああああ!! ホーリーインパクトおおおお!!」
有志は、ホーリーインパクトを放ち、周りにいたドライアド事巻き込んだ。
「うおっと!! 危ないニャ!」
イネはちゃっかりと、巻き添いから逃げた。
「ああ、これはまずいかもな……君の仲間不味い死に方するね」
「え? でも神の力ならきっと……」
「酷い事を言うけど……君の部下達は有象無象であり雑兵だ……アレを完全に吸収し切る容量はないよ……君でも危ないレベルには」
「!! そ……そんな……」
惑の冷たい言葉に、ハロドルは真っ青になる。
「言ったろ……勝ち目はほぼないって……簡単に勝てるなら魔王が警戒なんてしないさ」
そして、その言葉だけでハロドルは希望を持つ事すらも打ち砕かれた。
そして、光が収まった瞬間、中には有志の仲間達しかいなかった。
「ああ……あああああ……私の大切な仲間が……」
ハロドルは、あまりにも理不尽な力に絶望していた。
「出来る事をしよう……完成にはもう少しかかる……そしてあの中には君の仲間の死骸の欠片がある……そこから再び木を生やすんだ……少しでも足掻かないと仲間に申し訳ないよ? 嫌ならいいけど」
あくまで自身で選ばなければならないという選択、そして仲間を使うという非道な方法。
そして何より、遠回しにハロドルには選択肢がないという現実。
しかし、だからこそハロドルは冷静になれた。
「生えよ……我が仲間達の生命よ! 育て! 樹木達よ!!」
手を翳して、ハロドルが唱えた瞬間、辺りを木が包み込んだ。
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「何だ! 何なんだこれは!」
「一体何が起こるの!」
「木が辺りを包んで周りを暗く!!」
そして、完全に太陽を防ぐように木が有志達とイネを包み込んだ。
「にゃあああああ……良く見えるにゃああああ」
不気味に嗤う声を聞いて、テュリアメルは恐怖する。
「不味い! このままじゃあがあああ!」
「レティリア!」
「何が起きて!! いやああ!」
「テュリアメル!」
「ニャハハハハハ!! 私は猫! 暗闇でも辺りが見えるにゃ!!」
「糞おお!! 一体どこに!! 止めるんだ! もし俺がホーリーインパクトを放てば君は死んでしまうんだぞ!! 良いから俺の手を掴むんだ!」
有志が手を翳すと、そのままあらぬ方向に曲がった。
「はい、繋いで放した!」
「ぎゃああああああああああああああ!」
あまりの激痛に、悲鳴を上げるがすぐにスキルで修復された。
「糞おおおお! もう一回だああ! ホーリーインパクト!!」
「おっと!」
イネは、そのまま木を引っ張るとそのまま枝に乗り外へと脱出。
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「あ、出て来た」
惑が、イネの脱出を確認すると、ハロドルに目を合わす。
「後は僕が持って行けばいいんだね」
「はい、地下の人間で作り上げました……あの子を頼みます」
「了解」
そして、木が光り輝くと同時に消滅し始める。
「はあ、はあ」
「うう、有志……私は一体」
「く! 糞! 有志済まない……また一人にしてしまって」
「有志……あいつ等強敵だよ……」
「あの者がいる限り……魔王退治どころではありませんね」
皆が、惑の危険性に脅威に感じている。
有志は立ち上がり、剣を翳す。
「出てこい! 西院円惑!! この卑怯者があああ!」
有志の言葉に対して、無視するように誰も出て来ない。
しかし、ある異変に気付いた。
上空に木が伸びており、そこに玉のような何かがあった。
「あれは……」
「有志! アレを取るんだ!! アレを西院円惑に取られてはダメだよ!」
「レティリア! 分かった!」
そして、有志は飛び上がり玉を取ろうとする。
しかし、目の前には西院円惑がいた。
「おっと、ギリギリかな?」
「!! 西院円惑!!!」
「じゃあね!」
そして、そのまま惑は飛び降りてイネに捕まりながら逃げ去った。
「待て!」
「行かせません」
「!」
しかし、ドライアドの女性が目の前を阻む。
「ここは通しません、惑さんが逃げるまでは」
「貴方は……そうか……西院円惑に操られて……可哀そうに……今正気に戻して上げるからね」
「……エレンさんの言う通り本当に気持ち悪い人ですね」
ハロドルは、有志をどんな人間よりも嫌悪した。




