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記録88『思い出を利用して』

街の中は、シャイニャスがいつも見ていた思い出の光景ではなかった。


「ここ、私がお婆様と一緒にいった喫茶店です……ここのデザートが凄く美味しかったんです」

「そう……だったんだな……」


有志は、悔しそうにしながら警戒を緩めなかった。

そして、目の前に一人の葉に覆われた老婦がいた。


「!! シャイニャス! 下がって!!」

「ああ……あああああ……そんな……お婆様……」

「!! 糞!! 間に合わなかった……」


しかし、誰かが倒さなければならない。

だからこそ、有志は自身が倒さなければならないと思った。


「待ってください、有志」

「シャイニャス?」


しかし、シャイニャスは有志を止める。


「私がします……私がお婆様を楽にさせて上げます」

「!! でもシャイニャス! 君の大切なお婆様が……」

「それでも!! 大切だからこそお婆様を助けたいんです! こんなに苦しそうにしているんです……だから……お願い……」

「……分かった……」


そして、有志はシャイニャスにお婆様の開放を譲った。

他の者達も、頷きシャイニャスに委ねられた。


「お婆様……今楽にし……」

「あわばばばばわああばばば!! ジャイニャズウウウウウウウウ!! あいじでいるばあああばばばばばばb!」

「お婆様!! まさか私を覚えて……」


シャイニャスのお婆様は、ケタケタと嗤いながらシャイニャスに寄生しようと根を伸ばす。


「あだまぼおおおおお!! いzっじょおおおおおおおおおおおお!! 森ニダルううううううう!!」

「いや! お婆さ……」

「危ない!!」


有志は、寄生されそうになるシャイニャスを押し下げる。


「キャ!」

「うう!!」

「有志!!」


有志は、シャイニャスを庇ったせいで聖剣を防げず、腕を根に刺される。


「ぐがあ!」

「あはばばばばああ!! いいっじょおおおおおお!!」


そして、有志の体に根が這いずるように寄生していく。


「ううう!!」

「有志! 気をしっかり持って!! 有志の状態異常無効のスキルがあるから大丈夫!」


しかし、レティリアの励ましは無駄であった。

状態異常無効のスキルがあるにも関わらず、有志の体に根は体の中を寄生していく。


「糞! なんで! どうして!!」

「まさか! 有志の聖力を吸い取っているのお! そんなバカな!!」


その状況を楽しそうに見ている者がいた。


「ほほう、アレ凄くない!! やっぱり僕の推測は間違ってなかったようだね! アハハハ! ドレイン! 吸収! ドライアドは森で精霊として神樹の力にする為にその栄養源として勇者の聖力を奪っているんだね! いやあ! やっぱり凄いね! 本体はどれだけ凄いの? ハロドルさん!」

「……そうですね……今までは人間の中にある神を信じる力と人間自身を栄養源として森の再建に利用しました……惑さんの寄生能力がなければ成し得なかったでしょう……もし私が勇者に寄生すればあの倍は苦しめれるでしょう」

「ふむ、いいかい? エレンちゃん……この光景を覚えておくんだよ……このまま勝っても良いんだけど多分無理だから……だから君がこのドライアドの分も勝つ為の糧を得るんだ……」

「そうですか……無様さを見れただけでなく弱点まで知れるなんて……まさに一石二鳥ですね……それにしても惑さん悪趣味ですね……お婆様を敢えてぶつけるだ何て」

「え? 油断するかなって思って……まさかあんなにトロトロお話しているとは思ってもみなかったよ……予想以上に迷ってくれて嬉しいよ」


惑の目は、獲物を見る目でもなく、ただ状況を愉しんで観る者の目をしていた。

状況が動けば動くほど、惑にとっての研究は飛躍する。


「さあ、わざわざ思い出の場所でお婆様と会わせて上げたんだ……どう対処するかな?」


惑は、続きが気になる子供のようにウキウキと観戦していた。


「ああああああ!!!」

「ぐぎゃあああああ!!」


有志は、聖剣を振るいお婆様を倒す。

だが、まだ有志の体中には先程の根が這っていた。


「うぐぐぐぐぐ!! あがあああああ!!」


有志が、声を張り上げると同時に根には光が溜まっていきそのまま消滅した。


「ふむ容量を超えさせて消滅させたか……ハロドル、つまりは奴の聖力はかなり強い、しかも状態異常無効かもあるからそれも使われているかもしれない……とにかく戦うにはクリーチャーをまずぶつけてみよう」

「……はい」


惑は、ハロドルに提案すると兵士達にクリーチャーの誘導を指示する。


「はあ、はあ」

「有志! ごめんなさい! 私……私……」

「大丈夫だよ、シャイニャス……糞!! 西院円惑! わざとだな!!」

「多分そうだよ、あの男、シャイニャスがお婆様を殺しにくいように敢えて意識を少し残したんだ! 思い出だけで動かして攻撃させたんだよ!!」

「糞! 外道な奴だ!! 人の美しい思い出を穢すなどと!!」

「許せない!! そんな酷い事どうして出来るの!!」

「お婆様……ああああ……ごめんなさい……ごめんなさい」


ひたすらに、シャイニャスの悲鳴のような悲痛の声が響く。

しかし、そんな時間も許されなかった。


「ぐがあああああ!!」


獣のような木の化け物が現れた。

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